世界が一望できる、空気すら薄く感じるシティタワー最上階107階。
ガラスで一面が覆われた場所で、玉座に腰かけた男を背に、一人の男が立ち、世界を一望している。
ガラスからは強い日差しが差しこみ、立っている男が何者なのかは伺えない。
玉座に腰掛けている男は、入江マサシ。
肩まである長い白髪、血のように黒い肌、強靭な筋肉と金の刺繍が入った着物との調和が
この男がただ者では、無いことを感じさせる。
入江マサシを背にして、飄々(ひょうひょう)と光景を眺める男もまた、入江マサシのただならぬ信頼があることを伺わせる。
「失礼します。」
聞き覚えのある女性の声が響き、大きく重い扉を開けて、暗い入江マサシの社長室に入ってきたのは
あの笹川ヒカルだった。
「よくきたな…そこに座れ」
入江マサシは8人腰掛けられる丈夫な深い茶色のソファーを指差した。
「お元気そうで何よりですわ。入江社長。」
そう言ってソファーに腰掛ける。
「いいんですか?ヒカルさんにこの私を会わせて?」
外を眺めていた男が始めて振り返る。
「ヒカルには知ってもらっておいたほうが良い。」
振り返った男を見て、笹川ヒカルの表情が一変する。
「あなた…ダイスケ!?」
振り返った男は、あの笹川ダイスケだった。
ダイスケはニヤリと表情を変える。
「なぜ、あなたがここに!?」
「残念ながら私は笹川ダイスケじゃない。」
「!?」
「ヒカル、この男はお前も以前から知っている男だ、極秘でこの男をオゾンに潜入させていた。
今後は、お前の味方でもある、この男の能力を良く見ておけ。」
笹川ダイスケの顔は、少しずつ、変化し、みるみるうちに顔が別人に変わっていった。
そして、その顔はある男の顔になる。
「あなたは、品質管理、只十(ただじゅう)スケサブロウ!」
「お久しぶりですね、ヒカルさん。あなたとお会いしたのはたしか一次面接の時以来、でしたか?」
物静かにヒカルに話しかけるそのゆったりとした口調はスケサブロウの温和な性格を現していた。
「し、しかしなぜあなたがここに...」
状況を飲み込めないヒカルが続ける。
「彼(只十)は普段は目立たない男だが、人には無い、恐ろしい能力を持っている。」
「只十さんは、顔を変えられるのね。それで入江社長のスパイとして活動されているの?」
「ヒカルさん、いい感をしてますね。でも、残念ですが、そうじゃ無いんです。
私は姿形を、変えることはできませんが、”一人の相手に対して、幻を見せる”ことができる。
例えば、今あなたが、私をダイスケさんと見間違えたようにね。」
玉座からやや身を乗り出しながらマサシは得意げに口を挟んだ。
「蜃気楼って知っているかね? 只十が身につけているミラージュスーツは周囲の大気密度を上げることで光の屈折をコントロールするんだ。つまりは正面に立つ人間に幻を見させることが出来るわけ。」
「き、気圧のコントロールなんて現代の技術じゃ...」
ヒカルは驚きを隠せず声が詰まった。
「さっきも言ったが、幻覚を見せるのは、彼の能力だ。ミラージュスーツは、その能力の補助的なものでしかないがね。」
「ははっ社長、私のこのスーツはまだ実験段階ですよ。ヒカルさんには、また今度、機会があればお話しましょう。それより、社長、私とヒカルさんを会わせたのには、何か意味があったのではないんですか?」
暫くの沈黙の後、入江は恐ろしい計画を語りはじめた。
「オゾンへTOB(株式公開買い付け)を仕掛ける。」
ヒカルの表情が凍り付いた。
「まさか、あのオゾンを事実上、”買収”されるということですわね」
「これは、敵対的TOBになる…。」
そう言って、只十はうつむいて、暫く考え込んだ。
「あとは仕掛けるタイミングだな。」
入江がデスクのPCを覗き込みながらパチン!と指を鳴らす。
ガシャンッ
入江の合図で、何かが動き出した。
只十の背後に見える景色を巨大なシャッターがゆっくりと覆い尽くしていく。
部屋は暗闇となりながら、3人の前に巨大なモニターがゆっくりと映し出された。
「これはセントレア証取の株価ボードっ...!」
部屋を覆うかの様なサイズのモニタに張り巡らされているチャートや株価に対し、ヒカルはしばらく目を泳がせていた。
「この株価ボード、現在の状況ではないな。
これは、未来の状況を示したシミュレーションボード。
まさか、この計画がここまで綿密に計算されていたとは…さすが入江社長。」
ガラスで一面が覆われた場所で、玉座に腰かけた男を背に、一人の男が立ち、世界を一望している。
ガラスからは強い日差しが差しこみ、立っている男が何者なのかは伺えない。
玉座に腰掛けている男は、入江マサシ。
肩まである長い白髪、血のように黒い肌、強靭な筋肉と金の刺繍が入った着物との調和が
この男がただ者では、無いことを感じさせる。
入江マサシを背にして、飄々(ひょうひょう)と光景を眺める男もまた、入江マサシのただならぬ信頼があることを伺わせる。
「失礼します。」
聞き覚えのある女性の声が響き、大きく重い扉を開けて、暗い入江マサシの社長室に入ってきたのは
あの笹川ヒカルだった。
「よくきたな…そこに座れ」
入江マサシは8人腰掛けられる丈夫な深い茶色のソファーを指差した。
「お元気そうで何よりですわ。入江社長。」
そう言ってソファーに腰掛ける。
「いいんですか?ヒカルさんにこの私を会わせて?」
外を眺めていた男が始めて振り返る。
「ヒカルには知ってもらっておいたほうが良い。」
振り返った男を見て、笹川ヒカルの表情が一変する。
「あなた…ダイスケ!?」
振り返った男は、あの笹川ダイスケだった。
ダイスケはニヤリと表情を変える。
「なぜ、あなたがここに!?」
「残念ながら私は笹川ダイスケじゃない。」
「!?」
「ヒカル、この男はお前も以前から知っている男だ、極秘でこの男をオゾンに潜入させていた。
今後は、お前の味方でもある、この男の能力を良く見ておけ。」
笹川ダイスケの顔は、少しずつ、変化し、みるみるうちに顔が別人に変わっていった。
そして、その顔はある男の顔になる。
「あなたは、品質管理、只十(ただじゅう)スケサブロウ!」
「お久しぶりですね、ヒカルさん。あなたとお会いしたのはたしか一次面接の時以来、でしたか?」
物静かにヒカルに話しかけるそのゆったりとした口調はスケサブロウの温和な性格を現していた。
「し、しかしなぜあなたがここに...」
状況を飲み込めないヒカルが続ける。
「彼(只十)は普段は目立たない男だが、人には無い、恐ろしい能力を持っている。」
「只十さんは、顔を変えられるのね。それで入江社長のスパイとして活動されているの?」
「ヒカルさん、いい感をしてますね。でも、残念ですが、そうじゃ無いんです。
私は姿形を、変えることはできませんが、”一人の相手に対して、幻を見せる”ことができる。
例えば、今あなたが、私をダイスケさんと見間違えたようにね。」
玉座からやや身を乗り出しながらマサシは得意げに口を挟んだ。
「蜃気楼って知っているかね? 只十が身につけているミラージュスーツは周囲の大気密度を上げることで光の屈折をコントロールするんだ。つまりは正面に立つ人間に幻を見させることが出来るわけ。」
「き、気圧のコントロールなんて現代の技術じゃ...」
ヒカルは驚きを隠せず声が詰まった。
「さっきも言ったが、幻覚を見せるのは、彼の能力だ。ミラージュスーツは、その能力の補助的なものでしかないがね。」
「ははっ社長、私のこのスーツはまだ実験段階ですよ。ヒカルさんには、また今度、機会があればお話しましょう。それより、社長、私とヒカルさんを会わせたのには、何か意味があったのではないんですか?」
暫くの沈黙の後、入江は恐ろしい計画を語りはじめた。
「オゾンへTOB(株式公開買い付け)を仕掛ける。」
ヒカルの表情が凍り付いた。
「まさか、あのオゾンを事実上、”買収”されるということですわね」
「これは、敵対的TOBになる…。」
そう言って、只十はうつむいて、暫く考え込んだ。
「あとは仕掛けるタイミングだな。」
入江がデスクのPCを覗き込みながらパチン!と指を鳴らす。
ガシャンッ
入江の合図で、何かが動き出した。
只十の背後に見える景色を巨大なシャッターがゆっくりと覆い尽くしていく。
部屋は暗闇となりながら、3人の前に巨大なモニターがゆっくりと映し出された。
「これはセントレア証取の株価ボードっ...!」
部屋を覆うかの様なサイズのモニタに張り巡らされているチャートや株価に対し、ヒカルはしばらく目を泳がせていた。
「この株価ボード、現在の状況ではないな。
これは、未来の状況を示したシミュレーションボード。
まさか、この計画がここまで綿密に計算されていたとは…さすが入江社長。」