:
「おー、そこのあんちゃん
それ ひとつ売ってくれないか。」
マッチ売りの青年:
背後で声がしたのですぐには
気づくことが出来なかった。
「. . . はい。」
後ろを振り向きながら、僕は
袋の中にあるマッチ箱を
ひとつ取り出して、
「50円です。」
:
「ありがとな、助かるわ。
ちょうどタバコの火を切らしちまってな。」
1000円札を手渡しながら、
「ぁ、釣りはいらねーよ。
あんちゃんのキレイな顔に免じて
少ないがこれでいいもんでも食べな。」
マッチ売りの青年:
申し訳なさそうに受け取りながら、
「. . . ありがとうございます。」
:
「じゃ。」
買ったマッチ箱を人差し指と
中指の間に挟ませて、
「あんがとな。」
青年に手をひらひらさせながら。
マッチ売りの青年:
遠ざかる男に軽く頭を下げる。
(僕の名前は ケイト。年は19。
両親は13歳の時に事故で亡くした。
家が小さなマッチ売場であったため、
僕はそれを自然と引き継ぐようにして、
自ら街を出向いて売り歩いている。
家ではお客さんが中々来ないんだ。
こうして街を歩くのもスキだ。
昼間はある家族の
小さな子どもを間に挟んで
手をつないで歩いている姿や
夜は家中の明かりがキラキラ
イルミネーションのように
灯されていく景色が。
父さんと母さんがいたこの街がスキだ。
. . . . . 会いたいよ。
また考えてしまった。
しっかりしないと。)
もらった1000円を握りしめる。
(今日は、これでパンでも買おうかな。
そうだ、父さんと母さんの分も
一緒に買おう。うん、そうしよう。)
口元を綻ばせながら
パン屋さんへ向かう。
・ ・ ・
買ったパンを抱えながら。
(パンも買ったし、
今日はもうこれで帰ろう。)
いつもの近道をしようと
路地裏を通る。
どんっ。
なにかとぶつかった。
男:
「いってぇ . .な . . おぃ . . . . 」
不快そうな顔をしながら、
「ちゃんと前見て歩けよ。」
ケイト:
震えた声で、
「. . . ご. . . ごめんなさい. . . . 」
ぶつかった拍子で
抱えていたパンを全て落としてしまった。
(ぁ . . . . ううん、仕方ない僕の不注意だ。)
男:
「ぁ、わりぃ。
全部落としたのか。」
ケイト:
パンを拾いながら、
「いえ、大丈夫ですので。
すみません。」
男:
「あー、クッソ。
こんなことしたら、高橋に
怒られっかなー。」
パンを拾って手渡す
ケイト:
受け取りながら、
「すみません、ありがとうござい.... えっ」
男:
ケイトの腕をつかみながら、
「ちょっと、お前来いよ。」
無理やり連れて行く。
ケイト:
「あ、あのぉ. . . .
僕なにか弁償した方が. . . 」
男:
「いいから、黙ってついてくる。」
・ ・ ・
ケイト:
男の家と思われる
屋敷に着く。
(わぁ. . . すごい家だ。
雑誌やテレビとかで目にする
お金持ちが住みそうな家だな. . .)
「. . . . . . 」
男:
玄関を開けながら、
「まぁ、入れよ。」
ケイト:
「. . . .ぁ、いえ、僕はお邪魔するつもりは . . .」
男:
「ここまできて、邪魔も何もないだろ。
いーから、詫びさせろ。」
ケイト:
首をかしげながら、
「詫び. . .?」
・・・
男:
「コーヒーでいいか?」
ケイト:
「. . . はい。」
男:
「高橋、コーヒー2つ頼む。」
高橋:
「かしこまりました。」
高橋が軽く会釈をし、
コーヒーの準備をする。
男:
「ぁ、自己紹介がまだだったな。
俺の名前は新坂 勇(アラサカ ユウ)。
この家の主だ。よろしく。」
ケイト:
「. . ぼ、僕は、ケイト。. . よろしく . . . 。」
勇:
「ケイト、な。」
高橋:
「お待たせしました。」
コーヒーを淹れたカップを
テーブルの上にそっと置くようにして
「ケイト様、どうぞ。」
ケイト:
コーヒーを受け取りながら、
「ありがとうございます。」