予約した日に母と二人で面会に行ってきた。
当日の朝に「遠方から娘が来ているので、面会の前後どちらでもいいので主治医の先生のお話を聞く時間を作ってもらえないでしょうか?」と母が病棟の看護師に電話で聞いてみると、「こちらでもそのつもりでしたから、大丈夫ですよ~。」と温かい言葉が返ってきた。転院の時はバタバタで母も主治医の先生とじっくり話す時間も取れなかったみたいなので、これで一安心だ。
面会の手順を踏んで、まずは父の病室に入った。
父は血圧も低いし少し呼吸が苦しそうだったが、酸素はつけていなかった。声をかけると目を開けて何か伝えようとするけれど、入れ歯を入れていないのと声が弱々しいのとでよく聞き取れない。
父にとっての東京の甥っ子と名古屋に住む孫が手紙をくれたのでそれを見せると、「眼鏡(を寄越せ)」と一言。おっ、眼鏡をかけて字を読もうとする意欲が見える。しかし、母は転院の時に父の反応が薄かったので眼鏡は自宅に持ち帰っていて、今日は持ってくることをすっかり失念していた。
「ごめ~ん、父さん。今日は眼鏡持ってきていなから、明日〇〇(同居の弟)に持ってきてもらうよ。」と謝ると、全く仕方ないな…という顔をして私たちを見ている。それでもその様子に母は「3日前に転院した時よりも全然反応が良くて安心した。」と胸を撫で下ろしていた。
途中で主治医の先生との面談となり、母と私は別室に呼ばれた。先生の話では血圧が低いことと前日の深夜に一度不整脈があったと言われた。
私たち家族としては輸血の同意書にはサインしたものの、無理な延命は希望しないことと痛みや苦しさはできるだけ取り除いて欲しいことを伝えた。すると先生も「ではその方向で自然に任せるようにしましょう。」と理解を示してくださった。誠実そうな先生で、この先生が主治医で良かったと思えたよ。
面談の後で病室に戻り、父の手を握りながら少し雑談をした。すっかり痩せてしまった父だけど手はもともとの脂肪が少ない部位だからかあまり変化はなく、すべすべして健康な時と変わらないなあと不思議な感慨をもった。
そして帰りがけに「父さん、また来るね。」と声を掛け手を振ると父もその手を振り返してくれたのである。
私たちが予想していたよりも父の反応が良かったので、帰路は少しだけ明るい気持ちで実家に戻ったのだった。