・銀杏BOYZ/BEACH (2014)

「光のなかに立っていてね」という9年ぶりのフルアルバムと同時にリリースされたライブ盤。

「光のなかに~」は確かに間違いなく、あの峯田氏によるパワーに満ち溢れた作品で、昔とは違ったハーシュノイズ的アプローチが独特な意欲作ではあった。しかしバンド色が強かった「第三次~」、「DOOR」といったアルバムに比べると打ち込みの色が強く、バンド感も減って峯田のワンマンといった空気が充満。賛否両論分かれそうな作品だと個人的には思った。

だから正直、「BEACH」を聴いた時に「聴きたかったのはこれだよ!!」と思ってしまった。この作品は2005年~2007年頃のライブ音源を元にノイズやSEで処理された特殊なライブ盤だ。恐らくは通常のライブ盤でも十分に評価されただろうし、このノイズやSEが邪魔だという声もありそうだが、個人的にはノイズというジャンルに入れ込んでいたのもあり、このアプローチは面白いと思った。

2~4曲目の「十七歳」、「SKOOL KIL」、「日本発狂」の流れなんてまさに発狂物。あの当時の銀杏BOYZの熱気が伝わってきて、いやがおうにも体が動く。猛烈なノイズもあってか後半までテンションが下がらず、それはミドルテンポの曲でも猛烈な熱気を放つ事で維持される。

そして後半の「べろちゅー」から、名曲「人間」の流れ。ノイズも消え、ライブハウスの静寂の中「人間」の出だしを歌う峯田の声に鳥肌が立つ。そしてアルバムは一気に終幕に向け加速し、最後はGOING STEADYの「まだ見ぬ明日に」のカヴァーで締められる。

ここには9年前に最初のフルアルバムを出したばかりの銀杏BOYZの熱気が閉じ込められていた。

過去のものばかりを評価していると懐古主義と言われてしまいそうだが、私の求めていた銀杏は「光のなかに~」よりも「BEACH」に収録されていたというのは事実であって、私が求めていた銀杏BOYZのあるべき姿はこれだと思った。同時にアルバムの発売もなく一般的には活動しているのかしていないのか伝わってこなかった2007年に、これだけ壮絶な音を鳴らしていた事にも震えた。

銀杏は確実に進化していたが、そのベールが一般に暴かれた時にはメンバーは脱退し、バンドは形を成していなかった。なんとも悲しい話である。

「十七歳」等のシングルからアコースティック路線に移行したのかと思っていたが、ここにきて強烈なノイズを浴びせてくれた銀杏。やはり銀杏BOYZは轟音でなくてはと思った。出来ればオリジナルメンバーでの新作アルバムのライブを行って欲しかったと思ってるのは私だけではあるまい…。