止まらない鼻血を止めつつDVDを観ながら、蓮は撮影の時のことを思い出していた。
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「「”冷やして着るシャツ”ですか?」」松島から説明を聞かされた時、蓮と社の声が綺麗にハモった。
「ああ。近年、35度を超える真夏日が珍しくなくなってきてるだろう?そこでだ、老舗の紳士服店、洋服の青○が繊維業界でトップクラスの△▽とタイアップして、冷蔵庫かなんかに一晩冷やしておけばほぼ丸1日爽快に過ごすことができるシャツを開発したんだそうだ。20~40代の若い層にも幅を広げるために、蓮にオファーが来たんだが。」
「シャツのCMとなると、アルマンディは何か言いませんか?」社はそう松島に問うた。蓮はアルマンディの専属モデルを務めているのだ。だから、その辺の事もきっちりしてからでないと、このオファーは受け入れようにも受け入れられないと社は言外に臭わした
「それに関しては大丈夫だ。青○の代表者と俺とで直接アルマンディに交渉に行ったら、すんなりOKが出たぞ。だから、社が懸念してることに関しては一切問題ない。後でイザコザが起こらないように誓約書にも署名してきてもらった。」が、松島はそれは大丈夫だと請合った。
ここ(LME)の社長であるローリィが何ごとに置いても奇抜すぎて、どんなに優秀な社員達でも霞んで見えるが、やはり俳優部門の主任をしているだけあって、松島もただならぬ人物であった。
あの一癖も二癖もあるアルマンディの上役達と渡り合うことが出来るのだから。
どうする?と目で促されて、珍しく蓮は悩んだ。それはもちろん、仕事が忙しくなると言う理由ではなく、めったに会えないキョーコに、この仕事を入れてしまえばますます会えなくなってしまうと言う、恋する男には切実な悩みがったからだ。
「言い忘れたが、最上さんが共・・・」
「やります!!」キョーコの名前が出た途端、松島の言葉をぶった切って、蓮は堂々宣言した。隣では、社がヤレヤレと言った表情をしていた。
その剣幕にやや押され気味になりながらも松島は、「おおおお、そうか?じゃ、こちらから連絡しておくからな。」そう返事した。
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数日後。
グ~フ~フ~。そのCMの顔合わせに行く車中、社はずっと、某ネコ型ロボットの様な笑いをしていた。
「社さん、いい加減そのその笑いやめてもらえますか?」蓮は抵抗を試みるも、
「うん?今のお前の心境って、こんなかな~って思って、再現してるだけだけど?」社には敵わなかった。
顔合わせをする青○本社の会議室に行くと、キョーコはもうすでに来ており、いつものごとく綺麗な姿勢で元気よく二人に挨拶した。
「おはようございます。敦賀さん、社さん。」
「おはよう。最上さん。いつも早いね。」
「おはよう。キョーコちゃん。張り切ってるね。」
「はい。今回は、何か妖精というか精霊と言うかそんな感じの役なので凄くワクワクしてるんですよ。」
妖精等と言ったものが大好きなキョーコは、瞳をキラキラさせながらそう言った。
((紳士服のCMに妖精って・・・・))蓮と社は、理解に苦しんだ。
「へえ。それって、どんな役割になるの?」
キョーコが、その社の問いに答えようとしたところで、青○サイドの社員と今回このCM の監督を務める黒崎が部屋に入り、一通り挨拶と紹介を終えると。
黒崎は単刀直入に言った。
「撮影を始める前に言っておく。敦賀蓮、今回はお前がお前と分からない様に撮るからな。」
「え?と言うことはれ・・・敦賀の顔を出さないということですか?」黒崎の言葉に社が質問をすると、
「そういう意味じゃなくて、何処にでもいるごくごくありふれたサラリーマン役をして欲しいんだよ。」
その言葉に、蓮と社はそう言う事ならと頷いた。
「それから、京子。お前にはCMの撮影以外にも、入浴シーンの撮影があるからな。」
その声にピクリと反応したのは蓮である。
「黒崎監督。入浴シーンの撮影っていったいなんです?」
それに答えたのは青○サイドの人間だった。
「このシャツを購入して頂いた方に何かグッズをと言う案が社内で持ち上がりまして。ある女性社員から”浴室に貼れるポスター”がある漫画雑誌に付録として付いた時、その雑誌飛ぶように売れたらしいと聞いたんです。
我々もそれにあやかって、その出版社に許可を頂いた上で、今や人気急上昇中の京子さんで作ることになったんです。」
その話を聞きながら社は気が気じゃなかった。なぜなら隣に座る恋する男の米神からピキピキと言う音が聞こえてきたのだ。
「その撮影のときは水着を着用して頂きますから、大丈夫ですよ。」その社員は蓮の様子に全く気づいた風もなく、キョーコにニコリと笑いかけた。
キョーコも水着着用ならと、「はい。」と頷いていた。
《つづく》
あのお風呂ポスター、キョーコがモデルでやったら(蓮の反応が)面白いだろうなあと言うだけで出してみました( ̄▽+ ̄*)