1年ほど前から一部美容界隈で話題になっていた
ヒアルロン酸注入部位がコロナワクチン接種後に腫れる(ことが稀にある)問題について
このような問題が起きた方は、アメリカのデータでは15184人中、3例でした。
起きる確率が低いのですが、
コロナワクチンを打ったら、ヒアルロン酸を入れた唇が腫れた!!
というようなことが起きたら、ビックリしちゃいますよね。
一部で噂されているように、コロナワクチンは危険なのか……!?とか怖いこと考えてしまうかもしれません。
でもそうではありません。
以下、4つのポイントに分けて書いていきます。
① コロナワクチン特有の現象ではありません(つまりコロナワクチンが危険なものだから腫れるというのではない)
② 対処法
③ ワクチン接種を控えるべきか
④ 私の経験した症例
① コロナワクチン特有の現象ではありません
ヒアルロン酸注入部位の過敏反応については、コロナワクチン接種後に限定して起きるわけではありません。
同様の反応が、インフルエンザの予防接種後、風邪、花粉症などをキッカケに起こることが報告されています。
また、疲れすぎている時や、大量に飲酒した後などでもみられるようです。
原因や因果関係については、はっきり解明されてはいませんが、
広義の異物反応であり、免疫系が刺激されて引き起こされている可能性があります。
② 対処法
抗ヒスタミン剤やステロイドなどの治療で多くは改善します。
③ ワクチン接種を控えるべきか
このようなトラブルは本当に稀です。
ヒアルロン酸注入治療歴があることは、コロナワクチン接種を忌避する理由にはなりません。
過度に恐れずにワクチン接種してほしいと思います。
また、このような現象はヒアルロン酸だけではなく、人工物を体内に挿入している場合(乳房インプラントや人工関節、骨折したあとのプレート等)でも起こりえます。
そういう治療歴のある方もたくさんワクチン接種されていて、その中でトラブルが起きているのはごく少数です。
(ヒアルロン酸は比較的こういう反応を起こすことはすくないです)
ただ、人工物を体に入れると、まれに過敏反応が起こりえるということを患者様にも知識として持っておいていただくのは重要かと思います。
④ 私の経験した症例
実は少し前に、私の患者様でもコロナワクチン接種後にヒアルロン酸注入部位が腫れた方がいらっしゃいました。
【症例A】
施術内容:両側頬へのヒアルロン酸注入 (コロナワクチン接種4か月前)
症状:腫脹(片側)
ワクチンの種類と症状発現時期:ファイザー製ワクチン、2回目接種3日後
診断: 軟部組織の腫脹
治療経過: 2週間抗アレルギー薬内服(服薬開始から約2週間で軽快)
この患者様の場合、ヒアルロン酸を両頬に注入しましたが、片側の頬の一部だけ腫れました。
実際に診察すると、疼痛がほとんどなく腫脹以外の症状がないことから感染は否定的でした。
(また、感染は注入から数日以内に起こる場合が多い)
注入部位を中心として、その周囲も境目がはっきりせず腫れており、遅発性結節であればもっと局所的な場合が多いので、遅発性結節とも異なります。
診察の結果、局所的なアレルギー反応であろうと考え、抗アレルギー薬の内服で軽快しました。
(その後、別の美容医療を受けに元気に来院してくださり、うれしかったです)
以上、いろいろと書いてきましたが、少しでも患者様が不安なく過ごせるといいなと思っています。
ヒアルロン酸注入部位のトラブルについては、
今回書いた過敏反応だけでなく、感染や遅発性結節などの可能性もあります。
トラブルの際には直接診察に来ていただくようお願いします。
【参考】
フィラー治療後のコロナワクチン接種副反応について/一般社団法人日本美容外科学会(JSAPS)
インフルエンザ様疾患後のヒアルロン酸皮膚充填剤に対する過敏反応の遅延。