やっとのことでガソリンを入れられ、緊張感から開放されてから20分程車を走らせていると,なんとなく寂しげでがらんとしている交差点の信号で止まった。なんとそこには私がサンタクルーズから遥々目指してきた場所、「Lower Lake」と書かれた看板が信号機からぶら下がっていた!不安の中約5時間かけて何の情報もない未知の土地にやっとたどり着いたのだ。しかし、問題はその交差点をどちらの方向に進んでいいのかわからない。ただ「Lower Lake」と書かれている信号機の看板があるだけで、その他はただがらんとした景色があるだけだった。とりあえずそのままその交差点を通過して、すぐ左側にあるガソリンスタンドで車を停めてみた。降りてみて周りを見渡しても、どこの景色も殺風景な感じがして判断ができなかったので、ガソリンスタンドのストアーに入り、そこででダウンタウンはどちらの方向か聞いてみた。
何故「ダウンタウン」なのかというと、ほとんど面識のない人を頼りに、直接電話で話もできていないまま、「いつどこで会おう」という約束もない状態で、ただ来てしまった、というか来るしかなかったので、全く知らない土地だったのでとりあえず「ダウンタウンにいけば何とかなる」と考えていたからである。
教えてくれた方向に車で交差点から曲がってすぐに「これがダウンタウン?」というようなところがあった。通常ダウンタウンはほぼ各市に一つずつあり、日本でいう「駅前」のようなところで、店やレストランが並んでそれなりに賑わっているようなところなのだが、私が遥々目指してやってきたそこには ピザパーラー、小さなお土産やさん、埃だらけのジャンクとしかいえないようなものがショーウインドウからごちゃごちゃになって見えるアンティークショップ、コーヒーショップに小さな小さな郵便局が一件づつあるだけで、歩いている人などは誰もいなかった。しかも道路の反対側の背の低い建物には「テナント募集」の看板があるが、そこには一軒も店が入っていない。
とにかく公衆電話を探して遥々訪ねてきたブルースに電話をしてみたが、やはり彼は留守のままだった。ここまで来たのに・・・会えない。どうしよう。彼の名刺は持っていたが、そこにはもちろん家の住所など書いていないので、彼の家など探しようがない・・・と思ったが、そこの公衆電話には電話帳が付いていたので、とりあえず彼の名前で探してみたら・・・何とあった。小さな小さな田舎町だからこそ探せたような感じだ。
住所を見てみると彼の家はこのすぐ近くのようだ。番地はというと、そこの小さな郵便局あたりになっているが、その周りには人が住む家がない。しかしその郵便局の横には細い車一台分くらいの幅の私道があった。そこにはゲートなどなく公道、私道の区別は何もついていないのだが、なぜそこを〝私道″と思ったのかというと、誰もが何気なく歩いていけるような路地ではなく、なんとなく入りづらい雰囲気がしたからだった。そこはかなり奥まであるように見えた。郵便局の反対側は空き地になっているが、空き地と私道の境目には木が植わっているので広々とした感じではまったくなく、逆にその私道は細くて暗いイメージがした。
それでもなんとかブルースの家を探したかったので勇気をだしてそこを入っていった。郵便局を過ぎるとその裏には木造りのペンキの塗っていない今にも壊れそうな2階建ての家があった。上から声が聞こえたので見上げてみると、なんとそこのおんぼろのバルコニーに男の人と女の人がニ人座っていた。彼らからするとこんな所に見慣れないアジア人の女一人が何をしているんだ?と思っていたに違いない。私はその人たちに「ブルースの家を探しているんですが」と訪ねてみた。男の人は突き当たりにある これまたおんぼろのトレーラーハウスを指差して、「あそこだよ。」と以外にも親切な口調で’答えてくれた。
