埼玉県の長瀞にある宝登山(ほどさん)に登ってきた。

標高497m。

登山と言うほど急勾配はなく、ハイキングのノリで遊びに行けるレジャースポット。


天気は5月と思えぬ夏日。

空から降り注ぐ太陽光線が、緑の葉にすけて落ちてくる。

柔らかな風に佇めば、山に抱かれる気分になる。


降り立った駅は「野上駅」

改札には駅員さんが立っていて、切符を回収している。

SuicaもPASMOも使えない。

のどかな佇まいに思わず笑みがこぼれた。


宝登山に入り、一歩一歩大地を踏みしめる。

すると、シャシャっと何かが草陰に隠れた。

トカゲだ。

いや、ヤモリか?イモリか?

何歩かに一回はシャシャっと音がする。

生き物が沢山いるみたいだ。

「ごめんなさいね、お邪魔しますよ」


尻尾の長い虫が目の前を横切る。

「なげ〜〜」

思わず写真をパシャリ。

ハチかなぁ?なんだろう?


すると看板が目の前に登場。

「クマ出没注意!」

マジか…クマいるのか?

俺の作ってきた海苔巻きが狙われてしまう。

なんとしてでもクマには会わないようにしなければ。


長瀞と言えば有名なのが川下りだ。

数人が舟に乗り込み、船頭がコントロールしながら激流の中を進んでゆく。

夏の風物詩と言っても過言ではない。


また、風物詩と言えば長瀞のカキ氷。

聞くとこによると、冬に大きな池を凍らして切り出してくると言う。

「長瀞のカキ氷はきめ細かく、食べても頭がキーンとしない」

そんな噂を聞いた。

本当かなぁ?食べてみたいなぁ。


筑波山や、大山を登った慎太郎。

少し脚力がついたのだろうか。

なだらかな宝登山の坂道が少し物足りない。

まぁ、こんな場所だからこそ緑の森林を楽しもう。


今回も登山客は少なく、見かけただけでも数人ほど。

僕の前にはおじちゃんが一人ゆったりと歩いていた。


「むむ」

そのおじちゃん(60代後半?)の足元に目がいった。

深い茶色のブーツ。

それも相当年季が入っている。

数十年の風合いを感じさせる。


きっと山に登っては、靴を磨き。

それを繰り返してずっと登山を楽しんできたのだろう。

淡々と登る後ろ姿が、何か柔らかな光に満ちているようだった。


「生きてればいろいろある。

 坂道も、平坦も。

 慌てないことだよ。

 楽しみながら、登ることだよ」


僕の胸に聞こえて来るおじさんの声。

話したこともないけれど、そう背中が語りかけていた。

「いろいろあるさ」


息を吐き、息を吸い。

体が熱を帯びる。

額には汗が滲み、太ももがキリリと軋む。


一歩一歩だ。

そう、一歩一歩。


僕は宝登山の頂に立った。

「登頂!」と言うほどの達成感はないが、一つの山のてっぺんにまできた。

大きく広がる街の風景。

山々の曲線が視界を埋める。


水をグビリグビリと飲み、いざ食事タイム!

「海苔巻きさーん!」

ハムハム。

ハムハム。

ハムハムハムハムハムハムハムハム。


「ご馳走さまでした」

手を合わせて、汗ばんだTシャツを着替えた。

下山の準備を整えて、記念写真をパシャリ。

いざ、今度は長瀞駅へ!


今回のハイキングコースには名前が付いている。

「関東ふれあいの道」

野上駅から長瀞駅まで、宝登山経由で約2時間30分。

なだらかな坂道が続き、ケーブルカーでも山頂に来られる。

ふらっと「山に遊びに行こう」と思ったら、宝登山はかなりオススメだ。


山の魅力の一つに「風」がある。

都会の中にも風はある。

けれど、山に吹く風は何かを語りかけるよう。


歌に「千の風になって」と言うものがある。

亡くなった人々はお墓の中にでなく、風となって吹いている…と言う歌詞。

まさに、山の風は生き物だ。

命があるように想う。


すんなりと下山し、長瀞の駅に到着。

何か物足りなさを感じなくもないが、さて帰るか。

と駅に向かおうとしたその時!

「むむむ!?」


そこには「氷」の文字が貼られた食事処があった。

昔ながらのドアもない、開けっ広げの食事処。

「カキ氷食う!」


僕は吸い込まれるように、席につき「氷いちご」を注文した。

奥から聞こえる氷をかく音。

シャシャシャシャ…。


「はいお待ち」

気さくな店のおっかちゃんが、タオルと一緒にカキ氷を置く。

「絶対こぼすから、タオルで拭きながら食べてね」


「うわっ!山盛り」

スプーンでほじくり、口に運ぶ。

「うわっ!うめ!」


それは噂通り、絶品であった。

頭がキーンとならない訳は、氷のキメが細かいから。

そして、やはり天然の氷と言うことで優しい水の味がする。


「今年、初カキ氷です」

そう、店のおっかちゃんに伝える。

「美味しいでしょ」

そう笑顔で答えるおっかちゃん。

店の人が自分のカキ氷を「美味しいでしょ」と言えちゃうとこが凄い。

うん、めっちゃ美味しい。


あっという間にたいらげて、600円を支払う。

「おそれいります」

そうおっかちゃんは答え、頭を下げる。

ささやかなやりとりの中に、心の温もりが通う。

「ご馳走様でした」


帰りの電車の中で眠りこけた。

乗り換えの駅を乗り過ごしてしまわぬよう気をつけて。

少しジンワリ熱を持つ足の筋肉。

この疲れが、宝登山を登った確かな記憶。


思い出とは痛みだ。

大小問わず、体験すると痛みが伴う。

だから覚える。

だから学ぶ。

だから心に刻まれる。


歩いてゆかなければ。

自分の足で。

自分の心で。

歩いてゆかなければ。


この山にはどんな宝があるんだろう?


野上駅…のどかぁ




惚れ惚れしちゃう鳴き声


今日もダナーのブーツ

定番の海苔巻き!

尻尾なげぇなぁ、おまえ〜



トカーゲちゃん♡

長瀞の駅も、ほのぼのじゃのぉ

素敵やねぇ

発見!!

いただきまーす!

うめぇぇぇ

ごっつぉさん!

こんな風に氷を切り出してるんだ…

また来るね〜