~近鉄23000系「伊勢志摩ライナー」デラックスシート乗車記(前編)のつづき~
どうしても「伊勢志摩ライナー」に乗りたくなって、居ても立っても居られなくなったうp主は、同車が充当される名伊特急に揺られ、名古屋~賢島を往復することにしました
この記事では、賢島から名古屋へ向かう復路の様子と、「伊勢志摩ライナー」のデラックスシートの詳細な乗車レポートをお届けします
散策を終えて、賢島駅へ戻ってくると、先ほどと同様に行楽輸送を担う近鉄の千両役者たちがホームという名の舞台を彩っていました
しかも、この日は5番のりばに団体用の「あおぞらⅡ」も停車しており、5線ある賢島駅のホームが満線状態となっていました
賢島駅のホームにずらりと5列車が並ぶ様子を拝めただけでもこの日に出かけた甲斐がありました
それでは、再び「伊勢志摩ライナー」に揺られて近鉄名古屋駅へ戻ることにします
もちろんというか当たり前というか、往路に乗ったのとまったく同じ編成のまったく同じ車両に乗り込みます
この写真は賢島駅を発車した直後に撮影したのですが、まだ日差しの強い9月半ばとあって、きちんと全車両のカーテンが閉じられた状態で始発駅である賢島を発車しました
日差しが車内へ入らないようにするために近鉄特急ではよく行われているサービスの一環らしいのですが、私は初めて遭遇しました
近鉄のホスピタリティには感服ばかりですし、またちょっぴり近鉄特急が好きになった瞬間でした
ということで、車内も貸切状態なことですし、ここでお待ちかね恒例の座席チェックにいきたいと思います
賢島駅を発車した直後は貸切だったので思う存分車内を撮影することができました
天井の間接照明に加えて、関西の私鉄優等列車ではお馴染みとなっている補助照明が設置されています
当系列における、この天井の間接照明+網棚の補助照明という組み合わせは、デラックスシート,レギュラーシートで共通の構造となっており、特に両者の間に差異はありません
23000系「伊勢志摩ライナー」のデラックスシートは、横3列シートがシートピッチ1050㎜で配置されています
この1050mmというシートピッチは、レギュラーシートとまったく同じ数字なので、上述したように実際に着座してみると横方向にはアッパークラスらしいゆとりを感じるのですが、足元は少々窮屈です
しかし、近鉄特急の特別車両料金は181㎞以上乗車する最大の場合でも520円(※3)に抑えられており、JRのグリーン料金と比べてかなり割安な追加料金で
しかも、同じく近鉄の「アーバンライナー」や「さくらライナー」のデラックスシートは、横3列とはいえ1列ずつが独立している関係で、シートピッチに加えて座席の横幅までもがレギュラーシートとほとんど変わりません
それに比べると、「伊勢志摩ライナー」のデラックスシートはごくごく一般的な3アブレスト配置で、レギュラーシートと比べて明らかに横幅に恵まれているので、アッパークラスらしい落ち着いた空間を買うという意味でもこの列車のデラックスシートは乗って損はありません
おそらく近鉄は、各列・各座席が独立したタイプのデラックスシートでプライベート感の確保を演出することを狙っている…公式HPにもその旨が記載されている…ようですが、それなら素直に座席の横幅に還元して欲しいものです
実際に、以前「さくらライナー」のデラックスシートに乗った時は、さほど横幅が広いように感じなかったので、今日この列車の、この座席に座ってみて、ゆとりのある大きさの座面に感動した次第
座席本体を詳しく見ていきましょう
どことなくバックレストからヘッドレストにかけてのフォルムがJR西日本の681系のグリーン車と似ているような気がしますが、座り心地はまったくの別物です
座席は確かに大型ですが、座り心地はそこまで重厚なものではありません
レギュラーシートと比べて、ヘッドレストにきちんとクッション材が奢られており、少々の軽薄さは感じるものの、ほどよく座面も柔らかいことから、座り心地に関して特段の不満点はありません
「伊勢志摩ライナー」のレギュラーシートは、ヘッドレストが無駄に硬いことで悪評が立っていますが、少なくともデラックスシートの方は、そこまで破綻した構造にはなっていません
それでも、ヘッドレスト周りが硬いことは事実ですが、不快というほどでもありません
ただし、バックレストの形状がかなり素直なので、デフォルト時からリクライニング時まで体を優しく支えてくれるので、かなり楽な姿勢で寛ぐことができます
写真で見ると、リクライニング角度は控えめに見えますが、2時間少々の乗車であれば必要十分といったところでしょう
エグゼクティブな空間を演出するのに一役買っているベージュ系のシートモケットですが、まだリニューアルからそれほど年数が経っていないにもかかわらず、ヘッドレスト周りが黒くくすんでいます
おそらく、通路を歩く人がヘッドレスト部分を取っ手の代わりに掴んでいることが原因かと思われますが、デラックスシートにして汚れが目立っているのは残念ですね
▲「伊勢志摩ライナー」のデラックスシート(リニューアル前)
ところで、かつて「伊勢志摩ライナー」のデラックスシートといえば、いくら志摩スペイン村へのアクセスを念頭に置いた車両とはいえ、リニューアル前は水戸岡デザインもびっくりな原色バリバリのド派手な空間が特徴でした
志摩スペインへのアクセス輸送を念頭に、情熱の国・スペインをイメージしてデザインされた空間だと思うのですが、実際にスペイン人が見たらどんな反応をしたのでしょうか?
「伊勢志摩ライナー」の全編成がリニューアルされたいまとなっては、調べる由もありません
話をいま乗車しているリニューアル車に戻すと、この工事によって雰囲気はがらりと変わり、床には深緑のカーペットが敷かれ、ベージュ系の座席に木目調の化粧板が気品漂う雰囲気を演出しており、心の底からリラックスして寛ぐことができます
座席そのものもさることながら、空間そのものにアッパークラスらしい格調の高さが演出されていると表現した方が言い得て妙かもしれません
また、リニューアルに際して、オーディオセレクターが撤去され、各席のソデ体にコンセントが設置されました
レギュラーシートは2席につき1つ(※2)なので、確実に電源を確保できるのはデラックスシートの大きなアドバンテージといえます
テーブルは、小型のインアーム式のみで背面テーブルは設置されていません
このサイズですと、ノートPCを広げるのは少し厳しいかもしれませんが、リゾート特急ということもあってそうした利用は想定されていないのかもしれません
フットレストは両面式で、デフォルト状態ではビニールの張られた土足用で、反転させるとカーペットの張られた素足面になります
どうしても、登場年次が古いせいか、フットレストの面積が22600系や26000系「さくらライナー」の普通車よりも小さいのが気になりますね
また、角度調整もできない仕様となっていますが、概ね成人の体型を考慮して設置されているため、これが原因で快適性が著しく損なわれることは無さそうです
座席と同じくフットレストもリニューアルに際して交換はされておらず、改善して欲しい点ではあります
しかし、上記の2車種と比べると、素足面を展開した状態で固定できるのは、足に余計に力を入れずに済む点は高評価です
例えば、N700系のように足で押さえておかないと、勝手にバネの力で土足面に戻ってしまうような仕様だと、意外に足が疲れるんですよね
床に敷かれた深緑のカーペットは、この列車と共に伊勢志摩方面への行楽輸送を担う「しまかぜ」のプレミアムシートに通じるものがありますね
伊勢志摩方面へ向かうフラッグシップとしての役割を「しまかぜ」に譲ったものの、近鉄としては行楽輸送の一躍を引き続き担う車両として、「伊勢志摩ライナー」のブラッシュアップを図りたいという意気込みの表れでしょうか?
デラックスシートが快適過ぎて後ろ髪を引かれる思いでしたが、虚しいことに列車は終点の近鉄名古屋駅のホームに滑り込むように到着しました
近鉄名古屋駅へ来ることは滅多にないので、ぎりぎりまで撮り鉄を楽しむことにします
折しも、20年春改正で名阪特急に80000系「ひのとり」が登場する予定であり、ここはやはりその去就が注目される21000系「アーバンライナー」をカメラに収めておきたいところです
「アーバンライナー」plusへのリニューアルを受けてから既に15年以上が経過していますが、窓周りにオレンジ帯を配したオリジナル塗装が懐かしいと感じる今日この頃です
もう少しカメラを振り回していたいところですが、これ以上長居すると「ひだ」36号に間に合わなくなってしまうので、撮り鉄もほどほどにして引き上げることにします
いつものように輸送障害に遭遇することもなく、313系に揺られて無事に岐阜駅まで戻ってきました
これで後は「ひだ」36号に乗って京都へ戻るだけと安心しきっていたのですが、そうは問屋が卸しません
どうしたことか、定刻になっても岐阜駅の4番のりばに「ひだ」16・36号の姿が見えません
遅延を知らせるアナウンス等もなく、茫然自失としていると2番のりばに「ひだ」14号が到着しました
そこで初めて、構内放送で「ひだ」14号が約1時間遅れで運行していること、そしてゲリラ豪雨で高山本線のダイヤが乱れていることを知りました
不安になる私をよそに「ひだ」14号は何事もなかったかのように終点の名古屋へ向けて発車していきましたが、まだ私の乗車する予定の「ひだ」16・36号が一体どれほどの遅延を以って運行されているのか、未だに案内がありません
仕方なく改札口にいた駅員氏に尋ねてみたところ、「ひだ」16・36号はおよそ30分遅れで運行しているとのことでした
別に普段であれば30分程度の遅れであればまったく意に介さないのですが、今日ばかりは大問題です
なぜなら、今回「ひだ」36号に岐阜から乗車するにあたって、一番楽しみにしていることが新垂井線の前面展望を堪能することに他ならないからです
新垂井線を経由する列車は、下りの優等列車と貨物列車のみであり、車両の構造上前面展望を楽しむことができるのは、この「ひだ」36号を差し置いて他にはありません
9月11日の大垣市の日没時刻は18時07分、そして「ひだ」36号が大垣を発車するのが定刻で17時54分です
新垂井線の走行にはおよそ15分を要するので、定刻通りに走ってくれさえすれば、何とか明るいうちに関ヶ原駅まで到達できるのですが、この日は結局岐阜駅を約30分おくれで発車したため、新垂井線は闇の中でした
ということで、今回乗車した大阪ひだの乗車記を別稿で紹介しようと思っていたのですが、敢え無く没ネタになりそうです
しかも、一番楽しみにしていた新垂井線の前面展望を楽しめなかったことは無念でなりません
来年のまた日の長い時期にリベンジを…という考えも頭をよぎりましたが、もし20年春改正で大阪ひだが廃止されるような事態に陥れば、それは不可能であり後悔だけが残ることになります
そこで、後日SL「北びわこ」号に乗車したついでに、米原から足を延ばして、再び岐阜から「ひだ」36号に乗車することにしました
この時は遅延等が生じることなく、無事に岐阜を発つことができましたので、次回以降の旅行記でSL「北びわこ」号や新垂井線を経由する「ひだ」36号の乗車記を紹介したいと思います
ということで、気分転換のためにお出かけしたのに、例によって輸送障害に遭遇したせいで、また新たなフラストレーションが溜まる結果となりましたが、それも旅の醍醐味として鷹揚に構えることが大事なのかもしれません
今回も最後までお読みいただきありがとうございました
それではまた次回の旅行記でお会いしましょう
※2:最前列及び最後列は1席につき1個
※3:しまかぜ,ひのとりを除く