「結名~。今日はバイトはある日だっけ?」
「うん」
「そっか~。いつなら空いてる?」
「今週の土曜日は久しぶりに休みだから、前に言ってたあのケーキ屋には土曜日に行けると思う」
「オッケ~。じゃあまた明日ね~」
「うん。また明日」
両親が仕事で海外に赴任したのが半年前。結名は日本に一人で残ることになり、念願の一人暮らしが思わぬ形で始まった。幼い頃から料理や洗濯など家事のやり方は知っていたので、一人暮らしをすることになっても困ることはなかった。その上学費や小遣いは与えられていて、毎日の食費を引いても少ない額ではなかったが、女子高校生ともなれば欲しいものは沢山でてくる。結名は両親が家を出てすぐに飲食店のアルバイトを始めた。
結名は校門を抜け、町の方へ歩いてゆく。働いている飲食店は、学校から歩いて15分程のところにあるが、いつも結名は遠回りして30分かけて通っていた。15分で着く道は暗くて、よく犯罪が起きるので、その道を通ることは避けてきた。しかし、今日は6時間目が長引いたため、いつもよりも早く行かなければならなかった。しばらく迷い、結局時間を優先して15分の道を通ることにした。
緊張して、いつもより早足になってしまう。なにも起こるなと心で願いながら中間地点まで来た時、背後に気配を感じた。振り向こうとしたが、素早く口に布を押し付けられ、結名は気を失った。
違和感を感じ、結名は目を覚ました。仰向けなので体を起こそうとしたが、結名の手足は縛られていて、若干背中を浮かせる程度しか体を動かせなかった。違和感は体だけでなく、今いる部屋も結名に衝撃を与えた。結名の視界に見慣れた部屋はなく、真っ白な狭い部屋があった。部屋にはドアがひとつとエアコンらしきものが上にあるだけで、窓や椅子はなかった。その部屋の中心に、結名は磔台に万歳の形で縛られ仰向けに寝ていた。
しばらくすると、覆面の人が部屋の中に入ってきた。
「目覚めたようだね」
低い声から男だと推測できたが年齢までは推測できなかった。
「な、なんでこんな・・・どういう・・」
結名が言い切る前に男は言った。
「別にあんたを傷つけたりしない。すこし付き合ってもらうだけだ」
結名は恐怖を感じた。今すぐに逃げたかったが手足が全く動かない状況では何も出来なかった。
「なぜ、俺がこういうことをするのか疑問に思っているだろう。説明してやろう。それは、とある人からあんたをお仕置きしてくれと頼まれている。それであんたを縛らせてもらった。そういう商売をやっている」
説明になっていない上にこんな状況では相手を信じろというのは無理だった。
「早く解放してください!」
結名は怒りに任せて声を張り上げた。しかし、男は怯む様子もなく、結名のいる方へ歩いてきた。
「やめて!触らないで!」
男は無視し、結名の足元へ移動する。そして結名の足の裏を撫でた。
「ちょ、ちょっとなに・・んふふふ」
靴下の上からだったのでなんとか我慢はできた。
「あんた相当敏感だね。これは楽しみだ」
「やめ、んふふふふふ、やめて、ふふふふふふふふ」
男は結名の足の裏の上から下まで人差し指で撫でている。
「そろそろ本気でいこうかな」
そういうと、男は結名の両足をそれぞれ五本の指をつかいながらくすぐり始めた。
「ちょ、やめあははははははははははははははははははははは」
それはとても耐えられるものではなかった。結名は恥をかなぐり捨てて、口を開けて大声で笑った。
「あはははははははははははは!やめてえええ!あはははははははははははははは」
結名はわずかに腰を上げたり、体を捻ったりするが、全く意味が無かった。
「あははははははははははははは!やめてくださいいいい!あああははははははははは」
結名は体を何度も捻り、くすぐりから逃れようとした。しかしその度に男の指は足の裏についてきて、土踏まずのあたりやその少し下など、くすぐったい箇所を的確に攻めていた。
「ちょっと休憩」
男は結名の足の裏から手をはなし、結名の方を見て言った。
「そろそろ靴下を脱がせますね」
男は結名のハイソックスを脱がせようとする。結名は抵抗したが、両足とも脱がされてしまい、きれいな足があらわになった。
「あんたは可愛い上に足の裏まで綺麗だ」
そういうと男は五本の指で結名の足の裏を下から上に撫でた。
「きゃああ!」
結名は体をビクンと反応した。靴下を履いているときとは比べ物にならないくらいくすぐったかった。
「やめてください!お願いします!」
男は結名の懇願を無視し、土踏まず辺りをかきむしる。
「んきゃああああ!あははははははははははははははははははははは」
結名がくすぐりになれないように、男は土踏まずを下から上にかいたり、足の指の付け根をかいたり、指をくすぐったりした。
「あははははははははは!きゃあああはははははは!もう、はははは!やめてえええあはははははははははは」
結名は体を勢い良くくねらせたり、背中を浮かせてみたりしたが、くすぐったさは変わらなかった。結名の頭の中はただやめてほしいという願いでいっぱいで、他のことは考える余裕がなかった。
「あはははははは!やめてええええ!あはははははははははははははははは!やめてえええええええ!」
男は無言で結名の足の裏をくすぐり続けている。時々少しくすぐりの手を止めて、結名を休ませると同時に、結名を精神的に追い込んでいった。そして、再開すると、結名は地上にあげられた魚のようにのたうち回るが、縛られているので、体をのけ反ることぐらいしかできない。
「あはははははははははは!お、お金!わたすからあああああああ!あははははははははははは!やめてええええああはははははははははは」
「お金はいらない。もう依頼主から貰っているからな。完全前払い制だ」
「そんなあああああああ!あはははははははははははははははははは」
男は一旦手を止めると、ポケットからローションのような液体を取り出し、結名の綺麗な足の裏にたっぷりと塗り始めた。
「んんんんんはははははっはっは!あはははははははははははははははははは」
ローションを塗っている時に、土踏まずや指の間などを爪を立てて塗るので、結名としてはたまらなかった。
「もうやめええええええええ!あはははははははははははははははははは」
「よし。いくぞ」
「あはははははははははははははは!きゃあああははははははははは!やあああははははははははははは」
このことは忘れてもらおう」
「うあああああああ!わかったああああああ!わかったからああはははははははははははははははははははははははははははははは」
「忘れろ」
「あははははははははは!あはははははは!わすれる!わすれえええええははっはははははははは」
「もうだめええええ!あああはははははははははははははははははははははははははは」
そして結名は失神してしまった。
この件以後、結名はバイトには30分かけて安全な道を通っている。