結婚式まではあっという間だった。
リンは控え室でミクに髪を整えてもらっていた。
鏡にうつる彼女はいつもより大人びていて、まるで別人のようだ。
ミクが思わずキレイと呟くとリンは照れたように笑った。

「先越されちゃったな」
大丈夫だよとふたりは楽しげに笑う。
好きな人はいないのかと尋ねるといないよとミクは寂しげに笑う。その表情の意味はわからないけど、あまり触れてはいけない話題なんだと思い話を変えた。
世間話をしているとドアをノックする音がした。レンが顔を覗かせる。
レンもまた良く似合っていた。
幼さも残る顔だちが今日は大人びて見える。おとぎ話から出てきた王子様。そんな印象だ。
レンがリンに歩み寄るのを見て、ミクはそっと部屋を出た。


「――失恋?」

笑みを含んだ声。こいつはリンとレンに対しては優しいのに、なぜ自分にはここまで冷たいのか。

「だったら?」
否定するのも無駄な気がして、ミクはぶっきらぼうに答えた。

不意に手を引かれ、唇にあたたかいものが触れる。ドンと突飛ばした手を捕まれ、顔を覗き込まれる。その真剣な目に顔を反らせなくなる。
失った片翼
どこにいるのかな
僕はまだ前に進めそうにない
ふたりでいた記憶は痛むけれど
それでも
たったひとつの真実だった



途中ですー
「久しぶり」
リンとレンに声をかけるとふたりはお帰りなさいと笑顔で言ってくれる。
ふたりとも背が伸びていて、あぁ成長期なんだなぁと思わせる。ふたりの身長差はあまりなかったはずなのだが少しレンのほうが高くなっていた。

「俺も手伝うよ」
そう言うと当然よとミクが答え、相変わらずな反応に思わず笑みが溢れた。


「結婚式はしたの?」
尋ねるとふたりは首を横に降った。ならしようと言うとふたりはいいんですと答える。そんなふたりを一生に一度なんだからと説得し、式を行うことを決めた。