極貧少女【1、事の始まり】
※これは事実に基づいたフィクションです。
【登場人物】
■リカ(仮)
社長令嬢。
父がカルト教団へ入信した為、ある日極貧少女に。
■私
ごくごく普通階級の娘。
■トキ(仮)
リカの彼。
これまた会社重役の息子。
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大学1回生の夏。
バイトを始めた。
そこで出会ったのがリカである。
大きな薄茶色の瞳をした、
小柄な美少女。
父はコンサルタント系会社の社長。
所謂社長令嬢だった。
大学内では有名だった高級学生マンションに住み、
バイトは社会勉強の為だという。
これだけ聞くと嫌味な人物を想像しそうだが、
彼女は責任感が強く、
傲慢なところも無い、
女性からも男性からも好かれる、
魅力的な少女だった。
某大手外食チェーン店でのバイトだったが、
お客さんの中にファン倶楽部が発生した。
それほどの美少女でもあった。
当時自分が付き合っていた彼氏と、
彼女の彼氏が親友同士だった事もあり。
1番近しい友人だった思う。
残念極まりない事ながら、
お互いの彼氏が浮気が止まず、
いつも週末に飲みに行っては愚痴を溢し合った。
そんな他愛も無い日々の中。
彼女の生活スタイルが一変する日が来た。
朝6時から店に入り、
11時までバイト。
その後大学へ行き講義を受け、
夜7時からで閉店まで働く事になったのだ。
余りに過酷なスケジュールに、
日々疲れが抜けないのが目に見えてわかる。
元から細い方ではあったが、常軌逸して痩せていくのだ。
講義も寝てばかりいると、彼女の彼トキから聞いた。
訳を問う私に、彼女がポツリとこう言った。
「お金が・・・いるの。
でも、大学辞めるわけにはいかないんだよね」
腑に落ちなかった。
実家の会社が倒産でもしたのだろうか。
それとも資金繰りに困っているのだろうか。
そう直接的に聞くことはできなかった。
代わりに。
「お家・・・何かあったの?」
その時あたしの頭にあったのは、
そんなごく一般的に起こり得る事だけだった気がする。
彼女の返答は、
今すぐ言える事ではないから。
しばらく時間が欲しいというものだった。
今まで散々2人で遊びに行っていた事も、
彼女の多忙でキャンセルが相次ぐ。
私は私で、彼氏との事を優先するようになった。
バイトで顔を合わせるだけの日々が過ぎていた、
ある日。
リカの彼トキから電話が架かって来た。
「俺じゃあ助けてあげられない。
家庭の事も自分の責任みたいに思う子だから、
無理矢理にでも聞いてあげてもらえないかな」
「聞いたら答えてくれるかな」
以前少し待って欲しいと言った彼女の顔が浮かぶ。
「・・・・・多分、としか言えないけど」
週末。
彼女が唯一バイトを単一でこなせるという日を聞きだし。
家に行きたいと持ちかけた。
それに対して彼女からの回答は、
「家、電気つかないの」
そこまで・・・。
煌々と明かりの灯った、彼女のマンションの廊下を思い出す。
あの壮観に電気もつけずに過ごす孤独も。
「・・・じゃあ私の部屋においで」
2人になった自分の部屋で、
とりあえず何から聞いたらよいのか迷う私に。
彼女が急に堰を切ったように話し出した。
彼女の目は悲嘆にくれているわけでも、
怒りに満ちているわけでもなかった。
「お父さん、浮気してるんだよね。
その浮気相手の人が宗教団体に入っていて、
一緒に入っちゃったの」
淡々と事の経緯を話し始めたのだ。
以下つづく。
ストッキングマンはどうした、という怒りの声が聞こえそうですが。
突然「極貧少女」を始めてしまいました。
ご愛嬌ご愛嬌。
空。