コネコ・ユース・オーケストラのとんちゃんが、何か考えごとをしながら、トントンとつぶやいています。そこに、みんながニャンニャンとやって来ました。
「うーん、うーん、何だったけかなあ」
「とんちゃん、どうしたの?」
「あのね、今度、ジュリーニャ先生の授業で、ブルックナーの交響曲第6番をやるでしょ?出だしが、弦と打楽器でリズムを刻むんだけど、そこから金管がどう入るんだったっけ?」
「ああ、ブルックナーね。4番が一番有名で、5・8・9番が傑作だよね。あと、3・7番もいいよね。でも、確かに6番って、ピンとこないなあ」
「こんな感じで、わりと静かに来るんだ」
とんちゃんは、トントトトトントン♪と歌います。
「ボレロ?いや、そんなわけないか。どっかで、聴いたことあるんだけど…」
「あ、わかったわ。これ、水戸黄門じゃない?ほら、人生楽ありゃ、苦もあるさー♪」
「うわあ、そうだよ、水戸黄門だ。涙の後には虹も出るー♪」
「あのね、あのね、知ってる?水戸黄門のメロディで、どんぐりころころって歌えるんだよ」
「え、そうなの?」
「うふふ、ねえ、とんちゃん、ちょっと、トントトトトントン♪トントトトトントン♪って水戸黄門のリズムとって」
「どーんぐりころころ、どーんぐりこー」
「トントトトトントン♪トントトトトントン♪」
「おー池にはまって、さーあ大変ー」
「トントトトトントン♪トントトトトントン♪」
「きゃはは、何これ、ぴったりはまりまくりじゃない?」
みんなは、大喜びです。
「ねえ、ちょっと待ってよ。ぼくは水戸黄門じゃなくて、ブルックナーのことを考えてたんだよ。みんな真面目に思い出してよ」
「あ、あはは、ごめん、ごめん。何だっけ?何かSF映画みたいな雰囲気あったような・」
「ジャジャジャン♪ジャジャジャン♪ジャジャジャジャジャジャジャン♪」
「それ、ゴジラじゃん。ねえ、だれかゴジラごっこしよう?」
「いいよ、毛を逆立たせて、フンギャー!」
「口から火をふいて、ギャオーギャオー!」
「ゴジラがふくの火だったっけ?まあ、いいわ。ガオー!」
ゴジラごっこに夢中になるみんなに、とんちゃんは怒ってしまいました。
「もう、ふざけてばかりいて。もう、知らないよ。ぼく、帰るから!」
「あ、待ってよ、とんちゃん、とんちゃーん」
さてさて、次の日のジュリーニャ先生のレッスンはどうなるんでしょう?
ボレロと水戸黄門とゴジラの香りをのせて、ブルックナー交響曲第6番が鳴り響きます。
トントトトトントン♪トントトトトントン♪