モンロードクトリン、ルーズベルト大統領の補足案、そしてトランプの1月3日のベネズエラ攻撃は、互いに独立した現象ではなく、これらは、ラテンアメリカに対するアメリカ合衆国の綿々と続く支配構造を示している。
つまり、ヨーロッパによる植民地支配が、アメリカによって取って代わられただけなのである。そして、もはや国際司法や世論によって許されない奴隷制度や植民地支配をするのではなく、
"非文明国"の人道的な擁護者という口実で、搾取と軍事介入による支配を続けているのである。そのための口実が、「麻薬撲滅」であり、「独裁者からの解放」であり、「腐敗政治からの脱却」である。
これらは、毎回、もっともらしく聞こえるが、アメリカ合衆国が、ラテンアメリカに軍事介入し、支配するための口実にすぎない。
ラテンアメリカの歴史の点と点をモンロードクトリンという線で繋いでみたい。
当初から、アメリカ合衆国はラテンアメリカを自らの勢力圏として見なしてきた。19世紀にラテンアメリカ諸国がヨーロッパの植民地支配から独立した後も、アメリカ合衆国はこの地域に真の自治、独立を認めなかった。むしろ、ヨーロッパに代わって、自らの帝国を間接的に築こうとしたのである。
モンロー・ドクトリン(1823年)は、ヨーロッパ列強がアメリカ大陸に干渉してはならないと宣言した。一見すると防衛的な原則のように見えるが、実際には、アメリカ合衆国を西半球の統治者として位置づけるものであった。
セオドア ルーズベルト大統領による補足(1904年)は、この暗黙の主張を明確なものにした。ラテンアメリカ諸国が不安定である、あるいは統治が不十分であると判断された場合、アメリカ合衆国には介入する権利があると主張することで、モンロー・ドクトリンを直接的な介入、占領、支配を正当化する理論へと変化させた。
この時以降、アメリカの支配は外交の背後に隠されることなく、軍事力と経済力によって実行されるものとなった。
20世紀を通じて、特に冷戦期において、この論理は継続した。アメリカ合衆国は、自国の利益と一致する場合に限り、独裁政権を容認、あるいは積極的に支援してきた。
ラテンアメリカにおけるアメリカ合衆国の介入を示す具体例は数多くあり、このパターンをよく表している。
チリは典型的な例である。1973年、アメリカ合衆国は民主的に選ばれた大統領サルバドール・アジェンデを打倒する軍事クーデターを支援した。アジェンデ大統領は社会主義政策を推進し、銅の国有化など、アメリカの経済的利益に直接的な脅威となる施策を行っていた。アメリカ政府は彼の政権を不安定化させ、将軍アウグスト・ピノチェトを支援した。ピノチェトの独裁政権は拷問や司法手続きなしの投獄、処刑を通じてチリを恐怖の弾圧で統治し、国を分断した。
パナマも重要な例である。パナマ運河は元々アメリカによって建設され、管理されていたが、パナマの指導者たちは運河に対するより大きな主権を求めた。トリホス=カーター条約(1977年)により最終的に運河の管理はパナマに移譲されたが、緊張は続いた。1989年、アメリカのジョージ H.W. ブッシュはパナマに侵攻し、大統領マヌエル・ノリエガを排除した。表向きの理由は麻薬取引やアメリカの安全保障への脅威であったが、実際には、運河とパナマの政治に対するアメリカの影響力を維持する目的があった。
キューバも第三の例として挙げられる。1959年、フィデル・カストロが政権を握った後、彼はアメリカ式の資本主義を拒否した。アメリカの資本主義は、キューバを搾取・不安定化させると考えた。カストロはアメリカ資本の財産を国有化し、ソ連と関係を築いた。アメリカは敵対的に反応し、1961年のピッグス湾侵攻(カストロ打倒を試みた失敗作戦)や、今日まで続く長期的な経済封鎖を実施した。
これらの事例は一貫したパターンを示している。ラテンアメリカ諸国が独立した政治的・経済的方針を追求する場合、特にそれがアメリカの資本主義や戦略的利益に相反するものであれば、アメリカは軍事介入、政権の不安定化によるクーデター支援によって対応する。
この意味で、トランプの言説は新しいものではない。彼がベネズエラについて「崩壊寸前だ」「アメリカ合衆国がベネズエラを支配していたはずだ」「アメリカ合衆国がベネズエラの石油をすべて保持していたはずだったのに」と語ったとき、アメリカによる西半球支配の論理が露骨な形で表現された。
それは、モンロー・ドクトリンやセオドア ルーズベルト補足案に共通する論理、すなわち、劣っているラテンアメリカ諸国はアメリカの政治的・経済的期待に従うべきであり、反抗は許されないという考え方、つまり、ラテンアメリカは、アメリカ合衆国の裏庭であるという前提をそのまま反映している。
アメリカ合衆国にとって、問題は民主主義そのものではなく、服従である。
2023年の6月に(バイデン政権時)トランプが言った言葉
"When I left, Venezuela was about to collapse. We would have taken over it, we would have kept all that oil."
「私が政権を去った時点で、ベネズエラは崩壊寸前だった。
我々が主導権を握り、石油資源も管理していたはずだったのに」
1823年、ジェイムズ モンロー大統領が出した声明、モンロードクトリン
“…the American continents… are henceforth not to be considered as subjects for future colonization by any European powers.”
アメリカ大陸は、従って、どのヨーロッパの国によっても、将来、植民地の対象にはならない。
1904年 セオドア ルーズベルト大統領によるモンロードクトリンの補足
“Chronic wrongdoing, or an impotence which results in a general loosening of the ties of civilized society, may in America ultimately require intervention by some civilized nation.”
「アメリカ大陸の国々の中で、慢性的な不正や腐敗によって国家としての統治能力が失われ、文明国とは言えない状態に陥った場合、文明国による介入が必要とされることがあり得る」
今回のトランプ大統領によるベネズエラ攻撃、ニコラス マドゥーロ大統領夫妻逮捕、拘留は、麻薬に対する戦いだと、言われ、一見、突拍子もないように見られるが、モンロー ドクトリンから、セオドアルーズベルトの補足案を通して、綿々と続く、アメリカ合衆国のラテンアメリカに対する覇権主義を如実に表していると言える。
戦争を止める効果的な方法は、世界中の人々が、何が起こっているか、なぜ起こっているかを知ることであり、直ちに、止めるべきだと一人一人が声を上げることである。
そのためには、今起こっているニュースの表層を見て判断するだけではなく、歴史を遡って、全体像を知ることが必要である。