胡錦濤政権の「海軍増強」宣言~防衛白書は見直すべきではないか~ | クルトの葉隠な日々

胡錦濤政権の「海軍増強」宣言~防衛白書は見直すべきではないか~

胡錦濤主席、海軍増強の必要性を強調 (朝鮮日報より引用)

 中国の胡錦濤主席は27日、「中国は海洋大国だ。国家の主権と安全を守り、海洋権益を保護するために強力な海軍を建設しなければならない」と強調した。

 共産党と政府の中央軍事委員会主席を兼任している胡錦濤主席は、郭伯雄軍事委員会副主席や梁光烈、李継耐、廖錫龍ら軍事委員全員が出席した海軍の党代表らを集めた席で「強力な海軍を建設するのは新世紀の新しい任務」と述べた。

 伝統的に海軍が脆弱な中国は最近、大々的な海軍力増強に乗り出している。2015年には空母・戦闘機軍団も構築し、台湾海峡の制海権を確保する野心を持っている。

(引用終わり)


 中共政府の2年ぶりに発表した2006年国防白書は「米軍再編」と「日米軍事同盟の強化」に対する警戒感を露わにした内容となっています。

 しかし、相変わらず『国防費は依然として、複数の大国と比べても低い水準にとどまっている。(そして)中共政府の国防費のうち、人員の生活費、訓練費、装備費が支出の主要部分だ。(人民網日本語版)』と『透明性を求める国際社会の声に応えるものにはなっていない。(産経新聞)』のが現状です。


 中共政府の国防予算の特徴は、科学事業費の名目で兵器・装備の研究開発予算が支出されたり、インフラを中心とした基本建設費の中に兵器生産予算が含まれているという「不透明な側面」が大きいことが特徴です。ただし、周辺各国から軍事費の透明性の低さが批判される中で、開発費などを国防費の枠内に移している可能性もあります。


 しかし、ここ最近の特徴として「軍(装備)の近代化」へ強い意志は引き続き変わっておらず、「余剰人員の削減」と「(人員削減により浮いた費用の)装備費への転化」は引き続き行われています。人民網日本語版によると『中国は1985年に軍隊の定員を100万人削減、1997年には50万人削減、2003年には20万人削減することを宣言している。2005年末、中国の軍隊は20万人削減の任務を終え、軍隊規模は230万人となっている。調整を通じて海・空軍と第二砲兵の全軍に占める割合が3.8%増加し、陸軍部隊の比率が1.5%減少した。』とのことであり、「海空軍の増強」という強い意志が見て取れます。


 それを裏付けるのが上記朝鮮日報の記事にもある「2015年を目途とした空母・戦闘機軍団の構築」です。現在中共政府はウクライナから空母(ワリャーグ)をダミー会社を通じて購入し研究に当たっています。(そのまま改装して就役させるという説も根強くあります。)

 また戦闘機もSu-33というSu-27の空母にも搭載可能に改装したタイプを50機の購入が決まっています。


 中共政府の海洋戦略は、営業所ブログ【中国海軍の意図と能力についての考察で気になったこと 】に書いたように、現状では基本的には台湾海峡の制海権の維持・確保が最優先の目的であると考えられます。しかし、南沙諸島・尖閣諸島を巡る紛争・対立に見られるように海洋資源を巡り、いずれこの目的は拡大していくことでしょう。民族主義というとよくお隣の朝鮮半島を私たちは想像しがちですが、中国国内も最近「千の軍隊も失うも、一の領土を失うなかれ」と言う民族主義の高揚が見られます。(もっぱら江沢民氏の「愛国教育」の影響でしょうが・・・。)


 このように「沿岸海軍から外洋海軍へ」と脱皮を図る中共に対し、日本の対応はどうなのでしょうか?最近の産経iza記事に【仮想「尖閣有事」で日米が初の演習 中国の軍事的台頭を警戒 】と言う記事があります。演習・訓練自体は歓迎すべきものであり、中共政府へのけん制にもなるでしょうが、問題は日本独自の防衛政策がどうするのかです。


 日本の防衛大綱を見ると、北の核兵器・弾道ミサイルへの対処を目的とした装備(イージス艦改修・パトリオットミサイルPAC3の導入)などが中心となり、従来の正面装備が削減されているのが特徴です。代わりに統合運用能力、離島防衛力をそれぞれ強化が謳われています。

 単純に軍事増強を声高に叫ぼうとは思いませんが、上記の強化以外にも効率的な正面装備の増強は現在の東アジアの情勢を見ると必要ではないでしょうか。航空機一つを見ても中共政府が長距離侵攻能力を有したSu-27を300機近く保有し、さらに空母艦載機タイプで50機購入するのに対し、日本は現状ではF-15、F-2全てでやっと300機に届くかどうかと言うことです。もちろん性能差・訓練差もあるので一概に日本が不利だとは思いませんが・・・。また、2015年には空母を保有すると言う中共に対し、日本はゼロです。(その意味では現在建造中の16DDHに大いに期待しています。)


 現在の日本は「北の核兵器・ミサイルの脅威」だけが叫ばれているように思えます。たしかに日本にとっては脅威であり、必要と思われる対処(私自身は巡航ミサイルの装備も必要だと思います。)はすべきでありますが、北の脅威だけでなく東アジア自体の情勢は大綱策定時から大きく変化しています。(むしろ悪いほうに。)

 

 予算の制約もありますが、日本の防衛計画は臨機応変に見直すべきなのではないでしょうか?


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