便所の落書き

便所の落書き

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 茶色いスニーカーをアスファルトにつけた瞬間に横から赤色の物体が靴にぶつかるのが青年は視界に入る。

 不審に思いながらもかがみこんで手にすると古ぼけた赤色のクレヨンだと認識し転がってきた方向を向く。

 

 夏場の陽が指す中赤色のワンピースでスカートの部分に白い水玉模様が施されている服を来た活発そうな少女が視界に入ると青年は左の眉を数ミリ上げてそちらに向かう。

 近づきながらも日陰の暗い中所々建物の鏡が反射した光が青年の目をかすめて途切れ途切れに視界が白く染まる、そのことにイラつきを覚えながらも相手が年端もいかない少女であることを思い出し平常心を意識し表情を作る。

 

 少女を見下ろす距離にまで辿り着くとその周りに赤色のクレヨンだけが周りに錯乱しており、一瞬青年は足を竦めるも首を数回横に振り声色を意識し声を発する。

 

 「…何をしているの?」

 

 小声ではあったものの明らかに聞こえる音量にもかかわらず少女はそちらに目を向けることすらせずに手に持っている赤色のクレヨンで地面のアスファルトに絵を描いていく。

 注目し建物に挟まれた薄暗い地面を見てみると網目模様の線を書いてその先に何らか赤を何重にも塗った形跡がある球体に繋がっていた。

 

 その球体の表面にはクレヨン特有の残り滓があり、少女の周りの赤色のクレヨンの先が崩れていて何十本もあるそれを全てそれに費やしたという事に思い至ると青年は小声を漏らして目を見開かせる。

 明らかに異常な行動であり、その少女が普通ではないと悟った青年は青いジーパンの後ろポケットに手を伸ばしスマホを掴む、その瞬間目の前の少女の動きが止まり、それを見ていた青年は思わず動きどころか呼吸を一瞬止めてしまう。

 

 「邪魔しないで」

 

 夏の熱い気温を何処か冷ますような低い声を聞き青年はスマホから手を離してポケットから勢い良く出すと少女と周りに散乱した赤いクレヨン、そして描いている網目模様に視線を行き来させて行く。

 後ろの青年の姿をどこからか観察しているかのようにまた動きを再開させる少女に青年は深く関わっては行けないと認識しゆっくりと後ずさる。

 

 足を上げようとした瞬間に少女の動きが再度止まり、青年の頭にこのまま動くと何かが起きる、そう瞬時に文面が浮かび上がる。

 何も理由はなく、自分でも馬鹿に思えるような事だが昨晩見た心霊番組を思い浮かべてしまい薄っすらと青年の瞳に水気が押し寄せてしまう。

 

 その状態から一切動くことが無い少女を見ながら青年はふと空を見上げる、少女なのかどうか解らない相手に翻弄される青年をあざ笑うかのように雲一つない晴天を見て思わず天に向かいつばを吐きそうになるがしてしまって自分に当たればいいが少女に当たってしまったらどうなるのか考えると青年は小さく心のなかで舌打ちをするだけに留めた。

 

 この状況がどれほど続くのか、少なくとも数時間は覚悟した青年の背後に足跡がしまた何かが近づいてくるのかと思い動くことすらままならないなか意識を集中させる。

 

 「あの、どうかしましたか?」

 

 その声を聞いた瞬間青年は少女のことを忘れて後ろを勢い良く振り返る、顔から冷たい汗を流し目を送ると不審そうに近寄る警察官の姿を目にその警察官に勢い良く駆け出し目の前まで走るとそのままの勢いで身振り手振りをし始める。

 

 「た、助けてください! あの子何かおかしいんですよ!」

 「…あの子? 失礼ですがそこには誰もおりませんが………」

 

 そう言われて血の気が引き顔色がどんどん悪くなる青年に警察官は不審に思いながら青年の指を指した方を凝視するが何処にも異常性が見られない。

 警察官に釣られて目線を追うがそこには先程まで居た少女も赤いクレヨンも描かれていた不気味な絵すらも煙のように消えていて、白昼夢でも見ていたのかと自分に震えながら言い聞かせていると警察官が青年の肩を叩く。

 

 「………所で1つお聞きしたいのですがよろしいでしょうか」

 「は、はい…なんですか?」

 

 そういうと警察官は青年の腕を掴み青年に向かい冷たい目線を向けたまま告げた。

 

 「この小さな点は何ですか? 私には注射の跡に見えるんですが」

 「…えっ? あっ!」

 

 そう言い逃げようとする青年の腕を優しく握っていた手に力を込めて力強く引き、足を引っ掛けて地面に押し倒して無線を掴み声を通す。

 

 「こちら◯◯通り、不審な男性を確保しました…薬物を使用している可能性が高いので至急検査キットを持って応援を求む」

 「違っ! これは持病の糖尿のですね…!」

 

 そう青年は異常なまでに目を見開かせたまま警察官に問いかけ続けた。