・SABBAT/破魔紅漓伝説

これは本当に凄まじい映像作品だ。DVD化してほしい気もするし、しなくていい気もする。しかし何より破魔紅漓伝説(はまぐりでんせつ)だ。そして内容。笑うなという方が無理である。

これは日本の最古参ブラックメタルバンド、三重のサバトのライブ映像を収録したビデオである。5つの会場でのライブとボーナストラックを収録している。

最初はクレジットによると四日市 Public Hallでの1986年のライブとなっている。「エントリーナンバー~」とアナウンスされている事から、アマチュアバンドの大会イベントだったのかもしれない。

それにしてはあまりにも禍々しいステージング。とにかく若き日のメンバーが走り回る激しいパフォーマンス。Gezol氏が初期の名曲「Kanashibari」で「か~な~し~ば~り~」と叫ぶところなんかは、完全に大爆笑ものである。他にも勢いに任せて歌う「Black Fire」も若々しく、歌唱力のなさなんて、ものともしない感じだ。何より1986年に学生だった彼らがこんなバンドを結成している事が奇跡なのである。余程の変人だったのだろう…。

2番目は「Under The Castle ; Nagoya」とクレジットされており、こちらも1986年のライブだ。まずブラックメタルバンドに似合わない野外ステージで、「エントリーナンバー1番、Black FireのSABBAT!いや、逆です!SABBATのBlack Fire!」と間の抜けたアナウンスが入る事から、こちらは確実にアマチュアバンドの大会のようだ。いつもの通りにメンバーが「Black Fire」を演奏する。問題は映像なのだが、Gezol氏の股間のハミ毛にカメラがどんどんアップしており、笑わせられる。

演奏終了後にギターのOnzy氏が司会者にインタビューされ「賞を取りにきたんですか?」との問いに、「ただ出にきただけ」とそっけない回答をしており、そもそも賞とかには興味がない事が伺える(当たり前か…)。またインタビュアーの女性が「(Gezol氏が)楽器を持っていなかったら、(あそこが露わになって)大変な事でしたね」とか、Onzy氏の名前に対して「(オンジーではなく)オナニーじゃなくて良かった」なんてしょーもないコメントを残しているのが時代を感じさせる。

しかしアマチュアバンドの大会で1発目がハードコアなメタルのバンド、それもあのSABBATの「Black Fire」なのだから、観客は度肝を抜かれただろう。

一部映像がyoutubeで見れます。最初のアナウンスとか、Onzy氏のインタビューは削除されていますが…。

3番目はPanta Rockmaykan : Osakaという事で3人編成のかなりまともなライブ映像だ。1987年とクレジットされているが、この頃から構成力があり、今に繋がる複雑なブラック・スラッシュを演奏していた事が明らかになっており、学生時代から並外れた演奏力があった事を窺わせる。

4番目、Huck Finn Nagoyaでのライブ、1989年と続き、ちょっとまともなライブ映像で飽きてきたところに、1991年のFlex Hail ; Nagoyaでの映像!なんと超レアなPossessed Hammer氏がボーカルだった時代の映像!そう、Gezol氏のベースボーカルではなく、ボーカルだけを専任するPossessed Hammer氏の姿が見られる。

その彼の全くゼロの歌唱力と、肩で風を切って歩くような、妙に暴力的な歩き方に、また笑ってしまうのだ。まさに「練り歩く」という表現が正しいだろうか?そして演奏の途中で剣のおもちゃを取り出して客に突き刺そうとする!もう笑わすのはやめてくれ!

最後は恐らくはVHSがリリースされた頃の2003年近くのライブと思われる映像がボーナストラックとして収録されている。3人編成、かなり大人になってしまったGezol氏率いるメンバーだが、驚異的なまでの演奏力には改めて驚かされるばかりである。

このVHSには伝説のSABBATの姿がしっかりと収められている。まさに貴重映像とはこういうものを指して言うのだと思う。ファンであれば死に物狂いで手に入れてもらいたい1本。