「(´・ω・`)」
「・・・・あれ?どうしたの、ふうくん?」
いつもの顔出し枠。
いつもの雑談放送。
ニコニコ生放送という動画配信サイトで、俺たちは出会った。
初めは、ただ面白そう、とか相談っていうタグとか・・・・
人も結構入ってて、気になったからとか、理由はいっぱいあったけど・・・
今となってみれば、その人の多さで生放送の主・・・シンジ(真実)はコメントの全てに反応できることなんてなくなっていて、飛ばし飛ばしにコメントをひらうことが当たり前となっていた。
それが少なからず面白くないと思ったのだが・・・つい自分の感情をコメントに打ち出してしまうくせが一向に治らない。
「いや、別にー(´・ω・`)」
「だからなんで(´・ω・`)してるのwwwおれが(´・ω・`)したいよwww」
「wwwwww」
そんなやりとり。
でも拾ってくれる時なんてまぐれで、それでも拾ってくれることが嬉しくて。
チャンスを伺って何度でもコメントする。
時々、自分の大量のコメントに嫌気を刺さないだろうかと考える日ももちろんあった。
それでも、シンジは疲れてても、辛そうでも、俺たちといるのが楽しいからと放送をしてくれていた。
たとえリスナーが無理しないでくれと、彼の体を気遣ったとしても・・・・
だから彼の周りには人が集まる。
彼はどことなく魅力的で男女問わず彼に好意を持っている。
そんな人・・・・
だから俺はそんな人のただの一リスナーで、彼は俺がいてもいなくても困らない。
むしろいない方が、ほかのリスナーに目を向けれるのかな・・・
そんなことを考えて・・・俺は1ヶ月ほど、シンジの放送に顔を見せなくなった・・・
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・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・
趣味のネトゲに勤しんでいた俺は、突然響いた通知音に目をやった。
通話ツールが音を鳴らしていた事を知らせるかのようにオレンジ色に光り、1という数字を挿していた。
誰だ・・・?
名前の表示を見ると真実と表示されていた。
あまり慣れてない名前で一瞬誰かわからずに首をかしげていたが、そのチャット内容で何となく誰かわかってきた。
「最近放送来てくれないね?何かあったのかな?」
「嫌われてしまったのなら申し訳ないのだけれど・・・」
「弁解・・・とは言わないけれど・・・もしよかったら、今日放送来てくれないかな?」
あの生主はこんなこと言わないと思っていた・・・。
それだけに驚きと動悸を感じた。
静かにそれを鎮めて、俺は画面に向き直った。
「おい、どうした?」
ヘッドホンから流れる音に一瞬驚いて、体を震わせた。
きゅっと唇を噛んで、ひと呼吸おいた。
「俺、今夜そっちいけないわ」
俺はゲーム画面をそっと切った。
そして、おもむろにベットに潜り込んだ。
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眠りこけてしまったのだろうか・・・?
外は真っ暗に日も沈み、布団の中で腹時計が食べ物をよこせと喚いていた。
時計を見ると夜中の1時を指していた。
すぐに飛び起きて画面を確認する。
予約枠であと10分ほどで始まろうとしていた。
安心からか一息ついて、冷蔵庫をあさった。
ちょうど、食べるものと飲み物が揃っていて、適当にそれを持ってPCの前へ戻る。
と、そこへ着信が入った。
発信者は真実。
俺は急いでヘッドホンとマイクを取り、その着信に応じた。
「・・・・あ、よかった。出てくれた」
「め・・ずらしいね・・・・。自分から着信しないのに・・・・」
「そうだね・・・」
また動悸が始まった。
鳴り止まなくて、うるさくて、ただ心の内に治まれ治まれと念じる。
「あ、あのっ・・・さ・・・・!俺、シ、シンジの放送・・・・行かないほうが、いいんじゃないかと思って」
「え?なんで?」
「俺・・・・その・・・シンジが、俺が、大量にコメントするし・・・減ったほうが、シンジもコメント読めるんじゃないかと思って・・・・」
シンジは少し沈黙したあとに、ため息をついた。
シンジの反応に俺は身を固くして、またぶるっと体を震わせた。
やばい・・・泣きそうだ・・・
「心配した・・・何かあったんじゃないかって・・・・俺も、確かに・・・コメント読めなかったり、無責任なことしてるって自分でもわかってるけど・・・・でも、そんなことなんかない。申し訳ないって思ってるけど・・・・でもそんな勝手な理由で、黙って消えられるのも・・・・俺の気持ちも考えてよ・・・」
怒ってるような口調だった。
俺は一つ、また一つと涙がこぼれ落ちて、ぐっと拳を握った。
「お・・・俺だって・・・・っ!ほかのリスナーもそうだけど!体の体調悪いのに放送したいからって無理して!それで、入院だってしたことあるって言うし!!心配してる方の身にだってなれよ!!!」
つかの間の沈黙。
相手がまたため息をついた。
俺はまた震える。
目をつぶって、ただただ次の言葉を待った。
「・・・よかった。何もなくて・・・・そうか・・・ただの俺の勘違いか・・・」
「え・・・?」
ふと笑ったように思えた。
それに対して疑問の眼差しで画面に目を向けた。
そこにはシンジが映し出されていた。
久しぶりに見たシンジは、少し目にくまが出来ていた。
「風助・・・・俺さ・・・お前のこと気になって仕方がなかったんだよ。男だけど・・・・この意味、わかるよな・・・?」
真剣なシンジの顔。
その言葉の意味を理解するのに、1分くらいかかった。
「・・・ええええええええええええ?!」
「反応遅い・・・w」
確かに、シンジの部屋でもゲイやオカマがシンジを口説いてたこともあったけど・・・
斯く言う俺も、まんざらなのは言うまでもないけど・・・
言葉も出ない俺に、シンジは苦笑いをした。
「・・・・やっぱり、気持ちわるい、よな・・・こんなの・・・・ごめん」
その言葉を聞いた瞬間、俺は自分が画面越しであることを忘れて、首を振った。
そして、溢れる涙をぬぐいもせずに向き直った。
「俺っ・・・おっれ、もっ!す・・ス、スキッ!っだから!」
びっくりした表情のシンジ。
でも直ぐに笑みを浮かべて机に、腕に突っ伏した。
「あー・・・やばい。いまスッゲェ幸せかも」
ガバッと、起き上がった瞬間、画面に向かってピースした。
「告白成功したぜ、みんな!」
・・・・ん?みんな・・・?
俺はハッとして、急いでシンジの放送に向かった。
「8888888888888888」
「公開告白wwwおめ!www」
「キャ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「ふうくん「お、おっれも、すすすすきだからーっ!!」」
「あなたのことがてゅきだからー!!」
「えんだあああああああああああ」
「ひゅーひゅー!!」
俺は顔を真っ赤にして、でもシンジも顔を真っ赤にしてた。
それだけなのに、俺は怒りもなにもなくなった。
「・・・・公認・・・って、ばか・・・」
「www」
嬉しかったなんて言えない。