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場所は千日前道具屋筋。
なんばグランド花月のすぐ隣。

以前当ブログで紹介させていただいた。

大阪で飲食業を営む者すべてが訪れる飲食店業務用機器、食器の専門街である。

食都、大阪らしくユニークな商店街であるが、最近は過疎化が進んでいる。

今は食材、食器ともにインターネットで世界中から仕入れる時代である。

道具屋筋がいかに品揃えが多かろうが、ネット販売の安さ。品揃えには勝ち目がない。

道具屋筋も客足は遠のく。

この商店街は面白い試みをよくやる。

全国の中学校の修学旅行を招いて、生徒にタコヤキ屋の模擬店を体験させる。
子供たちの作ったタコヤキは稚拙だけど、100円なのでまあまあ売れる。

その道具屋筋が空き店舗を使って始めたのが

『まちの駅、まいど市』だ。

一つの店舗に屋台村のようなスペースをわずか月五万円の家賃で貸し出している。

タコヤキ屋、居酒屋、クレープ屋、物産展屋などが並ぶ。

本来の目的は『震災地支援』

震災直後、東北の野菜の直販売ショップが大阪のビジネス街に並んだが、その延長である。

岩手県や宮城県の物産が多く並ぶ。
吉本がやっている全国物産展によく似ている。

先日行ってみた。

手前に屋台風の店が並び、奥が居酒屋スペースだ。

定食が500円。
弁当が300円。

安い!と思ったあなた。

甘い甘い…

ここは大阪千日前。
余裕で500円でランチが食べられる街だ。

チキンカツの弁当が300円。
店内で食べられるらしいので買ってみた。

ところで、まちの市の店主たちはみな素人。

ここからは苦言が多いぞ。

12時なのに店先に誰もいない。

300円の弁当を手にとってもどうしてよいかわからない。

奥にレジがある。

ここで買うのか?

しかし誰もいない。

レジの引き出しが開きっぱなし。

たまりかねてクレープ屋のお姉さんに声をかける。

お姉さん慌てて
『レジお願いします!』
と叫ぶ。

居酒屋の調理場から慌ててオバサンが飛び出してくる。

『温めますか?』

『…お願いします…』

オバサン弁当掴んで引っ込む。
僕は仕方なく居酒屋スペースの席につく。

この店、スッゴい。

これ以上コストダウンできません。といわんばかりの安普請。
合板の椅子とテーブルは立ち飲み居酒屋を通り越して大学の模擬店のよう。

やがてチンした弁当が運ばれてくる。
やけにニコヤカなお姉さんだ。

味はまあ普通…

それより各店舗のスタッフさん。妙に仲が良い。
仲が良すぎて、店の人か客か区別がつかない。

ものすごい素人。

もうね…
ドン引きするくらい素人。

それではこの大阪で商売するのは厳しいんじゃないか…

と心配せずにはおられない。

なぜならここは道具屋筋。

素人のお客さんではなく、

『プロのお客さん』

しか通らない。

しかしなんか気になるところではある。

みなさん。この愛すべき東北の素人店主さんたちを応援してやってください。
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かつて『純喫茶』と呼ばれる店があった。

今やカフェ全盛であるが、純喫茶の全盛時代である70年~80年台ではカフェとは女性が酒を供する店であり、純喫茶とカフェでは純文学書とエロ本を比べるくらい言葉の響きに開きがあったものである。

今や純喫茶はイリオモテヤマネコ並みに絶滅危惧種である。

その純喫茶。

実は大阪には結構残っている。

『レトロ喫茶』

と呼ぶこともある。
しかしながら、平成の時代に作られた昭和風のエセ純喫茶では『マヅラ』の足元にも及ばない。

マヅラは1970年の昔から、この大阪駅前第一ビルに孤高のごとく存在し、風格をたたえ歴史を刻んでいる。

そう場所は大阪駅前。

おお一等地ではないか。

と思うのは他県民。

ああダイヤモンドシティか…

大阪の民ならばニヤニヤするはずだ。

大阪市の第三セクター、ハコモノ失敗ビルである。

しかしながら諸君。

このビル群は穴場なのだ。
思わず舌なめずりしたくなるような魔店がたくさあるのだ。

しかも安い。

ランチで500円はごくごく普通である。

さて『マヅラ』

第一ビルの地下一階に鎮座する。

200人は楽々入れる巨大店だ。
店の前にはシンボルであるジョニーウォーカーの販促人形が。
実にいかした奴だ。
自信に満ちたナイスな笑顔。
欧米人らしからぬ親しみやすい日本人体型。

実に70年代な看板。

マヅラ…

店名の由来が気になって仕方ない。

勇気を出して中に入る。

広い。

広い店内にボーイさんが直立不動で立っている。

半世紀近く使いこんだ椅子とテーブル。

半円形の椅子…

当時モダンの最先端で、一周まわってさらにカッコ良さを極めている。

巨大タコの吸盤のような天井。

気持ち悪…

ナイスな天体型の証明。

幾何学的模様の壁。

おそらくは70年大阪万博で我も我も月の石を見に行った。

『宇宙』

が時代の最先端だった。

そうだ宇宙。

内装は宇宙なのだ。

恐る恐る半円形の椅子にかける。

『…す、滑る…』

なんと宇宙な座り心地。

還暦をさらに一周ほど過ぎたウェイトレスさんがやってくる。

『ええと。ブレンドを…』

『ハイ、ホットですね』

そうだホット。

コーヒーはホットかアメリカン。

アイスコーヒーはレイコー。

由緒正しき大阪の純喫茶である。

コーヒー 250円。
きっと創業以来一度も価格変更していないに違いない。

ホンモノの昭和がそこにある。

しかもカップがキレイ!

程よく使い込んでなお、磨きこまれた艶がある。
汚れ、傷など微塵もない!

味は…

おお程よい酸味が…

思わず口をすぼめるほど酸味がある。

アメリカン。

昔、イタリアンエスプレッソなど影も形もないころ。

コーヒーはホットとアメリカン。冷コーにミルクコーヒーが主流だった。

全く時代にとらわれない味。

1970年で停止したままの味わいがそこにある!

ついでにウェイトレスさんも70年創業のころから働いているはずである!
〔悲しいかな。もう駄菓子屋のおばちゃんの風情がある〕

ミナミの純喫茶アメリカンともども、キタのマヅラも生き残っていって欲しいものである。
久しく滋賀県へ出向していました。
折しも携帯がぶっ壊れ修理に出してました。

24節季の最初、春分の日を迎えたので、ブログ再開!