▲10年ぶりとなるカーレーターの乗車に胸が高鳴るよっちゃん
さて、大変長らくお待たせいたしました
8月上旬にプロローグを書いてからずいぶんと間が開いてしまいましたが、須磨浦山上遊園訪問記の第二弾となるカーレーター編を書き上げていきたいと思います
この記事では、麓にある須磨浦公園駅から3つの乗り物を乗り継ぎ、回転展望台のある鉢伏山を経て、旗振山にある山上遊園まで向かう様子を紹介します
この須磨浦山上遊園ですが、上記の案内図を見てもらえれば分かる通り、小ぶりながらも多彩な乗り物が揃っています
麓からはまずロープウェイで山の中腹を目指し、そこでカーレーターに乗り換え、さらにこの施設の最深部へと向かうにはスキー場にあるようなリフトに乗り換える必要があります
ちなみに、これらすべての乗り物…ロープウェイ・カーレーター・リフト…に乗車して、この施設の最深部を往復した場合の料金は1800円(大人)です
それでは、まずは須磨浦ロープウェイに揺られ、山の中腹にある鉢伏山上駅まで向かいます
ロープウェイ乗り場の入口付近にこんな看板が設置されていました
明石海峡大橋が描かれているので、間違いなく平成に入ってから設置されたはずなのですが、そのフォントや色遣いから並々ならぬ昭和臭が漂ってきます
この須磨浦ロープウェイは、交走式と呼ばれる2台の搬器が同じ支索を往来する方式で、ちょうど中間地点で対向の搬器と離合するようになっています
2台ある搬器のうち、東側の搬器にはうみひこ号、西側の搬器にはやまひこ号の愛称が付けられています
私たちが乗車したのは、往復共に白を基調にしたうみひこ号でした
現在、使用されているこの搬器は、開園当時から数えて3代目にあたるもので、地元とも言える川崎重工で製造され、2007年3月に就航しています
ちなみに、このロープウェイ乗り場の真下を山陽電鉄の線路が走っており、そこを走る電車の様子が手に取るように分かります
通常時だとロープウェイの運行間隔は15分毎で、少々の待ち時間が発生しますが、こうして電車を眺めていればその時間も苦にはなりません
発車するとすぐに眼下には、紺碧の摂津灘や美しい砂浜の海水浴場、それに神戸の摩天楼群が広がり、まさに絶景と呼ぶに相応しい眺望を
また、摂津灘を航行する船舶や神戸空港に離着陸する航空機、それにJR神戸線を走る電車が絶えず行き交い、乗り物ヲタクの目を楽しませてくれます
およそ3分半の乗車で、ロープウェイは鉢伏山上駅に到着しました
ここからはいよいよ須磨浦山上遊園最大にして唯一の目玉ともいえるカーレーターに乗車し、回転展望閣のある山頂付近を目指します
ちなみに、カーレーターはカー(車)とエスカレーターを掛け合わせた造語で、大阪府に本社を置くベルトコンベアメーカーの日本コンベヤ株式会社によって1960年頃に開発されました
その後、滋賀県に開業したサンケイバレイ(現びわ湖バレイ)において、山頂へのアクセス手段として1965年に世界初となるカーレーターがお目見えしました
少しでも臨場感が伝わるように、敢えてカメラの手振れ補正機能をオフにして撮影しています
乗車する前から分かっていたつもりではあるのですが、10年前に訪れた時と比べて、恐ろしいほどまったく何も変わっていません
乗り心地の悪さもそのままですし、昭和臭漂うBGMもそのままです
10年前に乗車した時もそうだったのですが、乗り心地の悪さには思わず笑ってしまうほどです
カーレーターは時間にして3分にも満たない乗車ですが、その異次元の乗り味は私たちを昭和へのタイムトリップへと誘ってくれることでしょう
登場時はさぞかし近未来的だったのかもしれませんが、いまとなってはレトロフューチャー以外のなにものでもありません
この案内図を見て初めて知ったのですが、実はこのカーレーターは須磨浦山上遊園の開園と同時に開通したわけではありません
ロープウェイと後述する観光リフトが1959年の開園と同時に整備されているのに対して、カーレーターの完成は開園に遅れること7年後の1966年となっています
案内図に「登山客の利便を図って整備した」との文言あることから、どうやら1959年から1966年までの間は、鉢伏山上駅~回転展望閣間は登山道しかなかったとみて間違いありません
最初からロープウェイを鉢伏山の山頂付近まで建設していれば、それで事足りたような気もするのですが、拠所無い事情があったのやもしれません
いまやカーレーターは、上述したびわ湖バレイの路線が1975年に早々と廃止されてしまったことから、世界中探してもこの須磨浦山上遊園にしか存在しない貴重な乗り物です
Wikiによると、消耗部品の多さからランニングコストが嵩むこと、輸送力がリフトなどの他交通モードと大差無いこと、それに何よりも乗り心地が悪いことから普及には程遠い状態となったようです
カーレーターに乗ろうと思えば、最低でも1200円(※1)が必要となりますが、この唯一無二の乗り心地の悪さを味わうために、足を運ぶ価値は十二分にあると思います
以前、NHKのブラタモリでここが取り上げられていることから、タモリさんがカーレーターに乗っている特製ポスターが掲出されていました
カーレーターを降り立った私たちは、続いて観光リフト乗り場へと向かいました
鉢伏山にある回転展望閣については、帰りにゆっくり立ち寄ったので次項で詳細にレポートします
このリフトは、正式名称を須磨浦観光リフト(以下、リフト)といい、先ほどの回転展望閣のあった鉢伏山のせっつ駅から旗振山にあるはりま駅へ向かうものです
全長は268mで、その駅名が示すように途中で摂津国と播磨国の境界線を跨いでいます
ハリジイ式と呼ばれる方式のリフトなのですが、ネットで検索しても詳細は分からずじまいでした
もしかしたら、カーレーターと同じくここにしか存在しない特殊な方式なのかもしれませんが、ネットでさえ一切情報が見つからないというのもおかしな話ですよね
このリフトは谷を跨ぐように敷設されている関係で、せっつ駅とはりま駅、そのどちらから乗車しても、一旦下り勾配で谷底へ向かい、後に上り勾配に転ずる線形となっています
4分半の乗車を終えて、旗振山の方に到着しました
リフトの乗降場から右手へ階段を上ると遊具コーナーへ、左手へ階段を降りるとふんすいランドとバーベキューテラスがあります
リフトの乗降場に”自然いっぱい山上遊園”と書かれていることから、こここそが山上遊園の核心部だと窺い知ることができるのですが、残念ながら回転展望閣付近ではまばらに見られた人影も、ここまで来ると私たち兄弟2人以外の人影は見当たりません
それも当たり前で、平日はここにある遊具は”一切”営業していません
平日に営業したところで集客が見込めないのか、数少ない遊具らしい遊具であるサイクルモノレールとミニカーランドは土日しか営業しておらず、閑古鳥が鳴いていて当然かもしれません
貸切と言えば聞こえはいいですが、これでは先行きが明るいとは言えません
何せ私たちが乗車するまで、リフトも止まっていたくらいですから、お客さんの少なさは推して図るべしです
それでは、まずは遊具コーナーから紹介していきます
10年前に来た時にサイクルモノレールには乗車していますが、ここから望む摂津灘と明石海峡大橋の光景は名状し難い美しさです
こちらはミニカーランドですが、まるで人目を憚るようにひっそりと佇んでいます
その廃れっぷりに、果たして土日もきちんと営業しているのだろうかと訝しむほどです
ちなみに、この2つの遊具を以てして、この遊園が遊園足りうる理由を構成しているわけですが、どう考えても集客力が見込めそうにありません
前回訪れた時は春休みだったので、それなりに賑わっていましたが、平日となればこの通り閑散としています
もちろん眺望は素晴らしいのですが、平日に関しては何のためにこのリフトが動いているのかよく分からない状態です
事実、この日は私たちが乗車するまでリフトは停止しており、開店休業状態の様相を呈していました
今度は、先ほどのリフトの乗降場から階段を下りて、ふんすいランドに到着しました
いまでは何の変哲もない噴水があるだけの広場ですが、87年まではドレミファ噴水パレスと呼ばれる音楽と光に合わせて噴水が吹き上がる大掛かりなアトラクションがありました
私が生まれる前に撤去されているので、いまではかつてのCM映像からしか往時を偲ぶことはできませんが、どうやらそれなりに賑わっていたようです
もちろんここも貸切で弟と2人でのんびり過ごすことができました
これは寧ろ職員さんの方が多いのではないかと勘繰ってしまうほどです
しかし、このふんすいランドの横にあるBBQテラスでジンギスカンが販売されており、8月にテレビで紹介されたこともあって、じわりじわりとお客さんが増えているそうです
これほどの美しい眺望を誇りながらも、なぜか関西における須磨浦山上遊園の知名度はお世辞にも高いとは言えないのが悲しいところです
関西のレジャー施設における話題性は、そのほとんどをユニバが攫ってしまうんですよね
ふんすいランドで寛いでいると、UKB(※2)へ着陸態勢に入るスカイマークエアラインズのボーイングB737‐800が上空を通過していきました
この須磨浦山上遊園が、陸海空の交通路が交錯する位置に存在しているからこそ撮影できた1枚で、標高が高いことも相まって私の機材(COOLPIX P610)でも撮影することができました
景色の良さもさることながら、もっと航空機マニアや船舶マニアの間で気軽な撮影スポットとして有名になってもいいのではないでしょうか?
ところで、ふんすいランドへ降りる階段の横にロープウェイの廃墟のようなものがありました
現場を観察したり、衛星写真を見たりする限り、麓まで通じていた気配はありません
おそらく、ドレミファ噴水パレスへ向かう利用客の便宜を図って、簡易的なリフトが設置されていたのかもしれません
一頻り廃れた雰囲気を楽しんだ後、再び観光リフトに乗って鉢伏山の方へ戻りたいと思います
須磨浦山上遊園訪問記③:回転展望閣編…に続く…
※1:ロープウェイとカーレーターの往復乗車券に加えて、回転展望閣の入場券がセットになった割引きっぷの価格
※2:神戸空港