現実世界に見えないとされているものが見える人がいる。ということを
聞いてはいたけれど。
もう何年前のことだろう。
犬の散歩でいつもの海辺を訪れたときのこと。
自分も以前犬を飼っていてと話す小柄な中年女性が隣に来た。
なんとなく世間話をするうちに、彼女は病気で臨死体験を経て人に見えないとされる
ものが見えるようになったと話し出した。
詳細は省くが、警察の捜査に協力(させられた)こともあったという。
驚きつつも話半分に聞いていたが、しばらく黙ったのち彼女は私に
いきなりごめんなさいね、と全く誰にも話していない私の過去のことを
ずばり指摘した。
ちょっと見えたからね、と。私は衝撃のあまりごまかしたり否定もできず、震え声で
そうです。と返してしまった。そのことはね、こうしたらいいよ。と話して、じゃあと別れた。
見える人は実際にいるのだ。
過去の出来事は私のそばに消化されずにまとわっているんだ。
見えないから無いのではない。
という事実を体感したできごとだった。