妄想です。

くろねことわたし。


久しぶりすぎてどうしよう















「Happy Birthday」


「は?」




やけに流暢な。

ていうか。


「なんか言うならさ、せめてこっち向いてくんない?」


発したであろう猫、もとい人は背中を向けて鍋を洗っていた。


ガシガシ





誕生日ですってー

ワタクシおひとつ御歳ふえちゃいましたー


なんだけども。

よく知ってたな、この猫。


鍋はキレイに光り、後ほど乾燥したそれは満足そうに仕舞われた。


そして今、鍋洗いに執念を燃やしていた彼は、お片付けも済んで止める暇も叶わず早々に人の姿を終了。

人間の差し出しかけた手を無慈悲に無視して、黒猫は黒い毛を丹念に舐めて毛繕いに余念がない。


そんな猫の耳はこっち向き。一応。

まぁ、よし。うん。



「相葉か?」


「うん、あいばちゃん」


出処を猫は素直に回答。

褒めてつかわそう、あやつ。

心の中で。


しかし誕生日。

確かにさ。

今日の夕飯、なんかひっかかったんだよね。

特別豪勢だったわけじゃない。

物量というか品数が多かったというわけでもない。


ただ。


いつもと変わらないハンバーグ。

けど、中にチーズが入ってたり。

いつの間にかレシピに増えていたらしいポタージュスープはなんだか舌触りが良かったり。

んでもって、なんか嬉しい感じに好みの濃さだったり。

なにかひと手間加えてくれてた。


そんな気付きに内心の首をかしげていたまさにその時、メッセージが耳に届いて理解した。

誕生日か。

そっか、誕生日か。



「美味しかったぁ」



猫を見ないでコーヒーカップを口に触れるフリして言えば

猫の尻尾がゆらりと揺れた。

それは、ほんのり嬉しさを乗せたゆらゆら。


Birthday

1年に一度のアニバーサリー。


特に大事にしている記念日ではないけど、俺の周りはわりと記憶にとどめているひとが多い。

パーティだの飲み会をセッティングしたりするわけじゃない。


でも、たまに会った時にさらりと「おめっとー」なんて一言とポンッとプレゼントを渡してくる。

なんかね、かっこいいよね。皆ね。


しかしながら、猫さえそんなカッコいいひとりだとは思いもしなかった。

毛繕いを終えたらしい猫はアクビをひとつ。

四肢をのんびり伸ばし、くつろぎ体勢に突入だ。


なんか悔しい。

なんか嬉しい。

ちぇー



ん。

あれ、そういえば。



「さとし」


『んー?』


リラックスしてる猫はすでに眠そう。

いや、まだ8時。20時。

早いよ!






うにゃうにゃ呟く猫は本当に眠そう。

これが人間の姿なら、アレコレちょっかい出して絡むんだけどさ。

猫が眠そうにしてるのは、何故か止められないんだよね。

人間の本能って猫に服従するようにできている、とかなんとか。

わりと本当な気がして複雑である。


「じゃなくて」


うにゃーう


そんな俺の声に眠そうな猫は一応、返事らしきものをよこす。

本当に、一応。



「ねえ、さとし」


『んー』


「ちょっと起きて!?」


『むりぃ』


えぃ、このやろ。

寝てるなら起こすのは本意じゃないが、寝かけてるならまだ余地はある。


「さとしのさぁ」


にゃー…


タイムトライアルかよ、おい。


今日は俺。

幼馴染は年末。

猫とてそんな日があるはずだ。

と、今更ながら思い至る。


けど、そこでひとつ疑問が生まれた。












「智って、誕生日の概念ある?」


『・・・・・にゃ?』





猫の視線は天井に。

その頭上には大量の?マークが見えた。



『おれぇ・・・?』







そこからなのか…..!!!







※※※※※

お祝い返しのハードル発生

年末まで頑張ることが決定した(ワタシ)




いまなんがつっていっちゃダメです

こんげつまつあにばーさりーあるよねとかダメです