「列国戦闘象棋」の遊び方
どうもみなさんこんにちは。
この記事では、明治20年(1887年)の藤井文次郎氏の特許にて解説されている、「列国戦闘象棋」のルールを解説します。
このゲームは私の知る限り、日本初の将棋の特許であるどころか、日本初のボードゲームの特許でもあります。
元ネタがある作品でもあり、その内容は11世紀中国の7人向け将棋とされる「七国将棋」を8人向けに改良し、一部のルールや駒の動きを変えた作品になっております。
ルールが曖昧なところもあるので、独自解釈もありますがその場合は補足分を入れた他、私がルール再構築する際に使った原文を現代仮名遣いにした書き写しも最後に掲載しております。
実際に特許を自分の目で確認したい方は、J-PlatPat等で「特明390」で調べると見つかります。
ちなみに、元の特許の期限は1897年に切れているので、誰でも自由にこのゲームを作る事ができます。
基本的なルール
「列国戦闘象棋」は2人〜8人で遊べる将棋で、ゲームの目標は自分以外の7国が滅ぶまで生き残るというバトルロワイヤル系ゲームです。
8人それぞれが1国を代表し、国の色はそれぞれ赤、黄、青、緑、紫、黒、白、桃です。
*特許内にて赤、青、黄、白しか記載されていないので、他四色は七国将棋を元に推測したものです。
1国にはそれぞれ9種類の合計17枚の駒があり、従来の将棋の様に駒の種類によって動きも変わります。
盤は19x19マスの361マスの巨大なもので、囲碁盤のマスの中ではなく交点の上に駒を置けば列国戦闘象棋盤を簡単に用意できます。なので、厳密にいうとマスではなく、「路」と表現する方が適切ですが、便宜上ここではマスと表現します。
図1:8人用の図
盤の中央には「局外中立」というマスがあり、このマスにはどの駒も入れないので、そこに印をつけるか、無印の駒を置くことが推奨されます。
局外中立は、入る事ができない上に、超える事もできません。尚、下記の図の様に、局外中立にさえ入らなければ周りのマスは自由に行き来できます。
駒の配置は、以下の通りです。8人で遊ぶ際は上記の図1の様に、一辺に2国を1マス隔てて配置します。
5人や7人で遊ぶ際は、図2の様に、国を一つしか置けない辺には場合はその辺の中央に国を配置します。4人で遊ぶ場合は、1辺にそれぞれ1国を配置します。
図2:一辺に1国の図
進行上のルール:
ゲームの進行方向は、反時計回りに各プレイヤーが順番に自分の国の駒を一つ動かす、2人で遊ぶ従来の将棋を8人で遊ぶ様なものです。8人全員が順番に1手を指し終える事を「一周」と呼びます。
つまり、全員がまだ生き残っている状態で1手を指すと、自分の次の1手が回ってくるまで、つまり1周が過ぎるまで次の7人が順番に1手を指すまで待つ必要があります。
尚、場合によっては敵国を占領して、自分の国の分と占領国の分の2手以上を一周で指せる様になります。この場合、2手を連続して指すのではなく、国の順番に沿って指します。
例えば、図1の赤国が反対側の黒国を占領した場合、赤国のプレイヤーは赤国を指した後、黄国、青国、緑国、紫国が1手ずつ指した後にようやく黒国分の1手を指せます。動かせるのは、あくまでも順番が回った国の駒だけです。
他に、ゲーム開始時はそれぞれもう1国と同盟を結ぶ事が推奨されていますが、どのタイミングに同盟を結ぶのも裏切るのも自由です。
上手く立ち回ってライバルを出し抜きましょう。
勝利方法:
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最後の1国になる。
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他7国が滅び、自分の国が最後に生き残れば勝利します。
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生き残った上で、点数で勝つ。
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最後の2国まで残り、それまでの消耗線の末に決着が着きにくい停戦状態になっていたらそこで対局を終了し、取った駒の点数を合算する。より多くの点数がある1国が勝利し、もう1国は第二の勝利となる。滅んだ国で、一番点数が低かったものが敗北者となる。
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駒の点数は駒の動きの説明にて。
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敗北方法(脱落方法):
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大将を取られる。
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「大将」は将棋の「王将」「玉将」に該当する駒で、取られると負けます。
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尚、従来の将棋とは違い、「王手」を宣言する必要がないどころか、完全に詰ませる必要もなく、大将が次の手で取られる位置に置くことは推奨されないものの、理論上は可能です。
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つまり、1つのミスが命取りになる事もあるので、大将は慎重に使って守りましょう。
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尚、大将の動きは作中最強の動きで、上手く使えば理論上無双できるかもしれません。
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どのプレイヤーも、自分以外の駒であればどの大将も取れる。
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大将を取ったプレイヤーは、大将を取られた国の残りの駒をそのまま手に入れて、そこから自分の駒として使える様になります。
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しかも、1周につき、自分の国の駒を使う分の1手と、占領した国の駒を使う分の1手の合計2手以上指せる様になります。
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大将以外の駒を10個取られる。
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大将以外の駒を10個取られて残りの駒が7つになった場合、即座に負けを認め、ゲームから脱落する。
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駒を10個取られて負けた場合、残り7枚の駒は誰のものにもならず、そのまま盤から取り除かれる。
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駒の動きと点数
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駒は1国につき17枚の9種類。
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駒の取り方は日本将棋と同じ様に、敵駒がいるマスに入って取る。自分の駒が置いてあるマスに、別の自分の駒を進ませる事はできない。要するに同族殺しはできません。
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成りはない。
補足:
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同盟のルール
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同盟の解説にて、藤井氏は7人で遊ぶ場合、2人1組を3組、そして残りの熟練者が「独立」して遊ぶ事を推奨しているのですが、「組みて行ふ」事から、2国が同盟を組んだら1つの国として扱うのか2つの国として扱うかは不明です。
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私のルールでは、2つの国として解釈し、裏切りも可としましたが、別の解釈として2国を同じ国として扱う事もできます。
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この場合、大将2枚を両方倒してようやく2国が同時に滅ぶのか、片方の大将を倒すとその大将の指揮下にある国だけが滅ぶのか、片方の大将を倒すだけで両国滅ぶのかと様々な解釈もできるので悩みどころです。
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敵国の大将を取った時のルール
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他の解釈として、大将を討ち取られた国の残党は盤からそのまま取り除き、あくまで大将を討ち取ったプレイヤーの点数になるというのもあります。実際、元ネタの七国将棋もこのルールである可能性が高いのですが(こちらもルール説明が曖昧)、もう1つの負け方では「主将及び残り駒は誰の有にも帰せず只盤面より引去るのみ」とわざわざ引き去る事を指定しているので主将が討ち取られた場合は駒を盤に残すのではないかと思います。尤も、「只盤面より」という書き方的に、主将を討ち取られた国はプレイヤーの獲得した駒として盤面より取り除くという意味だという解釈もできると思いますが、点数になるだけなら「有に帰す」という様な、所有権が手に入る様な表現をしないと思います。 それに、私的には従来の将棋の様に敵を自軍に迎え入れる方法がある方が日本の将棋らしいと思いますし、このルールの方がこの時代特有の帝国主義らしいと思います。それに、ゲームとして見ても、敵の駒を10個取るのは簡単ですが相手の王を討ち取るのは難しいので、王を奪い取る報酬が大きい方がゲームとして面白いと思います。
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「銃隊」「砲隊」「騎兵」駒の動き
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七国将棋を扱う現代の文献では、「銃隊」と「砲隊」の枠に該当する「弓」と「弩」、そして「騎兵」に該当する「騎」は特定のマスまで自由に進めるというルールで紹介されている事が多いですが、これは間違いです。
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これはこれらの駒が原文にて「行◯路」と解説されているのを、ウィキペディア等が「◯マス」まで進むと解釈しているからです。例えば、「弩」の「直斜行五路」という説明を、ウィキペディアは「8方の方向に直線ならば5マスまで自由に進める」と解釈しており、中々に強力な駒になっています。
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しかし、この解釈は間違いで、何故ならば司馬光の七国象棋の解説にて駒の強さの目安が記載されており、飛車の動きを持つ「偏」が5点と評価されている中で、弩は歩兵枠である「剣」と「刀」と同じ1点です。この時点で不可解なのですが、更に解せないのがウィキペディアルールでは5マスの代わりに4マスまでしか進めない弩の完全下位互換である「弓」も同じ1点なのです。
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この事から、「行◯路」系の駒はその距離を自由に動けるのではなく、特定の距離しか移動できない上に、進路に邪魔な駒があったらその方向に動けないという非常に弱い駒である事が分かります。このルールだと動きを簡単に防げられてしまう弱点から歩兵並みに弱く扱われていても不思議ではないですし、距離が縮まった代わりに動きやすい弓が弩と同等の扱いでも矛盾ありません。
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終わりに
以上が、列国戦闘象棋の遊び方です。準備が大変ですが、バトロワゲーに必要な敵を攻めるインセンティブが沢山用意されており、ゲームとしてバランスが取れていると思います。実際、過去にウィキペディアルールで七国将棋を指した事があるのですが、かなり盛り上がったので、そのプレイヤー人数を8人に増やした列国戦闘象棋も面白いと思われます。
私はまだ試せていないので、是非遊ぶ場を用意できそうな人には試して欲しい作品です。特に、(私の知る限り)日本初のボードゲーム特許にて解説されているゲームなので、誰も取り上げたことがないくらいマイナーな作品なのは非常に残念なことだと思います。
このゲームの100年ぶり以上の対局をしてみませんか?
それでは、また。
列国戦闘将棋:原文の書き写し(雑)
誤字がかなりあるので、あくまでも参考程度にしてください。
此発明は宇内各国に軍備を修め、或いは分かれ攻戦防御をなすの状にかたどり、その軍制にならい戦線を設け(従来の碁盤を使用するも妨げなし)、棋馬を以て2人以上8人までは1の盤面にて相互に1軍を領し、その智謀を戦はしめ、遊戯の際知略を発達せしむるの玩具なり依って、左にこれを詳細に明解す。
そもそもこれ玩具は、従来世に行はる囲碁、又は象棋の如く一人に対する思慮を用いるものと異なり、8人までは共に一局に対し、互いにその知略を戦はずを以て主となし、且つ棋馬の使用を解すれば何人でも直にこれを行うことを得るものなれば、常に囲碁、或いは象棋を愛する輩は勿論誰彼にも深き楽しみある有益なる玩具と云うべし。
さて、その使用の大体はたとえば4人にてこれを行わんとする時は、まず赤、青、黄、白の4国の内各1国を領し、その順次を定め、次第に棋馬を操出すべし(その棋馬の動き方等は後段に詳記す)。しかして、攻戦防御の形状を略記すれば赤国に於いては青国に向いてかかるのに青国はこれを防ぎ、傍ら黄国のすきを見て、その王を奪わんとの計画をめぐらずと雖も、赤国の攻撃急なるを以て直にその望みを他に及ばずを得ず。又、白国においては赤国の青国に向いて棋馬を操出すを見てその間に乗じこれを攻めんとしきりに準備をなす。これにおいて赤国は白国のにわかに向いて来る事を覚悟し、これを防ぐの準備をなさるを得ざるより止むを得ず。青国の攻撃を緩め青国防御の用意をなすに至る。しかして、青国はこの有様を見て赤国を救い、恩義を売らんと欲し、たちまち方向を転して白国に攻めかからんとす。又黄国はこれに乗じ同じく棋馬を棋出し白国を奪わんとするの準備をなせり、かくのごとし各発報のすきを窺いその利害を考え、或いは進み或いは退き或いは分かれ攻撃防御の有様を変する。1にして足らず、此時白国においては先に赤国を奪わんと欲し、大棋馬を操出し為に自国の空虚なるより、にわかに青、黄両国の攻撃を受け、今やほとんど敗れ、青、黄いずれかに滅ぼされんとする時赤国の軍艦横合より襲い来る白国首相を砲撃しついにこれを滅亡し、その残棋馬は挙げて赤国の有に帰するに至れり。これにおいて青、黄、両国はその遺憾なりといえども又如何ともするあたはずごとし。この知略の深浅巧拙により興敗地を換え、或いは嘆し、或いは歓び実に肝胆を砕き以て互いにその智謀を振ぶの深き楽しみあるものなり。
またその勝敗を定むるには各国皆亡び、一刻のみ存ずるにいたり、その局を結ぶべしといえども、たとえば4国、或いは5国(即ち四人または5人)にてこれをなすに、2国及至3国は既に滅ぼされ残りの2国となりその勝敗を決せんとする時は棋馬少なくして遂に長きに捗り返って厭倦を生ずるに至るべきをもって二カ国となり足る時は直に戦をやめ互いに得るところの点数を調べ、盤面にあるところの我棋馬の点数を加算し、最高点を第一の勝ちとし、これにつぐ者第二の勝ちとなし、以下順次計算し最も少なきものを敗者となしもって勝敗を決するべし。
又、八カ国、即ち8人にてこれをなすときは2国ずつ、組みて行う事を得る、又七カ国及び五カ国、即ち5人7人の時は一人は尤熟練者をもって独立となし、他は二カ国ずつ、組み手行うは尤も興あるものとす。
又、一カ国棋馬の数は17個にして主将を奪われたる時は国亡び、その残棋馬はこれを滅したる国の有に帰すべし。しかして、王は奪われざるも盤面に存ずる棋馬7個と成りたる時は攻撃防御の作用をなす能はざるを以て負けと心得、直ちに盤面の棋馬を引去るべし。尤も、此場合においては主将及び残り棋馬は誰の有にも帰せずただ盤面より引去るのみ。
又、盤面中央に(局外中立)の一劃あり。これは主将と雖ども飛越する事を許さざるの制にして、もし超えて進まんとせば第一図中(ロ)印点線の如く各その棋馬の動きにしたがって進退すべし。
又、棋馬の名称かつ点数は左のごとし、但し使節は点数の計に参入せず。
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大将:50点
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中将:10点
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少将:9点
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軍艦:7点
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使節:無点
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砲隊:4点
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銃隊:2点
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親兵:1点
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衛生兵:1点
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騎兵:3点
又、棋馬の一並列方は図中(イ)印の如くにして、2人なれば相対し、5人以上8人となる時は一方に二カ国ずつ、並列するものとす。
但し、一方にに各国を並列する時は1劃を隔て左右に並ぶべし。
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大将は八方自由にして例えば象棋の飛車と角の動きを兼ね備えたるものなり。即ち、図中(ホ)印の如く進退とも同じ。されども、敵手または味方の棋馬あれば、それを飛び越えて進退する事は得ざるなり。
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中将は例えば象棋の飛車と同様にして図中(へ)印の如く進退とも同じ。されども、大将と同じく棋馬を飛び越えゆる事を得ず。
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少将は例えば象棋の角と同様にして、図中(ト)印の如く進退とも同じ。されども、棋馬を飛び越える事を得ず。
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軍艦は中将と同様の動きをなすものにして、即ち図中(ヌ之1)印のの如し。されども、敵の棋馬をとらんとするには其敵の棋馬と軍艦との中間に敵手或いは味方の棋馬1個あらざればとる事を得ず。即ち(ヌ之2)印の如く1個を飛び越えて敵をとるの制なり。又敵の進撃を防ぎ又は味方を救うの婆には中小の如く進退自由なれとも棋馬を飛び越える事を得ず。
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施設は大将と同様にして図中(ヲ)印の如し。されども此棋馬は1種特別にして敵手を取るの権なく、又敵も此棋馬をとる事を得ず。ただ敵を防ぎ又味方を救う丈のものなり。
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砲隊は前後左右及び向かう筋違いに2方都合6っぽうへ4つ罫線に飛び動くものにして又進退ともに同じ。即ち図中(チ)印の如くみだりに動く事を得ず。4つ罫々々に飛び、或いは退くものなり。但し、棋馬を飛越ゆる事をえず。
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銃隊は前後左右へ3つ罫毎に飛び、動くものにて進退ともに同じ。即ち図中(ル)印の如し。されども棋馬を飛び越える事を得ず。
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新兵は1罫ずつ、筋違いに動くものにして身体とも図中(二)印のご歳
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騎兵は前後左右へ1罫ずつ、動きそれより筋違いに3つ罫へ飛ぶものにして、進退共図中(リ)印の如し、されでおも他の棋馬を飛び越える事は得ず。但し1罫動きては3罫へ飛び出すを以て1手とす。






