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あらしの前・あらしのあと

「あらしの前」「あらしのあと」

作:ドラ・ド・ヨング(岩波少年文庫)


小学校高学年向けの児童書。

オススメされているのを見て、読んでみました。


ふつうの人々と戦争を描きながらも、

悲惨さや過酷な運命を強調した物語では無いところが、

新鮮に感じられ・・・爽やかな読後感、

静かに胸が熱くなる物語でした。

1951年発行だから、けして新しくはないのだけど。

こんなに素晴らしい物語があるなんて、知らなかった。


働く女性や子どもの幸福度が高いことで注目されるオランダの、

戦前~戦後を知る意味でも、興味深い内容です。


オランダの田舎で暮らす子どもたちと家族。

ありふれた日常の中にあふれる喜びや幸せが丁寧に描かれており、

あたたかなその空気が、手に取るように感じられます。

やがてそこに忍び寄る戦争の影。


都会で暮らすお姉さんのミープは、いち早く情報を得て

肌で感じる危機感を家族に伝えるのだけど、

その時は、誰も本気に受け取らない。


そんな姉の事を「戦争ヒステリー」と馬鹿にする弟。

学校で聞きかじったよく意味もわからない言葉を使ったり、

スパイや裏切りなど大人の疑心暗鬼を訳知り顔で真似る子どもたち。


震災と原発事故の後・・似たような光景が、今、日本のどこかでも・・

もしかしたら繰り返されているかもしれない・・

と思いを馳せずにはいられない、記述が、

この物語の中には、たくさん散りばめられているのです。


ナチスが攻め込みオランダが降伏した日、緊迫した空気の中、

お母さんの力強い「生き抜く」という希望の言葉が胸に刺さる

「あらしの前」のラスト。


お母さんの語る言葉が、どれもほんとうに素晴らしくて、心に響きます。

6人きょうだいの素敵なお母さんなんです。


「あと」は、その6年後の物語。

5年続いた戦争中の出来事や、子どもたちの成長が描かれています。

戦時中、大人に混じって危ない任務にも奔走した末弟のピムが、

戦後、急に12歳の子どもに戻れと言われて

やり場のない気持ちに苦しむところ、

戦争という異常な興奮状態を味わった人々が、

日常を取り戻す難しさなんかが、つぶさに表現されていて、

戦争を知らない私たちには貴重な追体験だと思いました。


もしかしたら、震災やそれに伴うあらゆる混乱という

興奮状態を味わった私たちだからこそ、

なにか共感できるところがあるのかもしれませんが・・


戦争で人の手によって破壊された街、廃墟と石のかけらだけになってしまった

風景は、まぶたの裏に残る、震災の風景と重なります。

あえて瓦礫という言葉を使わなかったのでしょうか?

廃墟と石のカケラ、と物語では表現されていました。

人の暮らしていた場所として

建物への敬意が感じられる表現だと思います。


音楽、芸術、家族、愛、平和、幸せ・・・

悲しみや苦しみを乗り越えて、希望の光を取り戻しながら

あたたかい気持ちで、本を閉じることができる

そんな一冊でした。


なるほど。

今読むことに意味があるのかもしれません。



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