ベトナムでの留学中、ベトナム人の友人たちと遊ぶ機会が多々あった。ベトナム人グループの中に入り、彼らの会話を聴いているのもいい勉強になる。

 

グループの中に、少しふくよかな大学生がいた。本名は知らない。

 

なぜなら、みんな「Béo」って呼んでたから。

 

Béo            ①太っている、肥えている、肥満した

                  ②(料理が)油っこい、油っぽい

                  ③脂がのっている

                  ④(土地が)肥えている、肥沃な

 

など、いろいろな意味があるが、少なくとも私の感覚では、人に対して使えば、

「デブ」と言うようなものだ。

 

ベトナム人たちは、その「太っちょ」大学生のことを、名前ではなく「デブ」と呼んでいるように私には聴こえた。

 

ただ、ここで言うベトナム語の「太っちょ」は、どちらかと言うとプラスの意味のようだ。

 

太っちょ=よく食べている、食べられる余裕(金銭的な?)がある、健康的・・・

 

となるそう。

 

反対に、「gầy」(痩せた、スリムな)と言う言葉があるが、これはマイナスイメージが強い。

 

痩せる、痩せている=不健康、貧乏、病気

 

というイメージだ。

 

街中を歩いていると、時々面白い看板を見かけることがある。

 

Phở Hạnh Béo

Quán Xuân Béo

Cơm Bình Dân Ngọc Béo

Bia hơi Phát Béo

 

「Béo」の前はそれぞれ人の名前だ。

 

つまり、「太った○○さんのフォー屋、食堂、ビアホイ」と言う店名になる。こういう看板の店の店主、店長は「ふくよか」だ。

 

たしかに、

Phở Hạnh Gầy

Quán Xuân Gầy

Cơm Bình Dân Ngọc Gầy

Bia hơi Phát Gầy

 

など、「痩せた○○さんのフォー屋、食堂、ビアホイ」なんて言う名前の店があっても、あまり入ろうとは思えない。

 

店の名前に使われるほどなので、そこまで悪いイメージではないのが、ベトナム語の「Béo」という言葉だ。

 

ただし、注意したい点はどこの世も同じなのだろうか。

 

女性にはあまり使わない方がいい。

 

「Béo」がプラスイメージの言葉とは言え、長髪で、スレンダーなボディーを求める年若きベトナム人女性は少なくない。彼女たちの耳には「デブ」としか聞こえない。

 

間違っても、「Em béo thế/Em béo nhỉ?/Em béo ơi!!」なんて言わない方がいい。

 

では、女性にはむしろ「gầy」(痩せている)を使った方がいいのかというと、そうではない。この言葉のイメージはやはりマイナスなので、

「Em gầy thế!/Em gầy đi nhỉ?/Em gầy ơi!」なんて言わない方がいい。使うなら、相手を心配する言葉もかけた方がいいだろう。

 

結局、バランスが重要なんだろう。痩せていてはダメだけど、太りたくもない。ちょうど良い体型を求めているんだろう。

 

先に挙げた店名については、店主本人の自称であることから、問題ない。

 

冒頭の「太っちょ」大学生が、そう呼ばれてどんな気持ちだったかは定かではないが、傷ついている可能性はゼロではない。

 

言葉の持つプラス、マイナスのイメージ、いろいろあるけど、看板に使われるくらいポピュラーな単語ではあるけど、友達を呼ぶときは名前で呼ぼう。

 

女性には、đẹp(キレイ、美しい)かdễ thương(可愛い)を使うことにしよう。

 

「太る」と「痩せた」について考えたハノイでの古き良き思い出。