(12月16日 ) 4


~数分後・自宅・寝室~ 1

最近使われなくなった、親の寝室です。

僕の誕生日以来、行方をくらませてしまった存在なのでした。

その親の寝室を使うことになったのは、先ほどの会話の流れから察して欲しいところです。

そして、その親の寝室は皮肉にも、僕たちが先に利用することになったようでした。

そして、布団が四つ並ぶと思いきや、二つしか並べられていません。

僕はその布団の枕元に立ち、布団を用意した詩織に訊ねます。

な、なぁ……狭くないか?

僕の質問に対し、彼女は腕を組んで答えました。

大丈夫です。いつものフォーメーションですから

(いつものフォーメーション!?) そ、そうか

全く心当たりがありませんが、いつものように眠ればいいということを認識します。

すると、結が寝巻きのまま布団に飛び込みました。そのままもぐりこみ、叫びます。

にゃああぁぁぁぁ! ポジションA地点! 確保いたしました!

(あれぇ!? やっぱり知らねえぇぇぇぇぇ――――――!)

まさに意味不明と言う言葉が相応しい状況でした。

そして、近所迷惑です。

すると、詩織も布団にもぐりこみ、結と一人分の間隔を置いて僕を見上げました。

ポジションC地点確保。兄さん。今です!

い、今!? えっと、ポジションB? ち、地点! 確保!

僕は妹たちのノリにあわせ、やや戸惑いながらも布団の中にもぐりこんで仰向けになります。

その直後、真央が遅れて寝室に入り、叫びました。

あぁ~! 合体変形なの! ボクも融合!

そう言って、彼は仰向けになった僕の腹部に乗り込み、うつぶせになって僕と視線を合わせます。

そして、彼は僕に抱きつき、頬ずりをしました。

みゅう~。お兄ちゃん。お胸が温かいの~

そ、そうか? そう言えば、四人で寄り添って寝るのは初めてだな

僕がそう言うと、結が隣でつぶやきます。

そうそう。萌え萌えでござりますなぁ~

(萌え萌え!?) そんな事はないと思うけど……まぁ、いいか

一瞬だけ、脳裏をある言葉がよぎりました。

兄としての責任。

その責任があるからこそ、兄でいられること。

そして、兄としての幸せも、責任に起因しているものです。

そう考えていると、僕の左側に居た詩織が、僕の左腕をつかみました。

このまま、ずっとこの時間が続けばいいのに……そう思いませんか? 兄さん

思わないな。同じ時間が続くって言うことは、その他の全ての時間を犠牲にすることだ。今より幸せな時間があれば、不幸な時間がある。それを知ってこそ。思い出が残る……と思う

不意に、自分の誕生日を思い出してしまいます。

同じ日が何度も続いていたことに気付かず、幸せな日々をすごしていました。

しかし、あの日から抜け出さなければ、今のような幸せはありえません。

今でこそ、生徒会長になって、真央も居て、成長した自分がここにいることを実感します。

こうして、僕たちは全員で一緒に寝ることになり、やや遅れた夜が訪れました。

〔つづく〕

登場人物

草薙 香    主人公

草薙 詩織   香の妹 双子の姉厳格で気丈 中等部 二年

草薙 結   香の妹 双子の妹 のん気で明るい中等部二年

大根 真央  香の従兄弟、両親は他界 小等部三年

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ストーリーの概要・あらすじ


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