魔法使いとナガシマ | 黒田勇樹オフィシャルブログ「Surrea StringS」

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一昨日の本番を観た後、僕はキャストたちに

「魔法が解けちゃったね」と言った

今回の「この暗~」という作品には、

ストーリーの重要な側面として

「閉じ込められた大人たちが、全力で遊び始めてしまう」

が、ある

テンション高く遊んでいる姿というのを、演技で完璧に表すのはなかなか疲れるし

とても繊細なものだったりするので

なんなら「演じている俳優が遊び始めてしまった方が、よっぽど魅力的」に見えたりする

ジムキャリーとか西田敏行さんとかさ、大人の名優はカメラの前や舞台の上で思い切り遊ぶという

胆力と感性と「選択肢」を持ってる

何回か公演を重ね、僕も毎公演劇場に居られない中、舞台の上には

セリフと段取りは何も変わっていないのに

"作業"をしている俳優たちが居て

僕は「ああ、魔法が解けたな」と思ったわけです

ただ「遊んでいいよ」と伝えてしまっては、先述した名優たちの様な経験と嗅覚のない俳優にとっては

恐怖であり、破綻のきっかけにしかならない

稽古場で繊細に「各シーンの面白さや、隠された遊び、登場人物が楽しんでしまう心理」を伝えてきたつもりだったんだけど

そこに「慣れ」が出てくるのいうのは

僕の経験不足故の見通しの甘さだったと思う

1回サンタを信じることを止めた子供に、もう一度サンタを信じ込ませることがとても難しい様に

「この作品はここまでだったか、この経験をしっかり次回に活かそう」と肩を落としつつ

「それでも諦めなければ…!」とこの物語の登場人物の様に、脳内では悪足掻きが続く

淡々と細かいダメ出しを伝えて、劇場を後に

1日考えて考えて「長島監督の話をしよう」と思って向かった昨日の本番

「長島監督は天才故に、"今日は勝てない"とか"あ、打つな"とか、勘とか予想を完璧に当てたけど、別にだからといってどんな試合でも勝てる名監督では無かったそう。俺も今日、正直長年の勘で"ここからこの作品が復調することは無い"と思ってる。これで本当にデキが悪いと"俺が自分もナガシマと同レベルの天才"と自惚れてしまうから、どうかいい演技をして鼻っ柱をへし折ってくれ」と

まあ、悪い

ネガティブなことを言って闘争心に火を着け、ワンチャン奇跡を望むような良くない手段を取ろうとしていたワケです

が、しかし

劇場に着き、アップをしている俳優たちを見た瞬間

「あ、これホームラン打つな」と

長島監督の話をするのを止めて、「あすこだけ気をつけて」を2.3点各自に伝えて本番を見守る

そこで繰り広げられたのは、若干肉体の疲れは見えたものの

全力ではしゃぎ遊ぶ登場人物たちと、それをキャッキャ見守る観客たちが…!

自惚れましたねー!

諦めずに、俳優とのコミュニケーションを続けていく

正解は、ただそれだけでした

その後、キャストスタッフに誕生日のサプライズパーティーをしてもらったんだけど

本当に楽しくて幸せな時間でした

なんてったって「自分が思うより、遥かに演劇の魔法は偉大」という

最高のプレゼントをもらった後だったんですから

残り2日3公演、僕も客席でお待ちしてますので

どうぞ"一緒に"遊びに来て下さい!