雨が車を叩きつけ、視界を遮る街の中。
俺らは避難場所へ向かっていた。
携帯を見てみる。
さっき積哉に送ったメッセージには既読がついていない。
本気で心配になる。
「盈虧ー宮篠って今通れるのか」
「わかんね。交差点じゃなけりゃいけんじゃね」
モニターの破片やら瓦礫やらで通れはしないだろう。
雨が弱くなり、車は宮篠の近くまで来た。
「あなた。交差点しか通れるところないわよ」
「そうみたいだな。あっちも通行止めだ」
瓦礫は撤去されているのか、何事もなかったようになっている。
いや何事もなかったようになっているのは瓦礫だけではなかった。
「・・・あれ。あのモニター、さっき壊れてなかったっけ」
「さっき?何の話だ」
わけがわからない。
この短時間で修復させたというのだろうか。
この状況下で。
――――っ!
『それ』に気づき俺は絶句していた。
雨で水たまりは大規模になり。
交差点には無造作に横たわる自転車。
そばには付いたままの携帯。
トーク画面には『盈虧』の文字。
「・・・せ。積哉」
「積哉っ!!」
一人の人間が不幸にも倒れていた。
その人間の顔は紛れもなく積哉であった。
「親父止めて!積哉が!!」
「なんだ?ちょっとまてって」
車は急停車し俺はすぐさま扉を開ける。
積哉が。あれは積哉だ。絶対。
積哉に駆け寄り呼びかける。
「積哉!おい積哉っ!!どうしたんだよ!!」
その表情たるに。
「おいなんとか言えよ!!積哉!!」
『それフラグじゃん』
自分が言った言葉をふと思い出すも忘れ。
認識した。
死んでいる。
「その人はもう助からないね。どうも生命は戻せないみたい」
6時の方向からの声だった。
ワンピースの少女。
――――神崎風花。
そして繋がった。自分の思考も、理論も全く紙一重だったことも。
「人間。ではなかったみたい」
「なんだよこれは。なんなんだよ」
「彼を巻き込んだことには恐れ入る。でも今さらの話」
「今さら?巻き込んだとかわけわかんねえよ。どういうことだよ」
「彼の死は避けられない」
すると親父の声がした。
「おーい。盈虧お前何やってんだよ」
「人間か・・・。来て」
「は?・・・ちょ」
風花は俺の腕を掴むと走り出した。
親父の声もむなしくさっきいた場所から少し離れた場所についた。
「なんだよ。さっきのはどういう・・・」
「ごめん。話をしている時間はない。いいえあなたなら。わかるはず」
「わかる?何が」
「あなたが死んでいないことがそれを証明している。ここにいて。」
そう告げると彼女は即座に走り出しむこうの角を曲がっていった。
意味分かんねえし。
いざ落ち着いて考えてみる。
俺に何がわかるって。
なんなんだよあの神崎風花とかいう・・・。
公園。幽霊。猫。ギターケース。
雪。
まてよ。なんで雪が降ったのに俺は意識が続いてるんだ。
いつも雪が降った次の朝はやや暖かい。
そして2月を回ることはまずない。
気味が悪い。
なんでこうも気分が悪い。
今まで気にしていなかったことが。
今になって不自然な気がしてきた。
「運がいい。運がいいねこれは」
声がしたのは近くの地下出口だった。
やや長身の男。
背後には大きな・・・チェーンソー。
「節がいたね。節がいた。ちょっと痛いけど我慢して...ね!!」
それを取り出し。
どうもこちらへ進撃しようというのだ。
「ちょ、まって!なにする気だよ!!」
「なにって消滅させんのさ!」
「消滅!?冗談じゃない。話せばわかるって!」
何説得しようとしてんだ俺。
ともかくこいつをさっさと止めなければ。
「おっと逃がしはしないよ!」
ガリガリと音を立て右そばのコンクリートを粉砕するチェーンソー。
あと数センチかという場所にチェーンソーがある。
「なんつー切れ味だよ」
「こいつはそんじゃそこらのモノとは違うんでね」
左。
左に行けば避けれる。
「こっちが空いてるぜ」
「ふふん」
よし。
次はあの地下出口から・・・。
「ちょっと調子乗らないでね。痛い目見るよ」
目の前には男がチェーンソーを振りかぶっている。
足がすくんで動けない。
「ああ・・・終わったな俺」
――――ッ!!
