佐々木ゆずです。


毎日新しい出会いと体験に溢れていたクレムスもいよいよ最終日。多種多様なプログラムが朝から晩まで盛りだくさん、充実しすぎてちょっとハードだったかも、山田くんは最終コンサート後に発熱してしまって午前中はゆっくり休憩。佐々木1人で午前中のプログラムへ向かいました。


泊まっていたアパートメント。


クレムスの会場、ヒッポリットハウス。

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朝ごはんの後、お世話になったヨハンナさんに2人からの贈り物をお渡ししました。

運営事務を取り仕切りながらも私たちへの渡航前からのインフォメーション、宿泊等の手配、クレムスに到着してからも何かとお気遣い頂き、「心配なことは何でも聞いてね!」と事あるごとに言って下さいました。2人ともヨハンナさんのおかげで毎日を楽しみ、充実した日々を過ごせた事をしっかりお伝えしました。


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発声の後は、エルヴィンが大切にしている3曲、Ave verum corpus、Locus iste、Os iustiの3曲から練習。これらは今日のミサでも歌います。Os iusti、祈りが通じて天からの光が数多の人々に降り注いでいるような進行、大好きな一曲になりました。

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最後のプレナムはハイドンのミサプレヴィス、弦楽六重奏の合わせ。ウルスラさんとヨハンナさんが目を合わせながら、時に踊りながら(笑)歌うソリの粋なこと。エルヴィンの指揮のもと、弦楽、ソリ、合唱が三位一体と言った感じで一つにまとまっていきます。


個人的には、シェーンベルクコアに混ざったり、何度もエルヴィンの指揮で歌ったことで、楽譜の見え方、音楽の捉え方、自分の歌い口が変わったように思っています。楽譜の大きなフレーズをとらえて文章の中でのアーティキュレーションを見つけ、それが一本の線で滑らかにつながっているように歌うことができるようになってきた気がします。技術的にもしっかり成長できているかも!

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会場裏のお庭を抜けて教会へ、初めてのミサ。

客席前方に女声、サイドにそれぞれテノールとベースが座ります。目の前には輝くシャンデリア、祭壇にはろうそくが2本。マナーが分からないのでちょっとどきどきでしたが、みんなと一緒のことをすれば大丈夫だよ、とのこと。


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プログラム。







厳粛に、けれども一人一人が一つ一つのことを大切に味わうように次第は進みました。ゆっくりと息を吸って、耳を澄まして、自分なりに神さまに気持ちを向けて、大切に時間を過ごしました。


・ミサはKyrieからAgnus Deiまで続けて歌う訳ではなく、お祈りの言葉が挟まれたり、順番が決まっています。

・オルガンはハイドンとモーツァルトの旋律をもとにしたimpovizationが何度かありました。和声が結構現代的でびっくりしたり。

・賛美歌が何篇か載っていて、いっしょに歌います。1人が前で先唱して、後に着いて歌ったり。

・お祈りの言葉は神父さんに続いて、対話の形でみんなで唱えます。

・エルヴィンの指揮も私たちと弦楽の演奏も劇的なことは起こらず、ずっとあたたかく穏やかで、しかし静かに生き生きした時間が流れていきます。

・聖体拝領。神父さんの前に皆が一列に並び、パンがちぎって配られます。みんな一礼してパンを口に入れ、キリストの御身体を自らの身体に取り込んでめいめい戻っていきます。

・ウルスラさんとヨハンナさんの二重唱曲も美しく歌われました。

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学校で宗教を教えているマルクス。ミサが終わった後色々と質問してみました。

「途中で近くの人と近くの人と握手をしたのは皆で平和を祈るためだよ」「お祈りの言葉は定型文だからみんな覚えてるんだよ」「自分も毎週日曜はミサに通っている。日曜日はクリスチャンにとっては神様のことを考える日なんだよ」と微笑みながら答えてくれました。

本当に敬虔なクリスチャンの方にお会いすると、その方の心が真から澄み切っていることを身体で感じることが時々あります。マルクスはまさにそんな人で、声をかけるたびに溢れそうなほど目尻を下げて話してくれ、期間中ずっと私たちを優しく眼差してくれました。

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中庭で最後のお別れパーティ。山田くんも何とか復活。よかった!

講師の先生方があちこちで名前を呼んで、修了証を配ってくれます。

そして参加者の皆さんと別れを惜しんだり、握手したり、ハグしたり。「あなたの指揮で歌えて良かったわ」「またピアノを聴かせてね」「オーストリアは気に入ってくれた?」「またいつかのクレムスで会おうね」…。




ベースの紳士、ヴィーギル。初日の初講義のStudio、「ドイツ語をキャッチできなかったら質問させてください」と挨拶の時に頼んだら、小節番号やレクチャーの内容など逐一丁寧に訳して快く教えてくれました。



テノールの紳士、ゲラルド。初日のフォークダンスでぼくのことをくるくる回してくれました。練習でも隣のことが多くて何かと助けてもらいました。




ダニエッラ、フカオク、マリーナのお姉さん3人組。カラオケの後、「いっしょに飲みましょうよ!」と誘ってくれて楽しくお話をしました。studioコンサートで天使が羽ばたくような三重唱を歌い上げていて、すごく感動したことも伝えました。




シュッツのドッペルコーラスを2曲も指揮したレンカ。山田くんのブログにありましたが、彼女はテクニックもセンスも、そしてパーソナリティが本当にすばらしく、この人に着いて行きたいと思えるコンダクターでした。

本人に話すと、「私も人間性が1番大切だと思う、そのために意識的にしていることがある。前に立ったら必ず一人一人と目を合わせて、それぞれの声と気持ちをキャッチするの。」とのこと。ぼくもやってみよう。




ポール!たぶん3人だけだった20代男子チーム、すっかり仲良くなりました。合唱の本番に乗るのは初めてだったみたいで、「すごく良い体験だった!でも疲れ果てちゃったよ!」とニコニコしながら握手をしてくれました。


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エルヴィンにもご挨拶へ。

1日1日が貴重な体験でしたと伝えると、顔をくしゃくしゃにして喜んでくれました。エルヴィンが立ち上げたシェーンベルクコアとクレムス合唱アカデミー。

我らがマエストロ栗山先生もそうですが、たくさんの人たちの真ん中に立って輪を繋ぎ続ける業は決して簡単ではないものだと思います。人と人との縁、人と音楽との縁…回り繋がり続ける美しい輪の中の1人として生きることができていることが幸福です。初めから予想していた道ではありませんでしたが、運命の導きの通りに道を歩いて行ったら、こんなに豊かな景色を見ることができました。そしてまだまだ道は続き、輪は繋がっていく、ということが嬉しいです。


そして多くの人がお別れの餞に言ってくれた言葉、「Alles gute!」。あなたの未来にたくさんの素敵なことが訪れますように、ではごきげんよう、という意味だそう。大好きな言葉になりました。ぼくらも「Alles gute!」を心から送りました。笑顔、笑顔、笑顔。出会いがたくさんあった分、たくさんのお別れ。でもまたきっと会える、と根拠もなく思えるし、たくさん勉強してお金を貯めたらまたクレムスに、そして大好きになったオーストリアに戻ってきたいな、そして再会と共にお互いの成長を讃え合いたいな、なんて考えました。


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祭りの後。

お昼ご飯を食べてウィーンのホテルへ。

本調子でない山田くんはそのままお休み。ぼくは美術史美術館や国立歌劇場に行ってみました。





想像の5倍サイズだったソフトクリーム。



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そして翌日帰りの飛行機に乗り、無事に日本に到着し、成田空港からの電車の中でこのブログを投稿しようとしています。




出発時と同じ構図でパシャリ。

2人とも毎日の新しい体験で成長できた!はず!


山田くんには今回たくさん助けられました。

特に英語のコミュニケーションが抜群で、ぼくの足りない部分を補ってくれました。

「Akiraの英語分かんない!Masahiro、翻訳して!」なんて言われることもしばしば(笑) 

そしてシェーンベルクコアと上手く話せずへこんでいた2日間も、付かず離れずちょうど良い距離感でサポートしてくれたことがすごくありがたかったです。TOKIOくん本当にありがとう。 

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総括は難しいですが、大らかに真摯に日々を味わい経験し、各日のブログで感じたことや考えたことを余さず丁寧に書けたように思います。


合唱の歌い手として、指揮をしたりピアノを弾いたりする者として、そしてこの世界の中で生きる1人の人間として、この経験がどんな風に生きていくのかまだ分かりませんが、心に爽やかな風が満ち満ちている今の気持ちにいつでも戻ってこられるよう、この経験を起点に何回も再スタートできるよう、音楽をする者として自立して道を踏みしめられるよう、この2週間の記憶を大切に心に留めて、でも新しく新鮮にこれからの日々を歩いて行こうと思います。


最大級の感謝を、

留学にあたり、たくさんの応援や支援をしてくださった皆さんへ。

この留学で出会い、時間を共にし力になって下さった皆さんへ。

そして最後に、エルヴィンと栗山先生へ。

Vielen Dank!


Alles Gute!!

(2024.07.16  佐々木晶)