今回は浅野いにお先生の「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」を紹介したいと思います。

【主人公の門出は、将来や恋愛に悩む平凡な少女。彼女たちの日常は宇宙船が東京の上空に滞在しているという≪あたりまえの世界≫のもとに成り立っている。
宇宙人が人間に害をあたえるわけではない。たまに空母から中型の宇宙船が出てくれば撃ち落とす。それの繰り返し。一般人は関わることはない。そんな平凡な世界は門出の目にどう映るのか。】

今作は、今までの浅野先生の作品を読んだ方ならより納得していただけると思いますが、コミカルな絵柄になっています。また、内容も割とコミカルです。
(冒頭から町中に宇宙船が浮いていますからね)

ただ、こんなに漫画らしい設定であっても、主人公を通してどこまでもリアルな、現実味のある話
になっています。
日本における宇宙船や宇宙人の存在は、世界の注目を集めているとはいえ、もはや一般常識、大きい声で宇宙船だ宇宙人だと叫ぶ人間はいません。
長くその場に留まり、日光を遮るといった方が問題視されているくらいです。

現在単行本は4巻まで出ていますが、主人公はほとんど宇宙船や宇宙人といったものと関与していません。そんな設定が無くても成り立つようにさえ思います。

主人公は、将来に悩み、恋愛に悩む普通の少女です。

どこまでもリアルに描かれる日常、しかし読者からすればどこまでも異物な宇宙船、宇宙人の存在。
ここのギャップがとても面白いです。
現実の世界の風刺のような、そんな場面も多々あり、考えさせられることもあります。
しかし、そこもギャップです。コミカルな絵、シーンも多く、決して説教くさくは感じません。
もしかすると、今作はそうならないように絵柄を変えたのかもしれませんね。

さて、これだけでも面白さは感じとれると思いますが、いよいよ宇宙人側が動く番です。
最新刊では宇宙人視点で世界が描かれている回もあり、「いよいよこっち側の話がきたか!」という感じです。

すごいですよね。四巻で起承転結の転です。
宇宙人が地球侵略するターンです。
前回の記事の「アイアムアヒーロー」も、日常を濃く描くことで、それが崩壊したときの演出が効果的に行えると話しましたが、今回は少し違うように感じられます。

「アイアムアヒーロー」はあくまでも壊すためのリアルな日常でしたが、今作はただ壊すためにリアルな世界観を作り上げたのではないと思います。

(日常が壊れた社会はどうなるのか。)
この一点が重要に思います。もちろん主人公目線での物語も大きく動くと思いますが、それは主人公の目を通して社会を見せるということです。

わかりやすく言えば、
「アイアムアヒーロー」は(主人公目線の主人公の話)
「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」は(主人公目線の社会全体の話)
と考えられると思います。

「デッドデーモンズデデデデデストラクション」が社会の話となるのは、やはり、社会問題などを風刺する面が大きいからだと思います。

エンターテインメント性の高い絵柄、シュールなギャグ。
緻密でリアルな世界観。
宇宙人という一見現実離れした存在を介して映し出される社会。

何も考えずにパラパラとページをめくるか、深く考えさせられながらページをめくるか。
そのどちらをも可能にする、非常に珍しく面白い漫画です。

以上で今回を終わります。
長文を読んでくださりありがとうございました。