2023.2.12
ビアリストックスのボーカル甫木元空(ほきもとそら)さん監督の映画『はだかのゆめ』を観たいと思っているのですが、残念ながらこちら(福岡)では上映されていません。
せめて、その世界観に少しでも触れたくて『新潮2023.3』を買いました。小説『はだかのゆめ』(甫木元空)が表紙を飾っています。
ビアリストックス…ジワジワとではなく、もはやスパーンと駆け上がって行きそうな勢いです。
小説には、両親の病気や死別、高知での移住生活などが描かれてあります。
20代の青年が経験するにはちょっと辛すぎる、重すぎるのではないでしょうか。
と、40代の私などは思います。
それはきっと、甫木元さんの人生観や死生観に影響を…相当に及ぼしたのだろうなと。
そこには病気も生も死も描かれていますが、決して暗いということはなく、
日常の中に混在していて、日々は淡々と流れて行きます。
悲しいことや辛いこと、そういったものは奥深くに沈んであって、表層は凪いだまま…
まるで波間をたゆとう小舟のような、
そんな印象です。
それが
アーティスト・甫木元空
映画監督・甫木元空
小説家・甫木元空
の世界観であって、
映画『はだかのゆめ』や
アルバム『QUICKSAND』の根底にあるものなのだろうと感じました。
また甫木元さんの言葉の使い方も独特で、「音」がとても印象的なのです。
例えば、肺の水を「ポチャン」と表現しているのですが、
ちょっとヒヤリとするような生々しいような…
情景と共に皮膚感覚まで伝わってきます。
音楽をする人が小説を書くとこうなるのか!と新鮮な驚きです。
生きているものと死んでいるもの、あるいはその境界…
小説を読むと『はだかのゆめ』も『灯台』もまるでレクイエムであるかのようです。
小説『はだかのゆめ』は私の心の深いところに届いたので、読後感を書き留めておこうと思いました。