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・白(KURO)/1985.8.15 GIG
ガキみたいに興奮した。俺がパンクに抱いていた幻想がテレビジョン越しに覗き込めた。まるで、ビデオテープから、画面から、飛び出してくるかのようなメンバー達。
パンク・ハードコアが好きだった。好きだったからこそ絶望した。想像していていたよりも礼儀正しくて、こじんまりとしていて、悪い意味で自分勝手で、こんなもんじゃないと一部のシーンを見て思っていた。
パンクは死んだのか?実際はわからない。ただ80年代にパンクが生きていた事だけは、この映像が証明してくれた。
アナーキーなんてもんじゃない。メイクが怖いとか、そういう問題じゃないのだ。もう危ない奴の動きそのもの。ジャンキー、不良と聞いて、想像したそのままの姿が映像に映っている。ふらふらしていたかと思えば、客に飛びかからんばかりに、一心不乱に前に進み出すボーカル。狂気そのものだ。
ギターなんて掻き鳴らすって感じだ。彼らが「ノイズコア」と呼ばれていた真の意味はコンパクトディスクからは伝わらない。この映像を見てそれを初めて理解出来た!楽器を持って客に突進するギタリスト!フリーキーな演奏はタイトなベースやドラムに支えられて一体化し、真のノイズを生み出す。
パンクは音楽性であり、見た目を着飾る必要はないと考えている人間もいるかもしれないが、私はそう思わない。ヴィジュアルと音楽性の融合を見事に果たしたバンド。それが白(KURO)だった。
彼らは間違いなくライブバンドだった。その姿が拝めるのはリアルタイムで見ていた人間と、このVHSを手に入れた人間だけというのはあまりにもわずかだと思うし、でもそれが伝説というものなのかもしれない。
伝説なんてのは誰もが知っている必要はないのかもしれない。限られた人間だけが体験していれば…。