1.はじめに
 公立の学校組織は、行政的な組織体系に組み込まれた中での「公教育の実施機関」であり、その枠組みや意思決定の基本は行政機関によって与えられています。
 そのことから教育委員会側は、学校経営そのものを関係法規の適用対象(規制や干渉など)としてとらえようとする傾向が強まるのであろうと考えられます。
 他方、学校はその適用対象であることを内包しつつも同時に、それとは全く異なる教育の事実行為に基づいた教師と児童生徒との個別的・相互的関係を基盤に成立しています。そのことから教育活動に対して大幅な自己決定権や裁量権の所有を求めるという関係になるのであります。
 教育行政の中央集権化が進行した「56 年体制」下では、この「学校の相対的自律性」の確保を、国はほとんど顧みることがなかったのであります。
 そこにおける学校経営の基調は、一方では、外に対し本来堅持すべき「相対的自律性」を実質的に失い、自らの専門的判断を優先させるよりも、大綱的な基準に従って行われる「指示・命令」、「指導・助言」に基づく行政の意向に従おうとする、無難な「行政依存・責任回避型・横並び主義」とならざるを得ないのであります。
 こういった現状を打開し、組織として判断し、意思決定する際にはトップの意思が優先されるのではなく、教育の専門家集団が議論し意思決定していくことに意義を見出しながら、合議制を基本とした組織を再構築し、それぞれの主体が責任をもちながら意思決定をおこなえる組織に転換する必要があると考えます。
 ではどういった経営体が望ましいのであろうか。考えてみることにしたいと思います。
2.学校の現状
 公立学校の現状は決していい状態にあるとは言えないのであります。その原因は多岐にわたり存在し、その問題を解決することが非常に困難になってきています。
 まず生徒の変化であります。児童・生徒にも多様化が進み、教職員のマネジメントが困難になって来ています。
 その原因としていくつかありますが、傾向として、ひ弱でわがままな生徒やがんこでわがままな児童や生徒が増加傾向になってきています。
 ひ弱さの特徴として①生活の型をほとんど身につけていない②つらい事,嫌な事に直面すると精神的,肉体的にすぐ参ってしまう③非常に傷つきやすくなり,他人とうまく関係を結べず,自分の殻にこもってしまう④全体として元気がなく,無気力でだらしない。などがあげられます。
 また、がんこ,わがままな児童・生徒の特徴としては、①傷つけられたとき,相手が弱いとみるとはげしく反撃し,暴力に限界がなくなった(キレる)②欲望を抑える力がなくなり,あくまで通そうとする。抑えようとするとよくキレる。などがあります。
 他方、不登校,いじめ,自殺,暴力,学級崩壊…などの問題が存在し、教職員の日常はこういった児童・生徒の対応に追われているのが実情であります。
 根本的な問題は,社会性のない自閉的な自我をもった子どもたちが大量に登場し,社会的自立が困難になっていることが大きな原因の一つにあげられるのではないかと考えられます。
3.学力の低下
①生徒の学ぶ姿勢が大きく低下してきている。②クラスでの集団生活,行事などがまず,崩れてきた。 ③授業はまだよくもっていると言えるが,ダラーッとした緊張のない状態になっている。 ④なかには騒然となり,授業の態をなさない状況もある。 ⑤相当数(6~7割)の生徒が塾へ行っている。 ⑥全体として学力の低下が深刻だ。⑦何のために学ぶのか,ということが高校受験だけになっている。 ⑧社会的自立のための基礎学力,教養という考え方がなくなった。 ⑨1~2割の生徒は,小学校や中学校から私立へ行くようになっている。
⑩全く学ぶ姿勢のない生徒に2割ていどの生徒が引きずりこまれ,授業が成り立たない状況が出ている。などの現状が存在してきている中、授業が成立しきれていない状況があり、また教職員の授業研究に割く時間が限られて来ており、教職員の負担が増加してきています。
 このような現状についても強く認識し、本来あるべき状態に戻して行かなければならないのであります。
4.学校の役割とは
 そもそも、教育とはすべての子どもたちの社会的自立を図ることがその役割であったのではないでしょうか。
 そのために,日本のこれまでの学校は,教科(授業)と特別活動(生活と行事)の二本柱で教育を行ってきたと思います。
 基礎学力(教養),生活の仕方,社会性の三つがその内容であり、学校では,基本的に生徒が教師の言うことを聞くということがあって,はじめて教育が成立したと思います。
 現在は,学校や教育についての考え方が混乱し,共通認識がなくなっている状況であります。(価値観の多様化)
5.家庭教育力、地域における教育力の低下
 家庭教育は、すべての教育の出発点であり、子どもが基本的な生活習慣や他者との関わり、社会の規律などを身に付ける上で重要な役割を果たすものであります。
 しかしながら、近年の核家族化や少子化にともない、地域におけるつながりが希薄になるなど、家庭を取り巻く社会状況の変化の中で、家庭の教育力の低下が指摘されています。
また、青少年の問題行動や青少年を巻き込んだ犯罪も見られるなど地域の教育力の低下も危惧されています。
 こういった現状を招いている主な要因は人々の意識や課題の多様化が考えられ、それぞれが抱える課題も一様ではなくなっていることが非常に大きいのではないかと思います。
 例えば,仕事を持つ親は子育ての時間の不足に悩み,一方,専業主婦は日々の子育ての中で孤独感に悩む傾向が見られます。また,周囲の人の助けを上手に借りながら子育てをしている親もいますが,一人で子育てを抱え込みこれ以上自分自身を追いつめてはいけないというほどがんばっている親や,子育てには無関心な親もいます。さらに,離婚等により,仕事と子育てを一人で担っている親など,周囲の支えをより必要としている親もいます。
 このような自身の現状を気軽に相談できる環境が整っていないことが大きいのだと思います。
 よく「子育て」に関する相談として、役所などが相談窓口を開設したりしていますが、時間的な制限があったり、利便性がなかったりと、様々な課題があると思います。
 さらに、信頼関係が築けていないところから、「本音」で相談できるようなことがないのも大きな要因であると思います。
 身近で気軽に相談できるような人材の育成とその人材を育成するシステムが必要かと思います。
6.生涯学習で地域人材の育成を。
様々な現状について述べて参りましたが、ほんの一部にしか過ぎません。
まだまだ、多くの課題が存在することは承知の事実であります。
 しかしながら、このような現状に対する様々な課題を克服し、よりよい教育環境を実現して行くためには、地域における人材を育成し、供給していくことが求められているのではないかと考えます。
 子供たちのためにといった気持ちがあるような人材を、「生涯学習」を通じて育成しながら、学校教育に参画させていくことが今後重要であると思います。
 具体的には、教職員に準ずる人材の育成と、情報化、様々な事務処理の効率化、各種行事に関することを担える人材の育成でると思います。
 まず、教職員に準じる人材の育成でありますが、小学校、中学校ともに職員の定数というものが定められており、専門的な課題については外部からの人材供給に頼っているのが現状であります。
 教職員を可能な限り子供たちと向き合わせて行くためにも、多くの人材を育成し、供給する必要があります。
 文部科学省が実施している教員免許資格認定試験という取り組みがあります。この教員免許資格認定試験は幼稚園、小学校と特別支援の3つの教員資格認定試験制度が実施されています。
 取り組みの趣旨として、広く一般社会人から学校教育へ招致するにふさわしい人材を求めるためとしています。
認定試験の受験資格として、ア 大学(短期大学を含む。)に2年以上在学し,かつ,62単位以上を修得した者及び高等専門学校を卒業した者並びにこれらの者と同等の資格を有すると認められる者 イ 高等学校を卒業した者その他大学(短期大学及び文部科学大臣の指定する教員養成機関を含む。)に入学する資格を有する者で,年齢が満20歳以上のものとあります。
 こういったシステムを念頭に置いた生涯学習システムも考えて行きながら、将来ある次世代に対して「夢」や「希望」を提供していく必要性があるのではないかと思います。
 さらに、学校地域支援事業を活用しながら、多くのボランテイア人材を育成する取り組みや、そのような人材を活用する基盤が必要であります。
 その基盤については、放課後子どもプランなどを活用しながら、地域の実情や人材の供給状況、子どもたちの状態などを考慮しながら進めて行くことが必要であると思います。
7.新たな経営マネジメントシステムの確立へ
 学校の日常は、大変忙しく、教師と生徒が向き合っている余裕があまりありません。さらに中学校においてはクラブ活動などがあり、教師1人に対する業務量は増加傾向にあります。このような状態を解消して行くための新たな経営マネジメントに取り組んで行く必要があると考えます。
 それは、教職員が授業に専念出来る環境を作ることであります。
そして生徒に向き合える時間を作ることであります。
そのようなことを実現して行くためには、学校にNPOなどの組織を入れながら役割分担を明確にし、そのNPOの専門性を生かした教育内容を充実し、様々なニーズに応えて行きながら、学校の特色を出して行く事が必要だと思います。
8.おわりに
学校には職員定数というものがあり、その定数に沿った人員で様々なことを処理しています。それにも一定の限界があると思われ、人員を増やすにも定数が存在する事から制限があります。
「みんなで子育て」といった考え方に基づき、社会全体で子どもを育てて行くためには様々なインフラの整備を行い、地域人材の雇用システムも平行して考えて行かなければなりません。そのことで充実した教育環境が整い、地域社会の教育力の向上が果たされるのではないでしょうか。