　鎌倉へ行って源頼朝の墓に足を運んだ。源頼朝といえば鎌倉幕府を開いた人物だ。日本ではその後武士が家臣に領地を与えて国を統治する封建時代が約700年にわたって続くことになる。その頼朝の墓はどんなものだろう、と気になって行ってみた。

　鎌倉の名所といえば鶴岡八幡宮だ。現在の場所に社殿を築いたのが頼朝である。

鎌倉駅から頼朝の墓に行くにはまず鶴岡八幡宮の参道を進み、大鳥居の前で右に曲がり、道なりに歩く。

　法蔵寺のところで道が曲がるあたりから車通りは少なくなり、静かな街並みとなる。先ほど通った小町通の雑踏が嘘のようだ。超高層ビルや派手な看板はないから鎌倉駅周辺よりも古都の趣を感じる。

　さらに歩くと「岐れ路（わかれみち）」というバス停がある。バス停前のパン屋の角を曲がり、まっすぐな道を進むと細い石段につきあたる。石段を昇り、小さな鳥居をくぐるとそこに頼朝の墓があるはずなのだが…。

　そこのあるのは権力者の墓にしては小さな石塔と、小さな空き地。

　現地の案内板や鎌倉市教育委員会HPの記事によると、1199年に頼朝が他界すると、その遺体はこの場所に葬られ、彼の霊廟である法華堂が建てられた。頼朝の墓は鎌倉幕府滅亡後も武士の拝礼の対象となったのだが、記録では１７世紀には法華堂は存在していないようだ。

　現在私たちが見ることができる墓石は1779年に時の薩摩藩主・島津重豪（しげひで）が建立したものだ。

　墓を建てもそれに手を合わせるのは故人から3代までで、やがて墓は無くなって墓のあった場所は耕作地にされる、というようなことを吉田兼好が『徒然草』で書いていた。かつて霊廟が建っていたであろう空き地を見ていると、そんなことを思い出す。

　世の東西を問わず、生前多くの人民と広大な領地を支配した権力者であっても墓は現存しない者は多い。権力なんてそんなものだ。

史跡法華堂跡（源頼朝墓・北条義時墓）

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　帰りに小町通の鯛焼き屋へ寄った。ここの大将は私のいとこなのだ。彼はまだ頼朝の墓には行っていないが、北条政子と源実朝の墓には行ったことがあって、みすぼらしい場所だった、と言った。実朝といえば頼朝の次男で、鎌倉幕府第３代将軍だが鶴岡八幡宮境内で暗殺され、頼朝の家系はその時絶えた。頼朝の死後幕府の実権を政子の実家である北条家が握った。そういう流れの中での事件である。