くるみの本棚から

くるみの本棚から

本を読んで感じたことを綴ります。あらすじなし、感想のみですが、本の雰囲気が伝わったり、読むだけで何か感じてもらえる記事を目指して。

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紙の月/角田 光代

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紙一重で横領事件は起きるか

★★★★☆

人生にはたくさんの「もし」がある。

もし、あの時~していれば…
もし、あの時~していなければ…

誰しもが過去を憂い、悔い、もしくは安堵と共に
「もし」を思い浮かべたことがあるのではないか。

たくさんの「もし」が重なったとき、
私は梨花のように横領を起こさないと言えるのか?

途中からはかなり暴走しているが、
初めの5万円のエピソードはリアルすぎて少しゾッとする。
誰にでも起こりうる気がしてくる。

子供ができずに焦っていたら?
夫との関係がうまくいっていなかったら?
その時に他の男性に好意を抱かれたら?
少しの工夫で何百万のお金が自由になったなら?

横領とまでいかないまでも不倫くらいなら可能性はあるのではないか?

私と梨花を隔てるものは大きいのか、紙一重か。

梨花は今の自分を自分の一部分でしかないと思って生きている。
おそらく、「もし」の先にある自分も自分だと思っている。
選ばなかったけれど、選ぶこともできた「もし」の先の自分も。

そのせいか、今の自分をどこか達観して、
感じる違和感は見ないふりをし、修復を試みず、
ふわふわとした感覚のまま暴走していく。

自分の選ばなかった「もし」の先は、果たして紙一重の場所なのか。

私達は日々たくさんの選択をする。
着る服、食べるもの、通る道、何でもない一言。
そのひとつひとつで自分を作り上げていく。

選びさえしなければ「もし」の先には永遠にいくことはない。
すべては自分の姿勢次第。

今の自分を受け入れることから逃げずに、
常により良くしようと努力しながら生きていくという姿勢が
紙一重の紙を厚くする唯一の手段だとしたら、
果たして私は梨花のようにならないと自信を持って言えるだろうか…


『善も悪も矛盾も理不尽もすべてひっくるめて私という全体なのだ』

うつくしい人 (幻冬舎文庫)/幻冬舎

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旅の恥はかき捨て。そして、人生とは長い旅。

★★★★☆

あなたは人の目を気にしますか?

私はすごく気にしてしまう。

センス良く思われたい。
優しい人と思われたい。
気のきく人と思われたい。
卑怯だと思われたくない。
ケチだと思われたくない。
空気が読めないと思われたくない。
などなど・・・・・・

この歳になって思うのは、
この気持ちと共に日々生きていくのはなかなかしんどい、
ということ。

そもそもこの気持ちはどこからくるのかと考えてみれば、
カッコ悪い自分になりたくない、
少しでも素敵な自分を周りに見せたい、
という自己顕示欲からだ。

要は人の前でカッコつけたい自分、
惨めな姿を極端に嫌う自分がいる、ということ。

人の目を気にするというのは、
人を思いやるということと勘違いしやすい。

だから、のうのうと容易く心を支配してしまうのかもしれない。

優しい人になりたいだけなら、
ただただ人を思いやるだけでいい。
そうすれば自然と何か言動に移せる。
そしてそれだけで満足できるはずなのだ。

優しく見られたいから、目立つように優しくしたかったり、
感謝されたかったりする。

優しく見られる、というのが目的だから
レスポンスがないと苛立ったり落ち込んだりするのだ。

人の目というのは自分の目でもない。
自分が思うほど見てはいないし、
見方やポイントだって違う。

そもそも、目指しているものがとても曖昧なわけで、
自分が思うところの、自分の周囲の一般的、平均的な傾向の話、
という曖昧さ。

だから、それを逸脱した環境で、
例えば、初めての旅先で変人(この本でのマティアスと坂崎のような)と接することによって、
人の目を気にする、ということの無意味さを知る。

そして、人の目を通した自分という呪縛から解放され、
純粋に理想の自分を目指せるようになる。

そう、みんなそれぞれ違う。
自分のしたいようにすればいい。

それは決して人を思いやらないと同義ではないのだ。


『日常は動く。カートも動くし、私たちも、動くのだ。』
私にもアドバイスしてよ、シャスティン。

★★★★☆

なんとなく頭悪そな高校生風なのに、たまに、よくぞ言ってくれた、とか思っちゃうことをピンポイントで突いてくれて、宗教についてとかなるほどって妙に納得しちゃったし、ただのバカじゃないなって思ったりして、まあでも誰しもたまには深く考えることもあるか。

人の頭の中を全部言葉にするとこんな感じかもしれない。

エッチなことも過激なこともバカなことも
偽善っぽいことも真面目なことも定説的なことも、
全部がごちゃ混ぜで溢れ返っている頭の中。

自分の頭の中は自分だけのものか?

実体験と想像とで作り上げられるイメージは、
洗脳や感化されたりして、少なからず他から影響を受けている。

腕をつねってみる。
今この瞬間に感じてる痛みは自分だけのものだけれど、
つねった痛み自体は誰しも感じたことのある
みんなのものとも言える。

誰しも持っている心の闇。
それは実はどこかで実在する闇か、
人と共有している闇か、
自分だけの闇か。

どうであれ、今目の前にある、もしくはあると思っているだけの道でも、
そこを生きていくしかできないし、生きていくものなのだ。


『人間、楽しむということが最優先だし、そう心がけなくても、最優先してる。苦しんでる人は、その苦しみを楽しんでるんだし、頑張ってる人は、その頑張りを楽しんでる。』
笑うだけでいいんだ

★★★☆☆

大切な人。
憧れの人。
たまたま隣り合っただけの人。
謝りたい人。
憎んでいる人。
血の繋がった人。
自分と似ている人。
人、人、人。

自分の人生はいったいどれだけの
人との関わりで成り立っているのだろう。

星の数ほどの人の中で、いつも誰かを待っている感覚。
誰かが足りない。

待っているのは、
自分に何か劇的な変化をもたらしてくれる人?
もう一度会いたい人?
もう二度と会えない人?
もしくは自分自身?

人生のベースには喪失感がある。

人は生まれた瞬間から死に向かっている。
形あるものは壊れる。

さみしさは常にある。

そのさみしさにうまく折り合いを付けて、
人生に彩りを与えるもの。
それは、例えば美味しいご飯だったり、
誰かとの約束だったり、
ただ笑うことだったりする。

難しいことはない。
人生を楽しく豊かにするにはただ笑ってみればいいんだ。


『いつか共にいた人と、いつか共にいるはずの人と、その瞬間を共有している。』
ユリゴコロの魔力

★★★★☆

この物語は「ユリゴコロ」という単語の響きのもつ怪しさ、危うさの魅力に尽きる。

心を揺さぶる狂気、
痙攣を想像させる禁断の趣向、
身体の内側に張り付いて簡単には剥がせないようなもの、
ふるふると頼りなく揺れる心・・・

造語ながら、ぴったりすぎる。
すごい。

前半の手記が生々しく、身の毛がよだつ。
恐いもの見たさで先を読まずにはいられない。

ああ、恐い。

どうかユリゴコロに憑かれた全ての人が解放されますように。



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