広告マーケティングにおいて、今も変わらずに大切な行為は、「顧客を知ること」

顧客のニーズ、気分を理解し、商品を売り込むこと(=広告を打つ、メッセージを送る)が、
効率的にセールスを獲得する上で不可欠になる。

かつては、購買データや顧客へのアンケート調査等、顧客の行動と思考に関する情報を集めながら、
より効果的、効率的なマーケティング活動を実践してきた。

そして、WEB環境が広く普及した現代では、
WEB上での行動履歴がマーケティングデータとして活用されている。

特に、WEB広告では、行動履歴からターゲットを細分化して、
できるだけ効率的に広告を打つことを目指してきた。
自動車について色々調べている人に対しては、シャンプーではなく、自動車のバナー広告を表示すること。
この精度をとにかく高めて、クリック率やコンバージョン率の向上に努めてきた。


しかし、その効率性の追求が時に問題を生じることもある。


その一例が、産經新聞アプリやマガストアの閲覧履歴の収集。
この件については、下記に情報がまとめられているので、ご参照ください。


togetter記事
電子書籍とプライバシー

簡単に言えば、ユーザーに無断で、閲覧履歴や購入履歴のデータを収集していたということ。

これからは、WEB上でのプライバシー管理はもっと注目が集まるし、シビアになる。
自分の個人情報をどこまでオープンにしていいか管理できる権利があり、
企業が個人情報をどのように使っているのかを知る権利があり、企業も知らせる義務がある。

企業が、個人情報を悪用することも可能になるし、
悪意のある人が、そういうプログラムを使って個人情報を抜き取る恐れもある。


情報技術の進歩がめまぐるしく進む中、
技術やルールに対する知識がないまま、右に倣えでWEBサービス開発、アプリ開発をやっていると、
思わぬ落とし穴があるということ。
このように問題が明るみにされてしまうと、社会からの信頼を失うだけでなく、
時代遅れの世間知らず、というレッテルを貼られる可能性がある。

「4マスの人たちね。情弱乙。」ということになる。

上記で登場した企業はメディア業界では影響力が大きいだけに、
その責任、信頼性にはもっとシビアになるべき。
そのためには、社として情報技術に対する理解を深め、ノウハウを蓄積すること。
社内にリソースが無いなら、協業者を探し、人材を確保すること。

広告代理店も、情報インフラをハンドリングすることができなければ、
持ち味であるプランニング能力やアイディアを開発する能力を発揮できない。
新聞やテレビ等のコンテンツホルダーも同じ。

「専門的なことは、よく分かりません。」という人は、淘汰される。
ギリシャ、アメリカをはじめ、世界が深刻な経済不安に喘いでいる。

もはや他人事ではないし、日本も当然大きな影響を受ける。というか、既に受けまくっている。


そんな現在だから、資本主義経済について、自分なりに考えてみました。


私たちは、より大きな利益を得るために利子のついたお金を借ります。
お金を大きくするために、それを更に投資してより大きなお金を得る。
その過程には必ず価値が創造されていなければならない。
そうでないと、より大きなお金は得られない。
そして、そのお金をまた更に投資する。

(ここではあえて、お金を大きくするには、価値が生み出されないといけないという書き方にしました。)


借りたお金よりも大きな価値を生んだ時に、借金を返すことができる。

でも、人間が生み出す価値を超えたお金を動かそうとすると、必ず歪みが生まれる。

つまり、借りたお金の分だけの価値を生み出せなかったとき、借金は返せない。

人は、債務不履行が起きないように、対処しようとする。
リスクを分散、回避しようとする。予測しようとする。

でも、エラーは起きる。いろんなエラーが沢山起こる。
天気が悪かったり、病気になったり、事故があったり、凡ミスがあったりする。

そのエラーの影響が小さな範囲に影響を与えるなら、問題はなかった。
仮に、その影響が一つの国を壊滅させるレベルであっても、世界は保たれる。

でも、世界中がリスクを背負い、一つのエラーで世界中が影響を受けるところまで来てしまった。
そこまで世界中が絡み合ってしまった。

また、お金が動くだけで、利子がふくらみ、
人が生み出す価値とのバランスがもはや取れなくなってしまった。

お互いがお互いの足を引っ張り合いながら、みな泥沼に沈んで行くような状況になってしまっている。


生み出していない価値にはお金はつかない。

生み出していない価値にお金がつくような仕組みを作ってしまったことに、
問題があると思います。
企業が「他社より、もっとたくさん売りたい」と思う気持ちと、
人が「もっと良いモノを買いたい」という気持ちがある限り、
つまり資本主義を選択する限り、「広告」は存在する。

広告は、人と財・サービスのマッチングを最適化する媒体。

そのため、広告は常に人が集まるところ、人が見聞きするところに存在しないといけない。
そして、企業のマーケティング目標達成のために、
効果的なメッセージによって人の心理/行動を変えなければならない。

WEBの浸透によって、人が見聞きする媒体は変化した。
今は、WEBの中でもとりわけソーシャルメディア(twitter,facebook.mixi)に
人が集まっている。

人とメディアの関係の在り方によって、広告は変化してきた。

人とメディアの関係の在り方を理解しないと、広告ビジネスは機能しない。

ならば、未来の人とメディアの関係の在り方について、
どこまでイメージを持つことができるかが、広告ビジネスの生命線。

学者のマーシャル・マクルーハンは、メディアのことを
「人間の機能、及び感覚を拡張したものである」と語っている。

ソーシャルメディアは、人間の「社会性」「関係」という機能を拡張させた。

その次にあるメディアは、人間の何を拡張させるのか?
すぐに答えは出ないけれど、メディアに携わる人間として、いつも頭の片隅においておきたい。
ソーシャルメディアのおかげで、
企業は生活者と長期的なエンゲージメントを作る手段(=より直接的なコミュニケーションによって)
を手に入れた。


ソーシャルメディアの長期的なエンゲージメント構築に関しては、以下の記事をご参照ください。

イケダノリユキのCommunitainment Blog

でも、その実現は容易じゃない。

1(企業)×n(生活者)のコミュニケーションにおいて、
nからのメッセージにリアルタイムで応えないといけないし、誠意を持って応えないといけない。
それは、言葉(=リプライ)だけじゃなくて、サービスや事業の変更にまで適用される。
企業側の都合や嘘は、暴かれてしまうし、片手間では関係は築けない。

もちろん、その場凌ぎの返答や、テンプレート通りの返答をするだけでは、すぐに生活者は立ち去ってしまう。
そもそも、関係を作るためには、魅力的な情報、コンテンツを発信しなければ、立ち去ってしまう。
さらに、魅力的な情報、コンテンツがあることを周知させなければ、来てくれない。


生活者が企業に期待するのは、

「この会社は、私にとって有益な、または興味・関心をくすぐる情報を提供してくれる。楽しい一時を提供してくれる。」
「この会社は、私たちの声を聞いてくれる。そして、行動という形で応えてくれる。」

ということであり、その思いに応え続けて初めてエンゲージメントができる。


これだけの努力をして初めて、「限られた人数の生活者」とエンゲージメントが構築できる。

では、限られた人数とのエンゲージメントを構築する目的は何なのか?

①生活者がブランドを選択する基準の一つとして、ブランドのエンゲージメントが大きく影響を及ぼすから?
②生活者インサイトから、商品開発、サービスの改善に活用できるから?


企業がどこに価値を見出すかは、課題によりけりだけど、
本当に、それだけの努力(=コスト)をする必要があるのか?

①の場合なんて、キャンディや洗剤の購入にエンゲージメントが本当に必要なのか、疑問に感じる。



もしくは、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する目的を、エンゲージメントではなく、
単なるメディアとして捉えた場合は、どうか?
つまり、ソーシャルメディアに接触する生活者の数が増えたから、単純に媒体価値が高くなったので、
広告枠として、魅力的だから出稿しよう。
さらに、WEB上なら、いろんな情報・コンテンツを発信することが可能だし、
ターゲットのソーシャルグラフを活用し、より広いリーチが期待できるので、効率的。
こういった考え方もできる。


私個人としては、前者の「いかに、生活者とエンゲージメントを作るか」というところに、
ソーシャルメディアである故の価値があると考えている。
後者の場合は、たんなるメディアとして、
つまり本質的にソーシャルメディアでマーケティング(特に広告)を行う意義があるとは、思わないから。


本気で、生活者とエンゲージメントを作る気がないのなら、
ソーシャルメディアを使っても、大きな恩恵は得られない。
得られても、想定の範囲内の広告効果が限界だと思う。

ソーシャルメディアの出現で、エンゲージメントは作りやすくなったかもしれない。
(※facebookやtwitter等、共通のプラットフォームを使って実践できるという意味で。更にユーザーも多い。)


でも、優良な企業なら、ソーシャルメディアなんか使わずに、エンゲージメントを作ってきた。
要は、その会社の覚悟次第なんだと思う。


とここまで書いておいて、「グランズウェル」で書かれていた内容は、
ソーシャルメディアの本質的な部分をよく捉えていたなぁと感心するのであった。
「グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略 amazon」
グルーポンに対抗する新しいクーポンサービスlevel up。


その名の通り、色々なクーポンを使っていきながら、
より高いディスカウント率へ“level up”していくというサービス。


詳しくは、こちらの記事を・・・
アメリカン・エキスプレスとのパートナーシップによってSCVNGRのサービスが向上(2011.08.01)


クーポンサービスにも、ゲーム性が取り入れられる。

「○○のクーポンを使ったら、もっとディスカウント率の良い××クーポンが使える。
だから、○○を買おう。」

という気持ちを生み出すのが狙いなのか?


ここで、念頭に入れておきたい考えがあります。

ゲームは、「ゲームをすること自体が目的」であり、だからこそゲームという形を維持できる。

いろんなモノ・サービスを経験するという本来の目的を見失わないように気を付けないと、
いろんなサービスを経験するこを、がむなしく感じないでしょうか?

ゲームは、それ自体で人を夢中にさせるチカラを持っています。
だから、そこにビジネスをくっつければ、儲かる。
(ソーシャルゲームの収益が大きくなってことについても同様のことが言えます。)

ゲームが持つチカラを、うまく活用するためには、
サービスが提供する価値をサポートするような要素を付加しないと、
価値の創造、ブランド構築、長期的な収益には、繋がらないと思います。

サービスの価値を、ゲーム的要素がサポートし、加速させるような仕組みが必要です。


ちなみに、サービスやキャンペーンにゲーム的な要素を盛り込むことを
ゲーミフィケーション(gamification)と呼ぶそうです。

ゲーミフィケーションについては、コチラ
ゲーム嫌いも知らないと損するゲーミフィケーション入門