かの有名な『怪人二十面相』を題材とした作品です。
北村氏はその筋では大層ご高名な劇作家です。(僕は演劇も好きなので)

恥ずかしながら乱歩の『二十面相』はあまり読んでいないのですが、常に明智探偵の側から書かれており、二十面相について触れられる事は殆どなかったそうですね。
この作品は、二十面相──丈吉の側から描かれています。

サーカス団に所属していた丈吉は、入団してきた平吉に芸を教えますが、ある日突然姿を消してしまう。
それから暫くして、怪人二十面相という魔法のように美術品を奪う怪盗が現れ、世間は大騒ぎになる。
平吉にはそれが丈吉の仕業である事がすぐに分かった。
真相を確かめるべく、平吉は二十面相を追う──


二十面相と明智探偵の対決も非常に面白いのですが、この作品で注目すべきは丈吉の弟子の平吉と小林少年ではないでしょうか。
それぞれの師匠を心から尊敬する二人の少年が、その後どうなったのか。
二十面相の真実、そして平吉の成長。
乱歩の二十面相ファンの方だけでなく、乱歩やミステリーに興味のない方も楽しめる内容だと思います。