🐟【魚をさばけるようになると、人生がちょっと豊かになる】🐟


市場勤めをしていた僕は、毎朝のように魚と向き合っていました。

氷の上で光る魚たち、威勢のいい掛け声、そして包丁の音。

あの頃の市場には、魚に向き合う人たちの真剣な“温度”がありました。


そんな環境にいたからこそ思うんです。

「魚をさばけるようになる」って、ただの料理スキルじゃない。

それは暮らしを少し豊かにする“入り口”のようなものなんです。


最初はみんな、包丁を入れる手もぎこちない。

「骨に当たった!」「身が崩れた!」なんて言いながら、台所はちょっとした戦場。

でも、何度か挑戦するうちに、骨の位置や包丁の角度、力の抜き方が分かってくる。

その頃にはもう、魚を“さばく”というより、“魚と会話する”感覚になっているんです。


さばけるようになると、お刺身が作れるようになる。

自分で引いた刺身は、スーパーのものとはまるで違う。

揚げ物も煮物も焼き魚も、魚の個性を知るほどに味が変わる。

気づけば、食卓は魚で賑やかに。

季節ごとの魚を楽しむようになり、家族の笑顔も増える。


そして不思議なもので、そんな暮らしをしていると、

魚好きの仲間が自然と増えるんです。

「この前はアジを南蛮漬けにしたよ」

「俺はヒラメを刺身でいった!」

そんな会話を肴に、お酒も進む。

料理を通じて人とのつながりまで広がっていくんです。


魚をさばけるようになると、市場や魚屋での目も変わる。

「この魚は脂がのってるな」「この目は新鮮だ!」と、

魚を“選ぶ力”も身についてくる。

そのうち釣りにもハマり、自分で釣った魚をさばいて一杯。

これが、最高の贅沢ってやつです。


魚をさばけるようになると、料理の幅が広がるだけじゃない。

「食」と「人」と「暮らし」が、まるで糸のようにつながっていく。

その喜びを知ったとき、きっと誰もが思うはずです。


──あぁ、魚っていいなぁ。


今日もそんな気持ちで、包丁を握っています。