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巨大な植物の葉、あるいはコーヒーテーブル大の指紋にも見える奇妙な化石に、科学者らは数十年もの間、頭を悩ませてきた。コケ植物? それとも巨大な単細胞アメーバか。進化の実験の失敗作? あるいは地球最古の動物なのか。

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 オーストラリア国立大学(ANU)などの研究チームは今回、この種の化石の一つをロシアにある崖から発掘して内容物を分析した結果、脂質の一種であるコレステロールの分子を発見した。

 研究チームはこの発見から、「ディッキンソニア」として知られるこの生き物は、現在知られている地球上で最古の動物だとする、独自の答えを導き出した。研究結果は20日の米科学誌サイエンス(Science)で発表された。

 ANUの地球科学研究所(Research School of Earth Sciences)のヨッヘン・ブロックス(Jochen Brocks)准教授は、これらの「奇妙な化石」の正体をめぐって、「科学者らは75年以上も論争を繰り広げてきた」と話す。「今回の化石の脂質は、ディッキンソニアが知られている限りで最古の動物の化石であることを裏付けている。これにより、古生物学が追い求めてきた数十年来の謎が解明された」

 ディッキンソニアは楕円(だえん)形をした体全体が葉脈に似た体節で構成されており、体長1.4メートルまで成長することもあった。

 ブロックス准教授によると、ディッキンソニアがこれまで考えられていたより数百万年さかのぼる5億5800万年前に豊富に存在していたことが、今回の分析で明らかになったという。

 ディッキンソニアは、エディアカラ生物群に属している。エディアカラ生物群が地球上に生息していたのは、バクテリアが繁栄していた時代で、その約2000万年後の「カンブリア爆発」として知られる時代に、現代型の動物群が出現した。


■断崖にぶら下がって発掘作業

 科学者らは、有機物が付着したままのディッキンソニア化石を見つけるのに、苦労してきた。現在知られている化石の多くはオーストラリアで見つかったもので、何百万年もの間、無数の外的要素にさらされていたからだ。今回の最新研究で調査した化石は、ロシア北西部の白海(White Sea)の近くにある断崖で発掘された。

 ANU博士研究員のイリヤ・ボブロフスキー(Ilya Bobrovskiy)氏は、「このまさに世界の辺境地域に到達するために、ヘリコプターを使用した。クマやカがすみかとするこの地で、有機物が損なわれていない状態のディッキンソニア化石を発見できた」と振り返る。

「化石は、高さ60~100メートルの白海の崖の中腹にあった。崖の縁からロープでぶら下がり、砂岩の大きな塊を掘り出しては投げ下ろし、水で洗う。この作業を何度も繰り返してついに、追い求めていた化石を見つけることができた」