地図上である対象物を表現するために、あらかじめ定め
られたルールに基づいて評した記号を「地図記号」と呼
ぶ。
国語地理院の地図記号一覧には、「文」をモチーフにし
た小中学校や高等学校、〒の郵便局、鳥居をモチーフに
した神社、大英博物館を模したような博物館などの地図
記号が並んでいるが、寺院を表すものは「卍(まんじ)
」である。
そもそも、なぜ寺院の地図記号が「卍」なのだろうか?
「卍」の歴史は古く、なんと今から約1万年前のインド
においてすでに卍の模様が生まれていたとする説がある。
「卍」はサンスクリット語で「スヴァスティカ」といい
吉祥の印として古くからヒンドゥー教徒に親しまれてい
た。それが仏教にも取り入れられて、寺院の建物などに
刻まれてきたようだ。
「卍」の形は、ヒンドゥー経では、宇宙の維持発展を司
るヴィシュヌ神の旋毛(せんもう・渦巻き状に生えてい
る毛)が由来ともされ、仏教では、お釈迦様の胸に現れ
た瑞祥が由来ともいわれている。確かに、そういわれて
みれば、毛が渦を巻いていると捉えることもできよう。
このように、古くから親しまれてきた「卍」は、「明治
13年式」と呼ばれる、日本初の洋式図式に「仏閣」と
して記載され、やがて寺院を指す記号となったのだとい
う。
平成28年3月、国土地理院は、訪日外国人向けの地図
に用いられる15種類の地図記号を決定・発表した。
その過程において、寺院を示す地図記号である「卍」は
ナチス・ドイツを想起させるもの(ナチス・ドイツの党
章であるハーケンクロイツは卍を反転させたもの)とし
て、デザインの変更を検討していたが、寺院の地図記号
として長い歴史を持つことや、卍の代わりに採用されよ
うとしていた地図記号の三重塔は神社にもあるため混乱
する、などの意見があり、今回は見送られることになっ
た。
当面は「卍」とともに「Temple」と書き添えることで、
外国人の理解を得ていく方針だという。