$ぷんぷん臭う糞みたいなロック
・GASTUNK/MOTHER(1988)

GASTUNKと言えば「GERONIMO」に代表される初期シングルや、プロレスの入場曲で使われた「DEVIL」、そしてX JAPANにも影響を与えハードコアとメタルの融合、80年代のメタルコアサウンドを提示した1stアルバム「DEAD SONG」が有名である。

しかし、その為にヘヴィメタル影響下にある「MOTHER」が無視されて良いかと聞かれたら、それは大きな間違いである。ラストアルバムにして賛否両論あった3rdアルバムだが、私は声を大にして、このアルバムこそ最高傑作であると断言したい。

初期はそれこそ猪突猛進で勢いまかせのハードコアサウンドが多かった印象だが、このアルバムではBAKIは歌い、曲もミドルテンポが多くなり聴かせる内容となっている。これがジャパコアからスタートしたバンドのアルバムとして考えるならば、歌詞カードを見なくても歌詞が聴き取れる事、それ自体が革命的だと思うのだ(笑)。

そして誤解を恐れずに言うならば、この「歌物へヴィメタル」は後にヴィジュアル系と呼ばれる音楽の元祖だと思う。L'Arc-en-CielのHYDEはGASTUNKの影響を公言しているが、影響されたのは初期ではなく、むしろ、この時期なのではないかと、勝手に想像してみる。

1曲目の「WATING IN THE SKY」はミドルテンポの曲ではあるが、雰囲気抜群で、強烈なリフと共に、GASTUNKここに有りと言わんばかりだ。続く「COUNTER-CLOCK WISE」でもそのテンションは落ちる事がなく、「NECROPHOBIA」でテンションは爆発する!!

まるで1stの楽曲を長く、構築的にしたかのようなハードコアナンバーだが、BAKiの叫びのような歌い方といい、TATSUが弾くギターソロといい、お見事としか言いようがない。勿論、BABYやPAZZもそのどだいをきちんと固める。

「MOON CHILD」は彼等にしてはキャッチーで明るいバラード。あとは「FIGHTING MAD」~「BLUE PETER」の流れが最高。特に「BLUE PETER」も最高のハードコアナンバーの1つである。

そしてラストは「GENESIS~REVELATION」という壮大なバラードナンバーで締められる。これはTATSUのメロディアスなギターの真骨頂と言えるだろう。

このように「MOTHER」には捨て曲がなく、ミドルテンポの曲も飽きる事なく聴き通す事が出来る。世の中にはハードコアの名盤、ヘヴィメタルの名盤、ヴィジュアル系の名盤と各ジャンルごとに名盤と呼ばれている音源があるが、この「MOTHER」はジャンル分けが難しい故に、どのファン層にもあまり薦められていない、悲劇の名盤だと思う。

有名なバンドの後期のアルバム…後回しでいいや。そう思っている方には急いで手に取ってもらいたい1枚。

MOTHER/GASTUNK

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