久しぶりに北の大地へ行きたい気分になった管理人は、陸路にて北海道を目指すことにしました

もちろん、ただ北海道を目指すだけでは面白くないので、途中寄り道をしながら向かったのですが、これが原因で後々旅程崩壊を招くことなります

 

前置きですべて書いてしまうと、結末がすべて分かってしまうので、さっそく本題に入りたいと思います

それでは、「北海道新幹線で津軽海峡へ逢いに行く旅」第1話”東北新幹線「やまびこ」号グランクラス乗車記”の始まりです

 

乗車路線:東北新幹線

乗車区間:東京1536発→盛岡1854着

乗車列車:67B「やまびこ」67号

乗車車両:幹セシE5系U42編成E514-42(10号車3番A席)

座席種別:グランクラス

 

 

 

ということで、東京駅の東北新幹線のりばへとやって来ました

まずは東京15時36分発の「やまびこ」67号に揺られて盛岡を目指します

 

東北新幹線の全線開業から遅れること約3ヶ月、2011年3月に320km/h運転(※)が可能な新幹線車両として輝かしいデビューを飾ったE5系

営業運転開始直後に東日本大震災に見舞われましたが、常盤グリーンを纏ったその車両はいまや押しも押されぬ東北新幹線の主力車両になりました

 

※320㎞/h運転は13年春改正から。登場時は300㎞/h運転。

 

それまで東北新幹線の主力車両だったE2系の最高速度は275㎞/hでしたが、E5系ではそれを一気に320㎞/hまで引き上げたことから、ハード面で大きな飛躍を遂げていますが、ソフト面の改善も抜かりはありません

その象徴ともいえるのが、グリーン車の上位グレードとして設定されたこちらのグランクラスです

 

グリーン車利用時に比べて、概ね5,000円ほどの追加料金が必要となりますが、1列車あたり18席しか座席が用意されていないことから、特に「はやぶさ」では盛況になる便も多いですね

私が乗ったのは「やまびこ」のグランクラスなので、軽食サービスが付加されていない分、料金もお値打ちになっています

 

特急料金も「はやぶさ」に比べると、割安な設定になっていることから、盛岡までだと自由席+7,340円を支払うことでゆとりの移動空間を手に入れることができます

 

 

今回、私が乗車したのは2019年に増備されたU42編成でした

 

乗降ドア脇に輝くアルファベットのGを象ったロゴが、特別な車両であることを主張しているかのようですね

ちなみに、このロゴを構成する図形には「車両テクノロジー」「スペース」「シート」「インテリア」「サービス」の5つの快適が1人のお客様を包み込むという意味が込められています

 

東京駅を定刻で発車した「やまびこ」67号は、これから3時間以上かけて盛岡を目指します

時刻表を見てみると、通過駅はわずかに3駅…小山・那須塩原・新白河…のみで、ほぼほぼ各駅停車みたいなものですね

 

東北新幹線のダイヤに疎いので、この列車だけ特別に停車駅が多いのかと思いきや、時刻表を見てみると昼間時に走る「やまびこ」はこの通過駅がデフォルトなんですね

さらに驚かされたことに、「やまびこ」の中には東京~仙台間で各駅に停まる便も設定されており、東海道・山陽新幹線を走る「のぞみ」「ひかり」「こだま」ように理路整然とした区分にはなっていません

 

「やまびこ」が限りなく「こだま」に近いポジションとあっては、道理で「はやぶさ」に利用客が集中するはずですね

 

 

宇都宮に到着する少し前に、定期運用を失って小山車両センターに疎開してきた185系を車窓から確認することができました

 

 

東京を出てから50分ほどで栃木県の県庁所在地である宇都宮に到着しました

ここで5分間の小休止となります

 

ここがもし東海道新幹線ならば、この停車時間の間に「のぞみ」が2本追い抜いて行くような光景が見られるわけですが、東北新幹線はそれほど過密ダイヤではないため、追い抜いて行く列車はありませんでした

 

 

福島に着くと横のホームには、併結作業を行うE2系「やまびこ」が停車しており、まさにE3系「つばさ」との連結作業が始まろうとしていました

停車駅が最小限に絞られれている「はやぶさ」と違い、途中の駅でホームに出て外の空気を吸ったり、こうした連結作業を見たりして気分転換できるのがいいですね

 

 

福島駅のホームに描かれている編成表には、まだE3系R編成の表記が残っていました

コロナ禍による利用客減少を受けて運用から離脱していますが、果たして復活することはあるのでしょうか?

 

 

東京から約2時間で杜の都・仙台に到着しました

「はやぶさ」と比べると速達性では劣るものの、混雑を嫌ってか仙台までの利用客もそれなりに多いようです

 

東京で私を含めて4人の乗客を乗せたグランクラスは、途中の駅で乗降がなかったものの、ここ仙台で私1人を残して降りてしまい、図らずもこの空間が貸切になりました

 

 

ところで、グランクラスの客室ドア鴨井部は鏡面仕上げになっていて、そこにフルカラーLED表示板が仕込まれています

まるでガラスに文字が浮かび上がるような動きが美しい反面、天井の照明が反射してやや見づらいのが難点ですね

 

さて、グランクラスが貸切になったところで、恒例の座席チェックに移りたいと思います

まずは逸る気持ちを抑えて、デッキ付近からご紹介します

 

 

まずこちらは運転席側のデッキです

乗降ドアの内側が赤く塗装されているのが目を惹くほか、左側に写っている手すりも金属が露出しているようなありがちな部品ではなく、きちんと本革が使われており、デッキに一歩足を踏み入れた時点で非日常的な雰囲気が感じられます

 

 

 

客室ドア部分は左右にLED灯が仕込まれており、両側から仄かに照らされた光がグランクラスのロゴを幻想的に照らし出します

また、普通車とは違って客室ドアにガラスは設置されておらず、この先に上位クラスの客室があることを暗に示しています

 

 

 

 

E5系の場合、320㎞/h運転を行うことを考慮して、およそ15mにも及ぶロングノーズを備えていることから、先頭車両の客室はどうしてもミニマムな空間になってしまいます

グランクラスでは、その客室の狭さを逆手にとって、上位クラスらしいプライベート感のある空間に仕上げています

 

私の下手な写真では分かりにくいですが、床には深紅のウールの絨毯が敷かれ、ライトワークも相まって高級感溢れる客室になっています

新幹線のグリーン車では、国鉄時代より横4列配置でシートピッチ1,160㎜が標準となっていましたが、E5系ではその殻を打ち破り、横3列配置が実現しました

 

シートピッチは251系のグリーン車と同等の1,300㎜が確保されており、本革の座席がずらりと並んだ姿は圧巻です

さすがJR東日本が自ら”ファーストクラス”と謳うだけのことはありますね

 

 

 

 

座席周りの付帯設備としては、ヘッドレストピロー,レッグレスト,読書灯,テーブル(2種類)が備わっています

アームレストに設置されているコントロールパネルで、リクライニングやレッグレスト、座面の高さを電動で調整できるので、この座席に座ると気分だけはまさに“エグゼクティブ“です
 

実際に座ってみると、グリーン車よりも明らかに恵まれた余裕のある座席が体全体を包み込んでくれるかのようです

ただし、ピローはどちらかというとネックピローのような使い方を想定しているのか、どう頑張っても私の体には馴染まず、盛岡に着く頃にはずいぶんと首が疲れてしまいました

 

この首回りの落ち着きのなさを考えると、E5系で長距離を移動する場合はグリーン車も有力な選択肢になり得ると思います

 

 

レッグレストの先端には、さらにプラスチックの部品が伸びる構造になっており、これもコントロールパネルで操作することができます

わざわざレッグレストの先端部分にこうしたギミックが仕込まれているのは、人それぞれ異なる体型…足が長かったり短かったりする…にも対応できるよう配慮されているためです

 

こうした利用客に対する細かい配慮がなされているあたりに、グランクラスのグランクラスたる所以を見出すことができます

 

 

 

各席に設けられている読書灯は、フレキシブルアーム式を採用しており、利用客が任意の向きで使えるよう配慮がなされています

ちょいと読書灯には、ちょっとしたクセがありまして、スイッチがコントロールパネルにあるのかと思いきや見当たりません

 

アーム周りをごそごそと探っていると、読書灯の先端部分をグルっと回すことで点灯/消灯ができるようになっています

機能が豊富過ぎて説明書を読まないでいると、初見では使いこなすことさえできないですね

 

また、2人がけ席の方には、座席の間にシートディバイダーが設けられており、たとえ見知らぬ人同士がここで相席になったとしても、プライバシーが保たれるようになっています

 

 

アームレストの上部にはカクテルテーブルが設けられているほか、アームレストの内側には引き出し式のテーブルもあります

 

グランクラスでは、リクライニング時に後席への圧迫感を低減させるために、座席がバックシェルに覆われています

シートバックテーブルは、座席の構造上設置することが不可能なため、テーブルはアームレスト周辺に集中的に配置されています

 

 

窓の周囲はパネルが付いていて、その裏側に白熱色のLEDが仕込まれています

トンネルに入ると、ぼんやりと窓枠が幻想的に浮かび上がります

 

なお、外から見ても分かるようにE5系はかなり窓が小さいので、グランクラスならば車窓を眺めるというよりも空間を楽しんだ方がいいかもしれません

 

 

窓周りに加えて、網棚の上からも白熱色の間接照明が客室を暖かく照らし出し、思わず息を呑むような美しさと高級感を演出しています

天井には枕木方向に直接照明が設置されていますが、レール方向に照明のある鉄道車両がほとんどを占めるなか、こうした形状の照明はかなり珍しいと思います

 

 

グランクラスの座席とバックシェルの間を覗き込むと、開発・製造に携わったメーカーが刻印されたプレート(シール?)を発見しました

世界的な座席メーカーとして知られるドイツのレカロが参画しているあたり、世界に通用する座席を作ろうというJR東日本の本気度がうかがえますね

 

 

 

東京を発車してから3時間18分で岩手県の県庁所在地である盛岡に到着しました

東京~盛岡間の実キロは496.5㎞なので、表定速度は150.5㎞/hと新幹線としてはかなり寂しい数字です

 

 

 

改札を出ると、今年の4月から実施されている東北DCをPRするため、各県のゆるキャラパネルがお出迎えです

 

 

なんと駅構内には、冷麺・キムチの自販機が設置されていました

1袋1人前スープ付きで、お値段はどれも250円となっており、細麺と太麺が選べるようになっています

 

しかし、要冷蔵で調理も必要なため、観光客がおいそれと買える代物でもありません

駅に設置されているということは、地元民が通勤・通学のついでに買っていくのでしょうか?

 

 

晩ごはんを食べた後に、ちょっぴり夜の盛岡を散策しました

盛岡駅にほど近い場所に、北上川に架けられた歴史の重みを感じる重厚なトラス橋があります

 

橋の名は”開運橋”で盛岡のシンボルとなっており、天気が良ければここから岩手山を望むこともできます

現在の橋は1953年に竣工しており、盛岡駅と市街地をつなぐ重責を担っています

 

 

今日は盛岡駅前にあるビジネスホテルに泊まりました

部屋からは駅が一望でき、鉄ちゃんにとってはいい眺めです

 

~E5系「はやぶさ」号普通車乗車記につづく~