わたしは救急車で総合病院へ緊急搬送された。
救急車の到着前から急激にどんどんお腹が痛くなり、自分じゃ歩けなくなってしまった。
たくさんの病院の人に囲まれて、痛みで朦朧とした意識の中、片隅に泣いている母親と早口で何かしゃべっている先生。そしてたくさんの紙にサインしているパパがみえた。
看護師さんが手をにぎってくれた。
「わたし死んじゃうんですね・・・。」
「そうしないようにするから、お母さんもがんばって!」
お母さん・・・?赤ちゃんは今どうなっているの?
そっか。ママと一緒ならさみしくないね。一緒にいこう・・・。
「リコリスさーん!わかりますか?終わりましたよ。」
看護師さんの声で目を覚ました。
・・・あれ生きてる。そう思った。
たくさんの点滴、管のささった腕、鼻には酸素。
なんでこうなったのかな。頭がぼーっとしていた。
いつのまにかパパが横に立っていた。
そして、一気に現実に引き戻された。
「赤ちゃんに会いたかった・・・。もうちょっとだったのになんで?」
赤ちゃんがいなくなったことはもうわかっていた。
きれぎれな声で聞こえたかはわからないけど、パパはうんうんってうなずいて、手をにぎってくれた。
「少し寝な」パパが手のひらをわたしの目にあてた。
でも、結局かわるがわる先生や看護師さんがはいってきて寝ることはできなかった。慌ただしくいろいろなことをしたり説明しているけど、わたしの耳には届かなかった。
夜になって意識が少しはっきりしてきた。
パパはずっとわたしの手をにぎってくれていた。
2人になったとき、
「今日ね、実は大きなケーキ頼んでたんだよ。」
そうか。今日はディナーに行くはずだった。
「わたしもね、ボダムのグラス買ってあったんだよ。」
「ありがとう。また行こうね。」
パパはサプライズなんてやる人じゃない。わたしはいつもサプライズ1回くらいしてよ~!って言ってた。
パパの気持ちがうれしかった。
本当はいまごろ、おしゃれしておいしいもの食べて、大きいケーキにびっくりして喜んでたはずだったんだな。
そして、いつもみたいにいちるはお腹でグルグル元気よくまわっている。
3人でそんな素敵な日になるはずだったのに。
わたしのお腹はもうグルグルしていなかった・・・。