テレビあれこれ(7)階段落ち問題 | くるみうりの『趣味の文芸』

くるみうりの『趣味の文芸』

2匹のお猫、
うり(保護猫 茶白 6歳 ♀)とくるみ(スコティッシュフォールド 三毛 5歳 ♀)との毎日、好きな音楽の事、日々感じた事、好きな本の事などなどを書いてます。タイトルを「くるみうりのブログ」から「くるみうりの『趣味の文芸』」に変更しました。

 若手イクメンイケメン俳優さんの異性問題がワイドショーを賑わしている。ちょうど今放映中の連続サスペンスドラマに主演の1人としてお出になっているとの事なので、野次馬的に観始めた冒頭、私が長年考え続けている案件、捨てておけない問題シーンがいきなり流れて衝撃を受けた。「階段落ち」である。

 

 実は年末このテーマで書こうと思っていた。昨年秋久しぶりに観た、本当に久しぶりの「科捜研の女」で残念な事に「階段落ち」が繰り出されてしまい、日本サスペンス界に危機感を覚え、これは書かねばと意気込んだのであったのだが、今思い返すと12月は大知君の出演番組が目白押しでそっちが忙しく機会を逃してしまった。だいたい私は現在海外のサスペンスドラマを中心に観ているので、日本のドラマは「相棒」プラスアルファという容量に設定している。「メンタリスト」と「クリミナルマインド」と「NCISネイビー」と「マクガイバー」と「時効警察」を順番に観ているのでなかなか1シーズン終わらないのだがそんな事はどうでもよい。このような状況なので日本のサスペンスドラマはそれほどの本数観ているわけではないのに、この当たり様、やはりこの問題は見過ごせない。

 

 皆さんも何度となく観たであろう「階段落ち」という被害者を作る設定は、主に犯人に殺意が無いのに傷害・殺人が発生するために使われる。問題はその頻度がやたら高い事なのだ。理由は色々考えられる。

 

① まず予算がかからない。急な階段と必要ならスタントの俳優をそろえればすぐ撮影できる。私ほどのウオッチャーになると「またこの神社か」「またこの階段か」みたいにそこがホットスポットかどうかも判ったりする。せめて意表をついた階段を探すくらいしてほしいものである。

 

②     日本のサスペンスでは犯人役が有名俳優であることが多く、そのような場合おそらく制作側が凶悪犯罪者にしないケースが多い。いわゆる「忖度」である。エグイ事はさせられない、やむを得ず悪いことをしてしまういい人という設定が日本人社会的に落ち着くのであろうか?病的にこの設定が多い。

 

③    日本のサスペンスドラマはリアルな死体描写ができないという事になっているので、死因についてはそれほど多種多様でなくても通用するという風土みたいなものがあるので、同じような「階段落ち」量産に抵抗がない。

 

日本の2時間サスペンス枠が一時に比べ著しく縮小されたが、「階段落ち」に代表されるストーリーの硬直化がその原因の一つであると思わざるを得ない。海外ドラマを観始めて3年ほどだが、思い出しても「階段落ち」の事件はほぼ記憶にない。日本のこの状況は日本ならではで、ガラパゴス的で特異すぎるように思われる。

 

 3年前アメリカの「CSI科学捜査班」を観始めた頃は毎回毎回驚きの連続だった。とにかくこれでもかというくらい奇想天外バラエティー豊富な死因死体が登場する。冒頭からタイトルが流れるまでの死体発見シーンがとにかく面白い。これは多分「どういう死体があったら面白いか」が徹底的に練られていて、その死因死体からストーリーを作っているからで、これはミステリーの基本ではないだろうか? ちなみにHSP(神経質)である私は当初リアルな「焼死体」とか「水死体」をみて驚愕した。驚愕したが人間慣れるものである。今では超怖い殺害シーン以外は基本大丈夫で、サスペンスドラマの持つ教育的側面の恩恵も受けたのであった。 

 

 日本は死因死体よりも、どうしていい人である犯人がやむを得ず犯罪を犯してしまったか、という理由付けがメインになってしまっている話が多い。「人情もの」要素も大事だと思うのだが、だからと言って安易な「階段落ち」は思考停止という非常にまずいレベルではないだろうか?日本のサスペンスドラマ全てを観ているわけではないが、私の知る範囲では意識的に「普通じゃない死体」からストーリーが作られていると感じるのは、内藤剛さん主演の「警視庁・捜査一課長」くらいではないかと思う。

 

 また、犯人役の俳優さんも別に「忖度」してもらわなくてもいいのに、と内心思っているのではないだろうか?有名になった後でもキレキレで超ヤバイ演技できるのにと、思っている俳優さんはぜひとも出演の際には製作者サイドに提案していただきたい。重ねて言うがサスペンスドラマの品質向上を願ってやまないのである。

 

 最後にサスペンスドラマで「忖度」が許されると私が唯一認定しているのが、「相棒」でシーズンに1回くらいのペースで作られる「往年の大女優・大物俳優」シリーズである。パッと思い出せるのが岸恵子さん、草笛光子さん、岩下志麻さんなどで豪華なロケ地とロマンチックなストーリー等で完全にそのゲスト仕立ての回になっている。この手法は1つの様式美として確立していて、トータル作品の質の高さはさすが「相棒」である。今シーズン初回の船越英一郎さんもこのグループになるかもしれない。今までとは違った船越さんで演技は見応えがあった。この忖度シリーズは最終的に「吉永小百合」さんをゲストに迎えコンプリートすると私はにらんでいる。