エピローグ、責任と信頼


~午後・矢島学校・周辺~

本日は僕にとって最初の生徒会活動です。

責任を持って、しっかりと仕事をこなして以降と思った矢先。

今回の仕事は想定外とも言えました。

生徒副会長である矢笠が、僕にゴミ袋を渡します。

そして、彼は軍手を装着し、近くに落ちていた空き缶を拾いました。

ほら、さっさとしろ。草薙

お、おぉ。何だか……拍子抜けだな

ゴミ袋を広げ、矢笠や拾った空き缶を受け入れます。

今回は生徒会の旧役員と新役員が、合同で学校周辺の清掃活動をすることになっていたのでした。

その中には部活動の参加もあり、破魔が僕のすぐ後ろに張り付くように立ちます。

ふむ。髪の毛は十七時間二十七分前に洗ったようですね。会長の分際で、なかなか気を遣っています

(う、うるせぇ……) なぁ、お前の清掃区域は弓道部の範囲だろ? ここは生徒会に任せて、あっちへ行ってくれないか?

いくら応援者だったとは言え、彼女の行動は常識を逸していました。

すでに、「会長の分際」といっているあたりから信じられません。

そう考えていると、旧役員だった奈留が近づいてきます。

そこ。いつものコントをしている場合じゃないことくらい分かるわよね? 会長もいくら票が多かったからって、調子に乗っていると土に還すわよ

(土に!?) す、すみません。気をつけます

もはや、会長としての面目は皆無に等しいのでした。

考えてみれば、会長とは、一年以上生徒会に携わっていた人間が妥当のはずです。

しかし、それとは関係なく、僕は謝るだけでした。

すると、今度は矢笠がゴミを拾い上げて、こう言います。

ふん。生徒会とは、学校の生徒による生徒のための生徒の集まりだ。

生徒会があって学校がよくなる。学校がよくなって生徒がよくなる。生徒がよくなって生徒会がよくなる。

このサイクルを作るには、きっかけが必要だ。

今回の仕事が、そのきっかけ作りだと思え

(うおぉぉ……普段から難しいことを考えているなぁ……) あ、ああ。

その通りだ。けど、責任を持って動くように。

特に地域住民への挨拶は大切だ。いいな

僕はその場に居た全員に言い聞かせ、散り散りに返事が聞こえてきました。すると、破魔が眼鏡を輝かせて僕の肩に触れます。

おや、こんなところに社会のゴミが落ちていますよ

(腹立つ!) だから、お前は帰れ

もはや、必要以上のツッコミを避けたくなりました。

すると、清掃している最中、矢笠が僕にこう言います。

そう言えば、言い忘れていたことがある。

俺の体験談でもあるが、今回の得票数は……後にお前の障害になるかも知れん

そう言われ、僕は「まさか……」と軽く振り払いました。

矢笠は僕の対応に対し、それ以上は口を出しません。

もはや、責任を言う恐怖を克服し、それだけの信頼も得ているはずです。

それは単純な気構えでありながら、日常でようやく手に入れた知識なのでした。

そう。これからは生徒会長として、普通の生徒よりわずかに忙しい一年間が始まるのです。

こうして、僕たちは清掃活動を通し、生徒会内部の親睦を深める事になりました。

もちろん、これからも責任と信頼を背負い続けるのです。


END


登場人物

草薙 香    主人公

宮司 破魔  眼鏡の学級委員長

草薙 奈留  初登場、クラスメート。香と血縁はない。お嬢様

矢笠 学  生徒会長。香の友人

*ご意見・ご感想、お聞かせ下さい。コメントお待ちしています。


学校生活案内書はいかがだったでしょうか。

長くお付き合いくださった皆さん、ありがとうございました。

次回は、夢のさめかたを掲載します。

少し時間を戻して、学校生活案内書の一年前、香が八島学園高等部1年の冬の出来事からはじまります。

2年生になって、春の体育祭を題材とした、斬新なシーンなどもあり、お楽しみいただけると、うれしいです。

また、今回は、あらすじや概要の説明なしにはじめます。

どうか、よろしくお願いいたします。


ストーリーの概要・あらすじ

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