(これは小説を書き留めています)


拝啓
小澤先生へ

今私は、素敵な所から先生へ、手紙を書いています。
…どうか驚かないでください。
私は、今天国に居ます。
天に召されたのです。


まさか、とお思いでしょう。
ならばなぜ、手紙などを、と。
書ける筈もない。


いいえ、先生。
もう一度、封筒の、消印の部分を良く確認してみて頂けますか。
特別な消印が、押してありませんか…?
先生、
此処へきてようやく、凡人だった私も、少し特殊な能力を手にいれたようです(笑)
こうして天国から先生へ、手紙が送れるんですもの。


突然、不思議な手紙を寄越して。
先生はきっと、さぞかしご困惑といったところでしょう、申し訳ありません。
でもけして、ふざけているわけではないのです。
本当に、私は今天国に居ります。


天国は本当に、読んで字のごとくの世界でございました。
すごく美しい。
花は咲き乱れ、見たこともない七色の蝶が舞っています。
どうやら万年、春のようで、ぽかぽかと暖かいです。


ねぇ、先生。
こうして貴方に、手紙を書いているのは、できれば私の家族に、伝えて頂きたいことがあるのです。


突然世を去った娘の運命に、母は今頃泣き崩れているでしょう。


残念ながら私から母に、直接手紙を送ることができません。
こちらの決まりによると、そうしてしまうと大抵家族は後を追ってきてしまうという"副作用"みたいなものがあるらしいのです。


確かにこちらは綺麗でいいところですが…、まだ母を迎えたくはありません。


ですから先生。
突然のご困惑を承知で先生には…この事を打ち明けてございますから、どうか。
願いを聞き入れて下さいまし。



順を追ってお話し致しましょう。
私が天国に来ることとなった、経緯を。