〇まとめ
・アナリストの早耳情報によるセールス行為を禁止。
・アナリストの存在意義がますます微妙に。
・そもそも早耳セールス自体、先進国ではありえないことだった。
前回は欧州の規制強化(MiFID2)によって証券会社が自前でアナリストを抱えることができなくなり、証券会社のリサーチビジネスが大幅に縮小されてしまったという点を述べました。
しかし、日本でも2017年に重要な規制強化が行われています。
それがフェア・ディスクロージャー・ルールです。
証券会社のアナリストが上場会社に個別にヒアリングを行ってリサーチレポートを書く中で、未公表の情報を入手してしまい、その証券会社が一部の顧客にその情報を提供するという事例が多数発覚しました。
それを受け、2017年に金商法を改正し、未公表の内部情報を証券会社のアナリストのような第三者に提供する場合には、他の投資家にも提供しなさいよ、というルールができました。
ざっくり言えば、業界内で慣習的に行われていた、いわゆる早耳情報に基づくセールスを禁止したものです。
対象となる情報は「上場会社等の運営、業務又は財産に関する公表されていない重要な情報であって、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼすもの」とされています。
分かりづらいですが、刑事罰も定められているインサイダー規制の対象である「業務等に関する重要事実」よりも広いものと解釈されております。
これは、インサイダー規制では「投資判断に著しい影響を与える」という記載がなされているため、「著しい」の方が「重要な」よりも重いものと解釈されるためです。
インサイダー情報+決算情報+株価に重要な影響を与えるもの、という解釈もなされておりますが、この範囲は必ずしも明確ではなく、どのような情報が対象になるのかについては明確な解釈がある訳ではありません。
情報伝達者はざっくり言えば上場会社の役員や従業員が対象で、情報受領者は証券会社やその企業に投資する可能性の高い投資者等が対象となります。
なお、いわゆる「言論の自由」から、マスコミ関係者はこの対象に含まれていません。
これにより、いまだに一部のマスメディアが未公表の決算情報を平然と紙面等に載せることが続いておりますが、これはまた別の問題であります。
当然、証券会社のアナリストは上記の規制対象に含まれ、上場会社とアナリストとの面談に非常に大きな制限が課されることになりました。
実務的には上場会社もアナリストとの面談を避けるようになっており、アナリストの存在意義自体が微妙なものになってしまいました。
もっとも、このような早耳セールス自体、先進国では日本以外にみられないと言われてきた悪しき慣習とも言え、このような規制が入ること自体は歓迎されるべきものだと思っています。
早耳情報に頼らなければ価値のあるレポートを書けないというのであれば、そのようなアナリストはそもそも不要だったのだと思います。
ちなみに、上場会社が証券会社のアナリストとの面談に応じるメリットがわかりづらいかもしれませんが、自社の株式についてアナリストがレポートを出すことでよく多くの投資家に売買をしてもらえるようになるという点があります。
もちろん、早耳情報を渡すことで自社の株式により良いレーティングを付けてくれるのではないかという期待もあったのかもしれませんが。。。