黎明(れいめい)



  耳を澄ますと 聞こえてくる

 ハナミズキを頭に飾った 精霊たちの歌が

 もうすぐ過ぎ去る 若葉の季節を惜しむ歌

これからやったくる季節を 歓迎する歌


 目を 凝らすと 見えてくる

ハナミズキを耳に飾った 精霊たちの踊りが

虫達と輪を組んで 回りつづける踊り

しっとりした 四月の雨を 呼ぶ踊り


 心を開くと 入ってくる

ハナミズキを持った 精霊たちの美しい言葉が

 水のように 流れつづける言葉

木々の新芽のように 何の汚れもない言葉


   精霊は 祈る


たくさんの人々が 一輪の花を見て

 心を すぐに 開けるように

きのうまで つぼみだった花が

 次の日に さっと開くように

そんなふうに 心が開くように


ハナミズキの側を 通ると聞こえてくる

心を開いた瞬間から

精霊たちの  歌が

  踊り  言葉が

   そして  お祈りが


黎明(れいめい)


黎明(れいめい)


黎明(れいめい)


黎明(れいめい)

        森愛「森の家から」 23ページより