一章

一、会遇
私達は中二の終わりにTwitterで知り合った。
当時Twitterに夢中になっていた私はおすすめから『kuraha』を見つける。
その時の印象は私より大人で人当たりが良いイメージで関わってからもその印象は
変わらなかった。
その為、後に二歳も年下だった事を知らされた時は驚きが隠せなかったことを覚えている。何故ならkurahaはTwitterの年齢の設定を偽っていたから。
「クラちゃん」
 親しく呼び合う仲になった私達は、
お互いにLINEを交換し合い、通話を頻繁にしたり、配信を行っていた私の元へ毎回来てくれたり、相談を乗ってくれたのでkurahaを信用するのに時間はかからなかった。

 中三の始まり、友達の『瑞希』と喧嘩をして全く話さなくなった。そのまま仲直りが出来ずに時が過ぎていく中、友達は部活の仲間を味方につけて仲間外れをしてくるようになった。
部活が唯一の居場所だった私は酷くショックを受けたが、クラスに友達がいて部活ももうすぐ引退する為、『あと少し頑張ろう!』そう意気込んでいた。
 私は毎日ショックを受けながらもクラスの友達には悟られないように明るく接する事を心がけていた。
 しかし、隠しきれていなかったのだろう。 
「最近のあいなちゃん暗くて一緒に居るとつまらない」
そう告げられ移動教室へ行く時、少しずつ置いていかれるようになった。暗い私は嫌いなのだろう。私は何も言い返す事が出来なかった。本当の事だから。ずっと一緒に居てくれた友達だから理解してくれると思っていたが、そんな事は無かった。甘い考えだった。何も言わずに理解してくれる人は中々居ないだろう。人間には言葉が必要だ。そんな当たり前な事も分かっていなかった。
 その時から自分から敢えて一人になることを選んだ。置いていかれるのが怖かったから。自分から一人になることを選べば傷つかない気がしていた。

 楽しそうに会話が弾んでいる姿を遠目で眺めながら

────何がいけなかったのだろうか────

 そう思わずにはいられなかった一学期。
クラスでも部活でも居場所を無くした私は
以前よりTwitterに依存することになる。それと同時に人が怖くなりマスク依存症になった。人からの視線を少しでもシャットアウトしたかったのかもしれない。自分が守られているような気持ちになるのだ。誰も私なんかに興味が無い。そう分かっていても人の視線が、人が怖かった。人が笑っていると自分の事を笑っているのかもしれない、そう考える事が多くなった。顔も自信が無くて影でこっそりと生きたかった私には都合の良いアイテムだ。
 別のクラスの友達『クミ』ともTwitterで繋がった私はネット友達のkurahaを紹介してみた。すると二人は気が合ったようで瞬く間に仲は良くなっていった。その後、クミとkurahaの
三人のLINEグループを作って電話をしたりクミと二人で配信したらkurahaが来てくれたり私達の日常は充実していた。

 そんな中、私はボーカロイドをカバーする歌い手さんの存在を知った。ボーカロイドの心の無さそうな声に感情を乗せて歌う歌い手さん達。
 色んな曲を聴く度に鉛のように重かった気持ちが軽くなるのを感じた。
『私も自分の歌声で人を救える人になりたい。』
そう決意した私は歌い手を目指すようになった。
「私、歌い手になりたいなって思っててさ」
いつものクミとの登下校で私は打ち明けた。
クミは驚いた表情をしながら
「私も歌い手かシンガーソングライターになりたくてさ」
と軽い感じで言った。
「まじ!?じゃあ一緒に目指さない?」
誰かと一緒にやったら楽しいイメージだったので軽い気持ちでクミに提案をした。
「いいよ」
クミも乗り気だったようだ。
私達は同じ目標地点に向かって努力を重ねた。
 何回もカラオケに行って配信を行ったり、お互い切磋琢磨し合いながら二人で有名になる未来を夢見ていた。
 しかし、私は現実を見ることになる。配信を行う度に注目がクミに集まることを感じていた。
クミが歌うと、
「綺麗な声」
そう多くの人がコメントをする。
確かにクミの声質や人を惹きつける技術は遥かに優れている。
 クミは自分の歌声の活かし方を素で分かっていたのだ。初めて人に対して劣等感を抱いた。
 そこから更に色んな人に対して劣等感を抱くようになる。Twitterで見かける始めたばかりの歌い手さん達、当時所属していた同じ歌い手グループの人達、全ての人が自分よりも歌が上手く感じた。
 自分の存在価値が分からなくなっていった。何故こんなにも上手くいかないのだろう。努力しても才能には勝てないのだ。それに加えて私は滑舌が悪かった。
周りの人はもちろん、初対面の人までもが指摘してくるような滑舌の悪さだった。割り箸を挟んで過ごしたり、早口言葉を練習したりしたが、中々上手くいかなかった。
 自分が皆に追いつくまでの寄り道をしている間にどんどん皆は上のステージへ離れていってしまうのだ。私はその事に気づいてしまった。
 この頃から私はよくTwitterでネガティブなツイートをするようになった。
 リアルでは言えない気持ちや悩みもTwitterでなら本来の自分を出せている気がした。ツイートをする度にkurahaが心配してくれたので私は安定した精神でいられた。kurahaは私の精神安定剤だ。kurahaは私より大人だ。第一印象から変わらない。私の悩みに的確にアドバイスをしてくれた。きっと沢山の経験を積んでいるのだろう。ただ同じような日々の繰り返しの人生を過ごしている私とは違う気がしていた。葛藤して一生懸命生きてきたのだろう。私にはkurahaが輝いて見えた。
 リアルではクミと一緒に登下校をしながら話をして色んな人へ抱いていたマイナスな気持ちを空元気で紛らわす毎日だった。夏休みまで二人と共に過ごしたくだらない日々。でも私はそんな毎日が好きできっと2人も同じ気持ちだっただろう。

少なくともこの時までは。