広島からの帰り夕方には里庄に辿り着きたかった。ペンションの管理人に降りるインターチェンジを聞いていたが、そこまで行くのと手前で降りるのと時間がまた足りなくなりそうだった。ペンションの管理人は地元の人であるから、道の融通が利くインターチェンジを教えてくれたのだが、どうにもそこまで行くとタイムアウトになりそうだった。私は運転素人だが、何となく自分の勘を信じて手前で降りた。

降りたはいいが、どんどん夕方が近づいてくる。何で夕方にこだわっているのかというと、藤井風の『旅路』というMVで里庄の夕方が印象的に映し出されているのだ。何だか温かい。藤井風の青春時代を振り返る的な、そのMVの世界観を写真に収めておきたかったのだ。特に聖地巡礼のように、同じ場所で写真を撮るとかでなくても、少しでも里庄に触れておきたかった。やはりインターチェンジを降りてもなかなか里庄に辿り着けない。割とその辺では栄えている方なのかもしれない。ペンションから到着時間の問い合わせの電話がかかる。時間にルーズなことがバレバレなのだ。どうにか間に合うように進んでます、とだけ伝える。里庄の駅が見えてきた。その外から見える写真を取りたくて地元のスーパーに車を停める。洗剤と除菌スプレーを購入する。少しだけ写真を撮るために車を離れる。写真を撮ってホクホクしてまた車に乗り込む。もう少し写真を撮りたくてまた場所を変える。駅の階段と夕方の夕陽を撮る。風景が田舎でとてもいい。空に綺麗な雲の跡が残っている。とても気持ちがいい。写真を撮り終えるとペンションに向かって走り出す。頑張って頑張って走って向かうが、20分くらい遅れてしまう。遅刻常習犯だ。またもや遅刻を責められることなく食卓につく。食卓についてご飯が出てくるのはとても楽で、主婦にとっては天国のようだ。今回の旅はそれが味わえるだけで贅沢だ。美味しく夕食を食べ終えて、部屋に戻る。今夜も夜空は曇り空のようだ。昨日もそうだった。実はそこは綺麗な星が見えると評判の町なのだ。あいにく星は見られそうにない。疲れが出て着替えて横になったら眠ってしまう。いつものように夜中に起きてしまって、カーテンを開けてみたら、夜空は晴れていて、とても綺麗に星空が見えている。一瞬くらいであったが、綺麗な星が見られて満足する。良かったな。安心してまた朝まで眠ってしまう。

昨夜から隣の部屋にお客さんが入ったのか、話し声が聞こえていた。そんなに気にすることはないが、関西弁なので何となく聞き慣れないからか、気になる。壁が薄いのかな。翌朝また朝から話し声は聞こえたが、いつものように朝早く起きて、朝食を食べる用意をしていたら、妹が喜びの声をあげた。その奇異な声に隣の話し声の主は驚いたのか、それからは話し声はあまり聞こえなくなった。私は声が大きい方ではないし、そんなに話をしない。妹も昨日は声をあげなかった。隣の部屋の声が聞こえることに驚いたのと、聞き慣れない声が聞こえたことに驚いたのであろう。隣の部屋のお客さんは私たちよりも早く部屋を出てしまった。私たちはゆっくりと用意する。チェックアウトまでに親戚に電話をかけてみる。通じなかったが、お墓参りをしたかったので、一番近くのスーパーでお線香を購入する。住所がよく分からないから、ペンションの管理人に聞く。管理人も分からないから、近くの観光協会に問い合わせするように助言してくれる。昔の住所の位置なんて、そういうところで問い合わせなければ分かりようもない。私たちは近くの観光協会に行くことにする。道の駅のように青空市場が行われているらしい。何か面白いものはあるかな、と心躍りながら向かうことにする。

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